このブログに以前、介護人材確保問題に関連して、「面接で人物の見極めをすることは難しく、採用後の試用期間を有効に活用して適性を含めた人物の見極めが重要である。」と書いたことがある。

その時に、「サイコパス」が応募者に交じっていても見分けることは不可能で、こうした人物は知能が高いために、一見優秀な人物と見紛うことも多く、試用期間での見極めも難しい。そうした人物によって事業者内で犯罪が引き起こされてしまうことを防ぐための確実・有効な手当てがないのが難題だと論評したことがある。

しかしこの評論には少し誤解を生じさせる部分が混じっているようだ。なぜならサイコパスが必ず犯罪を引き起こすわけではないからである。

サイコパスとは境界性人格障害者のことを指し、どこにでもいるちょっと変わった困った人や、一部の芸術家にも多いタイプと言われている。例えば憎めない詐欺犯や、足を洗えない売春婦にも多いタイプである。病的虚言癖もこれに入る。

彼らは精神異常者ではない。その分治療を受けることもないから、社会に氾濫しつつある。

こうしたサイコパスの中から確信的に殺人を犯す人間が出てくる。それがサイコキラーである。

サイコキラーとは、猟奇殺人もしくは快楽殺人を繰り返す殺人犯のことであり、理知的なやり方や独自の理由で殺人を行う犯罪者もそう呼ばれている。

こうした人間が職場に交じっておれば大問題である。特に密室化しやすい場所で、利用者と1対1で対応する介護職員などに、サイコキラーが混じっていればとんでもないことになりかねない。

そのようなサイコキラーによって引き起こされたのではないかと疑われる事件も実際に介護施設で起きている。「3月しか勤務していない老健で何があったのか?〜空気注入殺人事件」という記事で紹介した、茨城県古河市の介護老人保健施設「けやきの舎」で、入所中の高齢男性2人が相次いで殺害された事件がそれであり、この事件で逮捕された容疑者がサイコキラーではないかと思える節がある。

水戸地検は1月12日、殺人容疑で逮捕された施設の元介護職員・赤間恵美容疑者(36)の鑑定留置を開始したそうである。検察当局は鑑定留置の終わる4月22日以降、赤間容疑者を2件の殺人罪で起訴できるか判断するという。

赤間恵美容疑者は中学卒業後、看護学科のある県立の高校に進学し、5年間通って看護師の資格を取得したそうである。

高校の同級生は赤間容疑者について、「成績が優秀なだけでなく、良く冗談を言ってみんなを明るくするムードメーカー。」と評しており、その時期にサイコパスの片りんは覗かせていない。
赤間容疑者のFBのプロフィール画像
※画像は今もネット上にある容疑者本人のFBのプロフィール画像。
高校卒業後、計3年余り埼玉県と栃木県の病院で看護師をしていたそうであるが、その後、2020年に事件を起こした老健施設に就職するまでの経歴はいまだに明らかになっていない。同容疑者がその間の経歴を意図的に隠しているとしか思えない。

警察はそのことをすでに掴んでいるのかもしれないが、事件のあった職場でもその間の経歴を正確につかんでいないという事実は、何を現わしているのだろう・・・。その間に起こった何かが、本件につながりがあるのかもしれない。

前述したように赤間容疑者は看護師の資格を持っている。そのため事件の現場となった「けやきの舎」でも、当初は介護職員ではなく、看護師として勤務していたという。

ところが就職からわずか2カ月後の2020年6月に、なぜか介護職に配置換えになっている。

ちょうど赤間容疑者が看護師から介護士に配置換えになる直前の20年5月に、2度目の逮捕容疑となった入所者の鈴木喜作さん(当時84歳)が死亡していることを考えると、鈴木さんの死に関連して、赤間容疑者に何かしら後ろめたい行動か、疑わしい行為があったのかもしれない。

それによって施設命令で看護師から介護職に配置替えしたとしたら、労務管理としてはいささか問題があるような気がする。利用者の「死」という事象に関連した配置換えの場合であれば、同じように密室化する場所で、直接利用者に接する職種にとどめておくのは問題なしとは言えないからだ。

鈴木さんは亡くなった際に司法解剖がされておらず、県警は搬送先の病院が実施したCT検査の画像を解析し、最初に逮捕した事件の被害者である吉田節次さん(当時76歳)と同じように体内に空気が注入されていたことが突き止められている。

そして二人目の犠牲者となった吉田さんが2020年7月6日に死亡する直前、赤間容疑者は吉田さんのベッド周辺で不審な行動をしているのを同僚に問い詰められ、その日のうちに「けやきの舎」を退職している。(※殺人容疑での最初の逮捕は、本件となっている。

吉田さんはその後、容態が急変し、「けやきの舎」の系列の栃木県内の病院に救急搬送された後に死亡しており、病院側が死因を不審に思い警察に通報し、司法解剖の結果、体内から大量の空気が見つかったものである。

報道では赤間容疑者が「けやきの舎」に就職して以降、退職するまでの間に、そのほかにも複数の人が急死しているそうである。その人たちは病死や自然死とされていたため、鈴木さんの死因が体内に空気を大量に注入されたという証拠となったCT検査の画像のような、不審死を疑う証拠もないために立件することは不可能だろう。

となると赤間容疑者が起こした事件は、2件の殺人容疑として起訴される可能性が高い。

しかし亡くなった吉田さん、鈴木さんと赤間容疑者の間でトラブルは確認されておらず、動機は今も不明のままだ。

その事実は、本件の殺人は恨みによるものではなく、盗みなどを目的とするものでもなく、体内に空気を注入することは命を奪うことだと知る看護師免許を持った容疑者が、それを試してみたかったとか、人を殺す経験をしたかったという動機で行われたのではないかという疑いがぬぐい切れない・・・。

なんとも恐ろしい事件であり、介護事業経営者にとって、このような性質の職員が混じっていたらどうしようもないと思うしかない事件でもある。
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