後期高齢者の数が増え続ける中で、生産年齢人口の減少が止まらない我が国の事情を鑑みれば、介護人材不足問題は解消の手立てがないばかりか、その状況は一層悪化することが予測できる。

そのため介護業務のあらゆる部分に、人に代わる機器を活用することも必然となってくる。

もちろん人に代わって介護ができるロボットは存在しないわけだから、人が行っている介護業務すべてを機器に代替できるとは思えない。しかし今使える技術は積極的に介護事業に取り入れていくという考え方をしていかないと、介護業務が回りきらずに、そこから介護職員が離れて事業経営自体が難しくなる恐れがある。

だが介護サービスの場の職員が使いこなせない機器を、業者の宣伝文句に惑わされて購入して、介護職員に活用を強制しても、そのことはストレスになるだけで、やがてそうした機器自体が倉庫の肥やしになるだけである。そしてそうしたストレスに鈍感な事業者からは、有能な人材は流出していくのである。

だからこそ使える機器とはどのようなものかということを、現場目線で考えなければならない。

例えば、介護記録などをICT化してパソコン・タブレット・スマートフォンなどで作成することにより、介護スタッフが手書きの書類作成に取られていた事務仕事の時間が短縮されるだろう。

居宅介護支援や訪問介護等の訪問系サービスでは、タブレットやスマホなどのガジェットで記録することによって、利用者宅や移動の合間に記録ができ、帰社して記録するという必要がなくなる。こうした機器は積極的に活用を促したいものだ。

夜勤業務が伴う施設系サービスでは、見守り機器の導入が必然である。見守り機器は、「人の動きを見守って何かあったら知らせる」という機能は優れているので、活用することで定時見回りが必要なくなるというだけでも、夜勤業務の負担減につながる。

ただしそのことで配置人員を削減するのは藪蛇であるということは、「嫌な予感しかしない介護のデジタル推進」などで指摘している通りだ。

その他の機器の中で、施設サービスに限らず事業所内で介護業務が完結するサービスで、ぜひ利用を促進してほしいものとして、「インカム」が挙げられる。

介護業務は自分の手足を使って、利用者に直接サービス提供する業務が主となるのだから、ハンドフリーであることが必要になる。そして介護を行う場へ何かを持ち運ばなければならないという手間も省きたいところだ。その点でインカムは介護業務に適した機器であるといえる。
介護事業所のインカム利用
インカムは耳にかけておくだけで、様々な情報のやり取りができるのだから、介護を行いながら必要な連絡が可能になる。

緊急時のヘルプを求める連絡も、必要な介護行為を中断することなく行えるし、人が少ない中で介護と連絡を同時対応しなければならないときに非常に便利である。

インカムとナースコールを連動させることによって、素早いコール対応も可能になるだけではなく、介護・看護職員全員がインカムを装着して、双方向で情報のやり取りができる状態で仕事をするのが当たり前となっている特養では、連絡のために取られていた時間を大幅に短縮する効果が見られている。

その特養では入浴業務時の利用者の移動の連絡や、職員の呼び出し・離席する時の連絡を内線で行っていたが、職員を探す時間や待つ時間が長くかかり、全体の運営が遅れ残業が必要になることも多かった。しかしインカム導入後は、そうした状態が大幅に改善し残業が減ったという効果も見られている。

このようにSOSを出したい時や連絡事項がある時など、PHSや内線などで職員を探すことに大きな時間を割くという状態が改善させるだけで、業務は効率化し負担軽減につながるのである。

インカムを導入している介護事業者はまだ多くはない。しかしインカム導入で業務負担が軽減できることが広く理解されれば、積極的にその導入を検討する施設・事業所は増えるものと思える。

むしろそうした業務負担軽減の機器導入にお金をかけない事業者は、介護職員を大事にしていない事業者として、働きたくない職場とみられるかもしれない。逆に言えば、インカムを積極的に導入しているという事実だけで、介護人材が魅力を感じ募集に応募が増えることにつながる可能性もあるのだ。

今後の業務の効率化を考えるならば、その導入は不可欠になるだろうし、3年後あるいは5年後には、インカムを装着して介護業務を行うことが当たり前になっているのではないかと想像する。
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