法令や制度に完全形がないように、補助金の支給要件も全ての人が不満なく納得できる完全形はないといえる。

そのため介護職員処遇改善支援補助金にも、いくつかの矛盾点が含まれている。

例えば、「給料が月額9千円上がると思っている人に伝えなければならないこと」で指摘しているように、補助金の交付率は、介護職員の配置基準を根拠の一つとして決められているために、配置基準を超えた介護職員を配置している事業者においては、一人の介護職員に配分される金額は減ってしまうことになり、配置実人員が多くなるほど、給与改善額は月額9,000円からどんどん遠ざかっていくことになる。

事業収益が減って補助金額が減ることは、経営努力が足りないという意味であるともいえ、ある程度納得できる部分もあるが、品質の高いサービスを提供するために、人員配置を手厚くしている施設や事業所の職員給与改善額が下がるのは、大いなる矛盾だろうと思っている。

それにも増して矛盾を感じるのは、この補助金の配分ルールである。

介護職員処遇改善支援補助金については、法人単位での支給が認められている。どういう意味かといえば、法人内の施設・事業所の補助金を一括管理して、補助総額を法人の裁量で各事業職員に配分することができるのである。

特養と通所介護事業所と訪問介護事業所と居宅介護支援事業所を運営している社会福祉法人であれば、特養と通所介護と訪問介護の職員に補助金の配分が可能で、法人裁量で介護職員だけではなく、1施設2事業所の全職員に補助金の配分が可能である。(※居宅介護支援事業所の専任職員だけが除外される

この場合に、特養で交付を受ける補助金全額を特養職員に配分する必要はなく、その一部を通所介護や訪問介護の職員に回しても良いことになっている。

そのようにして法人内の補助対象事業に従事する職員全員の給与改善額を同じ額とすることも可能となっているのだ。

だがこの場合でも、居宅介護支援事業所の専任ケアマネジャーは、補助金配分の対象職員には該当せず、そのため居宅ケアマネだけ給与改善が行われないというケースも十分想定できる。

この件に関連して、「介護職員処遇改善支援補助金に関するQ&A(令和4年1月31日)」の問12をご覧になってほしい。

ここでは補助金の介護職以外の配分について、「本部の人事、事業部等で働く者など、法人内で介護に従事していない職員の取扱いについては、2019 年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.2)(令和元年7月 23 日)問 13を参照されたい。」としている。

つまりそのQ&Aに準拠して、「法人事務担当でも算定対象サービス事業所における業務を行っていると判断できる場合には、その他の職種に含めて補助金を配分できる。」という意味になるのだ。

しかし法人事務担当者にはこのように補助金を配分する一方で、同じ法人内の居宅介護支援事業所専任のケアマネは配分支給対象外となっている。法人内のデイサービス利用者のプランを何件も担当したとしても、デイサービス職員ではないので補助金による給与改善はされないのだ。これって大きな矛盾ではないだろうか・・・。

なぜ居宅ケアマネは、ここまで冷遇されなければならないのだろう。地域包括ケアシステムを担う人材として必要不可欠な居宅ケアマネが報われないのは納得できない。

法人内一括処理が可能なんだから、せめて補助対象外事業所も含めて配分を認めればよいのにと思うのは、僕だけなんだろうか・・・。

どちらにしても今回はそうしたルールになってしまっている。そのルール等を改めて確認するための講演を依頼されており、そのスライドも下記の画像のようにほぼ完成している。
処遇改善支援補助金講演スライド
そこでは表の掲示板で皆様から配分の方法をどうするかという情報をいただいており、その結果も示したうえで解説を行う予定である。

表の掲示板に寄せられた情報の中で、配分方法として意味が分かる22事業所の情報については、「介護職員処遇改善支援補助金の配分方法」としてグラフ化しているので張り付いた文字リンク先を参照いただきたい。

金額はそれぞれの事業収入で異なるので、それを除いた配分の考え方の骨子だけで区分しているグラフである。

残念ながら、補助対象事業の全職員の給与改善を行う事業者のうち、居宅ケアマネの給与を持ち出しで改善する事業者は、22事業者中3事業者しかなく、居宅ケアマネは給与改善の対象外とする8事業者よりその数が下回っている。

なおこの中には、「全職種の職員に配分し、介護職以外に多く配分」としている事業者がある。しかしこれは補助金資料等で、「その他の職員の給与改善等に充てる場合は、介護職員の給与改善を目的としたものであることを踏まえた配分をお願いします」とアナウンスされているので、そうした極端な配分は指導対象になると思う。

そうなれば補助金受給途中あるいは新加算に変更後に、配分額を変更せざるを得なくなるので、事業者内の混乱のもとになる。この点にくれぐれもご注意ねがいたい。
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