2月以降の給与改善のために交付される介護職員処遇改善支援補助金は、賃金改善額を記載した計画書を提出したうえで交付を受け、賃金改善期間後、処遇改善実績報告書を提出して補助金の交付額を上回って職員に支給していることを証明しなければならない。

もし職員に支給している額が交付額を下回った場合は、差額を返還するのではなく、補助金全額の返還指導を受けるのが基本原則である。

これは本年10月以降、介護職員処遇改善支援補助金が新処遇改善加算に変更された後も同じ扱いで、従前からの処遇改善加算及び特定加算も、ほぼ同様のルールである。

つまりこれらの補助金や加算は、1円も事業者収入となり得ないものであり、それどころか職員への支給金額が補助金額等を下回らないように、事業者負担(持ち出し)を行ったうえで補助金交付を受けたり、加算算定するものである。

この補助金の配分に関しては、僕が管理する介護福祉情報掲示板に、「処遇改善支援補助金の配分方法について、皆さんの職場ではどうする方針か情報をください。」というスレッドを立て、情報提供を呼び掛けており、続々と情報が寄せられている。

それを読んでわかるように、多くの介護事業者では事業者持ち出しを含めて給与改善に努めているのである。中には補助金支給対象事業所以外の職員の待遇も改善しようとして、多額の事業者負担(持ち出し)を予定しているところもある。

ところがこの補助金や従前からの加算について、「経営者の搾取はないのか?」などと疑問を投げかけてくる人がいる。

補助金や加算の算定要件等の、「仕組み」を知る人なら、そんなことはあり得ないと理解できるはずであるが、そういう疑いの声が消えないのも事実である。

だからこそ介護関係者は、補助金や加算がすべて従業員に配分されているという事実を伝えるべきであり、同時に従業員の処遇改善内容を世間に広く周知するための情報発信にも努めるべきである。

ただし補助金や加算を利用して、裏技的に事業収益を増加させるなどの対応が行われているとしたら話は別である。そんなことがあっては、経営者の従業員からの搾取といわれても仕方がないことになってしまう。

例えば今回の補助金は本年2月から従業員に配分すべきものだが、2月と3月は一時金として支給すればよく、月額給与のベースアップ等で、毎月補助額の2/3以上が従業員に配分されるのは4月からとなっている。

そのため3月に2・3月分を一時金として一括支給して、基本給をそのままにしていた事業者において、4月から一時金として配分していた分を基本給に上乗せするだけで、それをもって定期昇給とした場合、補助金以外で改善する分以外の昇給はされていないということになってしまう。

つまり補助金の配分をそのまま定期昇給分として、この補助金支給が想定されていなかった当時に予定していた、補助金によらない定期昇給分から補助金改善分を差し引いて定期昇給額をカットしたり、補助金改善分以外の定期昇給を見送ってしまうとすれば、それは予定していた定期昇給分を事業者利益として内部留保を増やしているとか、経営者が搾取しているとか言われてしまうわけである。
従業員から搾取するブラック企業
そんなことがあってはならない。半年前にはこのような補助金が交付されることは予定になかったが、その時から予定されていた定期昇給分もしっかり従業員に上乗せして手渡すべきである。

4月からの給与月額については、補助金を配分する全職種について、(補助金による改善分)+(介護事業者の資金による定期昇給)とする必要があると思うのである。

そもそも今回の補助金や、10月以降の新処遇加算は、全産業平均給与と介護職の平均給与との格差を埋めようとするものだ。

4月以降他産業では給与改善が行われるのである。現に労働組合の中央組織「連合」は、今年の春闘で定期昇給と「ベースアップ」に相当する分として、合わせて4%程度の賃金引き上げを要求する方針を正式決定している。

2月からの改善額をそのまま定期昇給分として、4月以降にそれに上乗せをしないとしたら、2月と3月にいったん縮小された格差は、4月以降再び広がることになる。それは補助金主旨に反する結果になるといえるわけであり、本年4月以降については、介護職員処遇改善支援補助金で引き上げた給与にさらに、本来事業者の資金から手当てすべき定期昇給額を上乗せするようにしないと、「経営者の搾取」という誹りは免れないといえるのではないだろうか。

介護事業経営者の方々には、この点に十分注意を払っていただきたい。
登録から仕事の紹介、入職後のアフターフォローまで無料でサポート・厚労省許可の安心転職支援はこちらから。






※別ブログ「masaの血と骨と肉」と「masaの徒然草」もあります。お暇なときに覗きに来て下さい。

北海道介護福祉道場あかい花から介護・福祉情報掲示板(表板)に入ってください。

・「介護の誇り」は、こちらから送料無料で購入できます。

masaの看取り介護指南本看取りを支える介護実践〜命と向き合う現場から」(2019年1/20刊行)はこちらから送料無料で購入できます。
きみの介護に根拠はあるか
新刊「きみの介護に根拠はあるか〜本物の科学的介護とは(2021年10月10日発売)Amazonから取り寄せる方は、こちらをクリックしてください。