介護保険制度の誕生とともに介護支援専門員という資格ができ、その資格者がそれぞれの地域で活動するようになったことで、この国の福祉の底辺は確実に引き上げられている。

要介護高齢者にとって、自分の担当ケアマネジャーが近くにいるという状態は、考えられている以上に頼もしいことだ。特に高齢者夫婦世帯や独居の要介護者にとって、身近にいつでも相談できる担当者がいるという安心感は何にも代えがたいものである。

介護支援専門員という有資格者がいなかった当時、災害を含めて自分の身の回りに危機が迫っても、誰に助けを求めるべきかわからない高齢者が多かった。

しかし現在では介護サービスを利用している人であれば、ほとんどの方に担当ケアマネジャーがいて、災害が起きた場合は、自分の安否を黙っていても担当介護支援専門員が確認してくれるようになったのだ。それだけでも大きな違いであり、偉大なる安心感である。

実際に3.11の時の介護支援専門員の活躍はすさまじかった。自分や家族も被災者なのに、自分の担当者の安否確認のために、まともに睡眠もとらずに被災地を走り回っていた介護支援専門員がたくさんいて、それによって救われた要介護高齢者の方々もたくさんおられたのである。

そうであるにもかかわらず、国は介護支援専門員に冷たい。さすがにこの資格が不要だと思っている役人はおらず、介護支援専門員はなくてはならない資格だと思われてはいるが、介護職員の待遇を改善しようとする動きと比較すると、介護支援専門員の待遇改善・給与アップを実現しようとする動きは非常に鈍い。

そのためいつも処遇改善の対象から介護支援専門員は外されている。

2月からの給与9千円アップについても、介護支援専門員は蚊帳の外で、介護施設の介護支援専門員については、施設経営者の判断で介護職員処遇改善支援補助金を配分することが可能となっているものの、その施設に併設されている居宅介護支援事業所の介護支援専門員には配分できないというこルールになっている。

これは非常におかしなことで、同じ法人内の同じ有資格者が、配属されている事業の違いだけで待遇差が生ずることになる。これでは居宅介護支援事業所の介護支援専門員の成り手がいなくなってしまいかねない。

このことについては、12日の社会保障審議会・介護給付費分科会でも議論され、日本介護支援専門員協会副会長が、「同一法人の併設事業所なら、職員から見れば同じ1つの職場。円滑な職場環境の維持・継続に資するのではないか」としたうえで、「賃上げの対象となる施設・事業所と居宅介護支援が同一の敷地・建物に併設されている場合などは、そこの介護支援専門員らへの配分を認めることも検討して欲しい」と要請している。

その理屈と要請内容は極めて理にかなった正論であるといえ、多くの関係者もうなづく意見だろうと思う。

しかしそのようなまっとうな意見を受けて、国が改善に動くという姿勢は全く見られない。その一因には、意見を述べ要請している団体自体の問題が根底にあるといえよう。

日本介護支援専門員協会そのものが、国の補助金によってなんとか存続が可能になったという経緯があることが一番の問題だ。つまり日本介護支援専門員協会は、国の「ひも付き団体」であるという誹りを免れず、制度改正や報酬改定で意見を述べても、その影響力はほとんどないのである。(参照:国から日本介護支援専門員協会に渡される7.700万円

介護給付費分科会という国の審議会に委員を出しているといっても、それは関係者を交えて十分審議したという国のアリバイ作りの場に、ひな人形と同じようにお飾りとして参加しているという意味にしか過ぎないので、そこで意見を挙げたことによって、何かが変わるという問題でもないわけである。

全くむなしい職能団体である。そこに会費を払い続けている人も、その実情をわかっていない人が多いと思え、可哀そうなことだと思う。

そのような中、元気をなくしかねない介護支援専門員を鼓舞したいとして、十和田市居宅介護支援事業所連絡協議会の依頼を受けて、昨日オンライン講演を行った。
十和田市居宅介護支援事業所連絡協議会オンライン講演
介護支援専門員とはどのような存在なのかということを原点から考え直して、その使命と役割を再認識し、頑張ろうという気持ちを湧きあがらせたいという事務局の考え方で、「目指せ!介護支援専門員中の介護支援専門員!」というテーマをいただき、3時間という長時間の講演を行った。(※途中10分間の休憩あり)

前述したように、国の介護支援専門員に対する評価は決して悪いものではない。なくしてはならない資格とすべての官僚が考えている。

ただし問題点が全くないとは思っておらず、個人による資質の差が著しいというのが一番の問題で、達人といってよい介護支援専門員がいる一方で、国が期待するレベルに達しない介護支援専門員も多いことから、様々な縛り(ケアプランの届け出ルールやケアプランチェックの厳格化等)が増えている現状をわかりやすく解説したつもりだ。

そのうえで期待される介護支援専門員の仕事ぶりと、結果責任について実務に照らして解説した。

昨日はその講演を、十和田市の介護支援専門員の9割以上が受講していたとのことで、その3時間は利用者の方々が担当ケアマネの方と連絡が取りずらくなっていたかもしれない。

受講した方からは講演後、「3時間という時間を感じさせないくらい、アッという間に終わった内容の濃い講演だった」という評価もいただいている。後日、改めてアンケート結果等も届く予定であり、受講者の皆様の今日からの仕事の糧になってくれることを期待したいところである。

十和田市の介護支援専門員の皆さん、ありがとうございました。また愛ましょう。
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