今月9日に公表された最新の「介護給付費等実態統計」によると、今年度の居宅介護支援費に新設された、「逓減制の緩和」が適用される区分の居宅介護支援費(II)の算定割合は、全体の9.7%にとどまっていることがわかりました。

今年度の介護報酬改定議論では、介護支援専門員の処遇改善がテーマの一つになり、特に特定加算の配分も受けられない居宅介護支援事業所の介護支援専門員については、介護施設の介護支援専門員より給与改善が難しい状況も指摘され、「介護支援専門員を対象とした処遇改善加算の新設」という訴えも挙がっていました。

しかし結局のところそれは実現せず、その代わりに居宅介護支援費の引き上げと、加算の新設によって、居宅介護支援事業所の収益アップを図り、その部分を居宅ケアマネに還元することで、給与アップを図るという結論になりました。

しかし基本サービス費や新設加算のみでは、それをすべて介護支援専門員の給与に回したとしても、改善額は極めて低いものになるために、逓減性を緩和して担当利用者を増やすことで収益を上げ、その分を含めて介護支援専門員の給与に反映することで、期待に沿う額の給与改善を実現しようとしたものです。

実際に逓減性の緩和を利用し、居宅介護支援費(II)を算定できれば、一人の介護支援専門員につき、月額53.800円〜69.900円の収益増となり、さらに基本部分の増収分7.410円〜9.750円を含めると、月額で61.210円〜79.650円の増収が期待でき、その分を給与改善額とすることも可能となることは、「経費をかけずに逓減性緩和適用し給与アップを・・・。」で指摘したとおりです。

ところが今回の調査で、居宅介護支援費(II)の算定率が、全体の1割にも満たない実態が明らかにされています。

ということはこの低減制度を利用した、居宅ケアマネの給与改善が行われている居宅介護支援事業所も、全体の1割にも満たないという意味です。

処遇改善支援補助金の対象にもなっていない居宅ケアマネの給与改善は、非常に困難になっているといってよいでしょう。

今年度については、居宅介護支援費(II)を算定しなくても、基本サービス費等の引き上げ分を、給与改善原資にしたとしても、それで改善できる給与はわずか月額1万円にも満たない額です・・・。来年度以降はそうした原資もないということになり、ますます居宅ケアマネの給与改善は困難となります。

しかし居宅介護支援事業所の介護支援専門員は、介護保険制度における居宅サービスにおいては、利用者を支援するチームの要の役割を担います。

それはチーム内の上下の関係を表すものではありませんが、チームのまとめ役、人と人・人と社会資源等をつなげる調整役としての重たい責任を担う役割でもあります。

そうした重要な役割を担い、重たい責任を負うべき仕事の対価が、チーム内でも低い方に属するとしたら、そのような仕事に就きたいと思う人が益々減ってしまいます。

ここは改善のソーシャルアクションが必要な部分です。

同時に担当利用者を増やして、居宅介護支援費(II)を算定できるようにする努力も怠ってはならないと思います。

勿論、その算定が進んでいない理由は、ケアマネジメントの質を落としたくないとして、キャパを超える利用者増に二の足を踏んでいるからであるということも理解しています。

しかし居宅ケアマネの処遇改善策として、国が定めた方向性を多くの居宅介護支援事業所が無視するような状態を放置して、国が新たな居宅ケアマネの処遇改善対策に乗り出すことは考えにくいのです。

だからこそ居宅介護支援費(II)を算定する事業所が増える必要もあり、そのうえでさらなるケアマネの処遇改善策を求めていくという姿勢が必要です。

そのためには現行のケアマネ業務の見直しを図って、業務の効率化を実現する必要もあります。

例えばメディカルサポネットの僕の連載記事のなかに、『介護事業所で活用される ICT〜その期待と懸念〜』というものがありますが、そこの「使いこなしてほしいガジェット記録」で書いているように、無駄な移動時間を削減できれば担当利用者を増やすことも容易になるかもしれません。

業務の効率化ができ、事務員等を増やさずに収益を増やすことができれば、居宅ケアマネに配分される費用の額も大きくなります。是非そうした方向に目を向けてほしいと思います。

同時に介護支援専門員とは、ポロシャツとスラックスというカジュアルな服装で仕事をするような必要があるわけではないという意識をもって、きちんとスーツを着て利用者宅を訪問する介護支援専門員が増えないと、社会的な評価も上がらないという意識も持つべではないでしょうか。
ケアマネジャーの服装
案外社会全体の価値観というものは、そうした形の評価から創られることもあるのではないかと思います。このことは後日詳しく論じた記事を書く予定です。

スーツは利用者が堅苦しいと感じるから、対人援助者にはふさわしくないという誤解を、ビジネスマナー・サービスマナーという観点から論じてみたいと思います。

ちなみに僕は、施設長になる前は、ソーシャルワーカー兼ケアマネジャー(施設も居宅も両方の経験あり)でしたが、毎日スーツにネクタイで仕事をしていました。勿論、それが堅苦しいと、利用者から苦情を受けたことはありません。
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