今週はもう年度末最後の週である。金曜日にはいよいよ新年度がスタートし、全国の介護事業者にもフレッシュな新入職員がたくさん入職してくることになる。

そのため何かと準備に忙し方が多いと思うが、金曜日の新入職員入社に向けた準備は整っているだろうか?

しかし一番大事な準備とは、入社式典・セレモニーの準備ではなく、人材教育の準備であることを忘れてはならない。

その中でも新人職員に入職初日からしっかりと介護事業におけるサービスマナー意識を植え付ける教育を行わねば、入社初日から新入職員が利用者に対して、タメ口で接するのが当たり前の職場になりかねない。

そんな職場で志の高い人材が育まれるわけはないのだ。そしてそんな職場では、「何でもあり」の機運の中で、「そんなつもりはなかった悪気はなかった」という不適切対応が横行する。

そこでは世間の常識は介護事業者の非常識という状態が生まれ、介護サービスの品質は向上しないどころか劣化の一途をたどらざるを得ない。

そこは働き甲斐のない職場に成り下がって終わりである。志の高い人ほどそんな職場で働きたいとは思わず、そこで働く人に介護という仕事の誇りや喜びなど生まれるわけがない。自分の職場がそんな働いて面白くもなんともない職場になってよいのだろうか・・・。

そうしないように、新人職員にサービスマナー意識を植え付けるために、現在いる職員が見本となるマナーを身につけるべく、今月は数多くの介護事業者を対象として、「介護事業におけるサービスマナー講演」を行ってきた。

そんな僕の講演を受講された方から、質問を受ける内容で一番多いものとは、「サービスマナーの重要性は分かったけれど、それをどのように実践して職場内に意識を浸透させることができるのか?」というものだ。

しかしこの質問に対する答えは難しい。全員が同じ熱量で同じ方向を向く方法論なんて存在しないからである。

サービスマナーのない職場で起こっている様々な不適切対応が、その職場のもたらした経営危機という事実を僕の講演によって知り、サービスマナーの大切さと、サービスマナーのある接遇の具体的方法を学んだのだから、あとはその職場でその方法を推し進める不断の努力の結果によるとしか言いようがない。

ただ一つ言えることは、サービスマナー確立は経営者や管理者が覚悟を決めて取り組まないと、全職員がそれに従うということにはならないということだ。サービスマナーをもって利用者に接するという方針をいったん決めたら、その規律を守るべく断固とした態度で臨むことだ。

そのためには、マナー意識に欠けるけれども仕事はできるという職員を放置していてはならないのである。そうした職員は職場の決め事・ルールを護っていないのだから、作業はできていても仕事はできていないと評価し、地位を下げたり給与を上げなかったりするという一方で、規律を護ってマナーに徹している職員は給与等で評価するという信賞必罰(しんしょうひつばつ)の原則を厳格に適用しなければならない。

同時にサービスマナー向上の旗振り役となるリーダーも、覚悟を決めて自分自身がマナーに欠ける態度を決してとらないようにしなければならない。

マナーを護って利用者に接するということ自体は決して難しい行為ではない。自分がやる気にさえなれば誰もができることであって、特別な知識や技術が必要となる事柄ではないからである。

難しいのは、自分がそうした態度をとっても、周囲の職員が全員一斉にその態度を真似るとは限らないということだ。自分がマナーある対応に徹しているにもかかわらず、周囲の職員すべてにその態度が浸透しないときに、自分自身がマナーある接遇に徹し続けることが最も困難なことなのである。

志を高く抱き、やる気があったリーダーが、周囲の無関心や不徹底に負けてあきらめてしまえば、そこに新たな光景は生まれなくなってしまうのだ。

職場で新たに掲げたビジョンや目標が達成されるには、それなりの時間がかかるのである。
介護サービスの割れ窓は言葉遣い
僕が、「介護サービスの割れ窓理論」を提唱し、利用者に対するタメ口をやめようと訴え始めた時期に、その意見に賛同する職員はごくごく少数派だった。

しかし自分自身が信念をもって、良かれと考えた利用者対応を続け、同時におかしな態度はその都度、そうした態度をとった職員に対して正すように正面から批判し続けたことで、僕の考え方に賛同する職員が増え、同時に職場内で僕の立場も上がっていった。

そうして権限も与えられるようになって、マナー意識に欠ける職員には職場を去る選択肢を与えたり、主要な業務から外すなど、時間と労力を掛けながらマナー意識の高い職員が働きやすく、マナー意識が欠如した職員が居ずらくなる職場が作られていったのである。その改革は少なくとも3年ほどの期間を要している。

その間に、僕が少しでもマナーに満ちた職場づくりをあきらめたとしたら、改革は実現しなかったことは間違いないだろう。そうした状況下では、能力とかセンス以上に、あきらめないで続けようとする忍耐力が必要だったのだと今にして思う。

そういう意味では、サービスマナーを確立するための唯一の方法とは、自分がサービスマナーに徹した対応を身に着け、それに徹し続けることではないかと思う。

だから・・・サービスマナー意識の向上を目指す人は、まず自分自身がマナーに徹したサービスを続けてほしい。それだけで少しだけ職場全体のマナーは向上すると信じて、一人一人職場内で仲間を作り、他の職員から信頼されて権限を持つ地位に就いてほしい。そうすればその権限基づいた指揮・命令によって、職が改革はより実効性が高まるのである。

当然そこでは、サービスマナー意識をもって利用者に接するという職場のルールと規律に反する職員を、何らかの形で介護の場から切り離さねばならない。

そういう荒療治も伴ってはじめて、職場改革は実現するのである。

このことは改革を実現した実践者である僕がいうことであり、事実に基づいて言い切っていることなので、ただ一つの真実である。
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