先日、面識のない人から突然メールが来て、上司から受けた指導内容についての質問を頂いた。
知り合いではない人からメール連絡を頂くこと自体は問題ないのであるが、ただし一人一人の抱く疑問の質問メールに、一つ一つ回答していては僕の時間が無くなってしまう。
そのためこのブログのリンクを貼っている、「介護福祉情報掲示板」のトップには、「※メールでの質問は、すべて答えることはできませんのでご遠慮ください。」という案内文を載せている。つまりは質問は個人メールで行うのではなく、掲示板で質問スレッドを立ててほしいという意味である。
そのため本来なら、今回送られてきた質問メールにも返信する必要はないのかなと思った。
しかし問いかけられている内容は、介護関係者にとって重要な問題を含んでおり、かねてからこのブログで再三アナウンスしている、「介護事業者におけるサービスマナー」に関連する問題でもあるので、ブログ記事としてその問題を取り上げて、回答として考え方を示すことは意味のあることではないかと考え直した。
そのためメール送信者には、「その上司の指導は間違っています。挨拶は簡潔化せず、丁寧が基本です。このことに関連して詳しくは月曜日に記事更新するブログに書きますので、そちらをご覧ください。」と返信メールを送った。
ということで今日の更新記事は、その質問への回答であるが、質問内容は以下の通りである。
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利用者さんへの説明は簡潔にしないと相手には伝わりにくいと上司から助言がありました。今後勉強するつもりでいます。ただ「お早う」「ご飯ね」「起きるよ」と言う言い方が引っかかるのです。
職員は「お早う」とあいさつ。それに対し90歳を過ぎた方が「お早うございます」と頭を下げる。
あるいは入ったばかりの方に「よろしくー」とあいさつをする。初対面なのにと心底驚いてしまいます。
認知症の方には言葉は端折るべきでしょうか。またまず気持ちで言葉は二の次でしょうか気持ちがあればそれで良いのでしょうか。(※質問ここまで)
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私たちが提供する介護サービスについて、利用者の方々やご家族に対して説明責任があるのは当然だ。相手が認知症の方であっても、すべての事柄の理解力がないわけではないので、理解できる部分は理解できるように、わかりやすく説明することは重要である。
その際、制度の内容等は非常に複雑で難しい問題であり、法令の字面だけをくどくどと説明するのでは、説明を受ける人が混乱するだけの結果に終わることも多い。
だからこそ私たちは、「対人援助の専門家」としてのコミュニケーションスキルを酷使して、利用者の方々に対して、「簡潔にわかりやすく説明を行う」ということは大事である。
しかし伝えるべきことを簡潔にわかりやすくするという意味は、略語を使って文章を短くすればよいということではない。むしろ略語は人によっては理解不能の伝わりにくい言葉になってしまうのだから、できるだけ使わないという考え方が求められる。
さらに簡潔にすることにこだわるあまり、大事な本旨が伝わらなければ、それは本末転倒でまったく意味のない行為になってしまう。
だからこそ説明の言葉を短くさえすればよいという勘違いをしないように注意しなければならない。説明を簡潔にわかりやすくすることは、説明すべき内容を私たち自身がよく理解して、そのうえでそぎ落として良い部分と、そうでない部分をしっかりと考え抜き、説明しなければならない要点を抽出して伝えることなのである。
ところがメールで質問を受けた内容とは、利用者に対して、「お早う」「ご飯ね」「起きるよ」言えという指導なんだから、それは説明を簡潔にしているのではなく、挨拶を略して短い言葉にしているだけである。それはあり得ない話である。
そもそも簡潔にすべきは、説明する事柄であって、挨拶まで簡潔にする必要はないし、それはあってはならないことである。
「挨拶」はコミュニケーションの基本であり、そこを簡潔にすることや簡略化することは、大事なコミュニケーションの始まりにおいて、相手に誤解や不快感を与えて、以後の意思疎通に支障をきたす恐れを生じさせる問題である。
相手が認知症の人であればなおさら、そのような略語の挨拶は不適切だ。認知機能の低下した人の場合、略した言葉の意味が分からなくなっている人が多いからである。
ましてや私たちが職場で相対する人々は、お客様であり、多くの場合年上の方々である。そのような方々に「お早う」「ご飯ね」「起きるよ」という言葉で相対することを強いる上司とは、コミュニケーションスキルの何たるかをわかっていない輩であり、利用者に対するサービスマナー意識の欠片もない人間である。
そういう人は対人援助の仕事において、人の上に立って何かを指導するという立場になってはならないのである。
こんなふうに勘違いしている輩、コミュニケーションスキルに欠けた人間が上司として職員に指導しているのが、介護事業の一つの実態である。こうした状況がなくならないから、介護事業関係者の民度は低いままである。
サービスマナー研修を一般職員に受講させる前に、こうした勘違いした上司のサービスマナー意識を改善する必要がある。
そうした意味でも、管理職・リーダーを対象とした、「サービスマナー研修」を定期的に実施する意味や重要性をもっと理解してほしいと思う。
なお改めてのお願いとして記しておくが、日ごろの業務で抱く疑問については、「介護福祉情報掲示板」の方にスレ建てして質問していただきたい。
どうぞよろしくお願いします。
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