介護保険制度は2005年以降、地域包括ケアシステムの構築と深化を目的として制度改正等が行われてきた。

地域包括ケアシステムは、高齢者が住み慣れた地域で生活できるように、保健・福祉・医療等のサービスが一体的に提供できる仕組みが整えられ、虐待防止や介護予防マネジメントなどが総合的に行われる状態を指しているが、それは決して住民からの通報のみによって専門機関が動くという性格のものではない。
介護問題
介護問題とは見えないところに隠されていて、表面化したときには既に対応しきれないほど深刻化する性格を持つものである。

だからこそ地域包括ケアシステムの肝は、「発見する福祉」なのである。

地域包括支援センターはその機能を十分に持つ必要がある。地域に埋もれ、制度の光が射さない影の部分に光を届ける機関が地域包括支援センターだからである。

そこに所属する職員は地域をくまなく回り、その実態を知悉し、地域の隠された介護問題をあぶり出す必要があるのだ。地域包括支援センターのデスクに腰かけているだけで、できる仕事ではないのである。

このように地域包括支援センターとは、地域包括ケアシステムの要の役割を果たすわけであるが、地域包括支援センターに勤務する職員に、「地域包括ケアシステムって何ですか?」・「地域包括ケアシステムは、この地域ではどんなふうに機能しているんですか?」と質問して、それに対して全員が明確に答えを示すことができるかどうかが問題である。

それに対する答えを明確に示すことができない人たちによって、地域包括ケアシステムが限りなく形骸化する場所では、悲惨な介護問題が今以上に数多く発生するであろう。

介護問題に関連しては、先日下記のような報道があった。
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12/13に兵庫県上郡町の民家で要介護2の88歳女性が、49歳の次男に殺害されるという事件が起きたが、それは介護疲れが原因であることが明らかになった。
歩行に支障がある64歳の次女も含めて3人暮らしのこの家庭で、主介護者であった次男は、最近腰を痛め、『もうくたびれてもうた』と親しい人にこぼしていたそうである。
しかし要介護認定を受けていた母親は、介護サービスを全く使っていなかった。
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本事件のような問題が起きたからと言って、その地域の地域包括支援センターをはじめとした福祉行政に問題があるということにはならない。

誰が悪いわけではないけれど、何らかの事情で利用できるサービスも使わずに、介護問題を自分一人で抱えて煮詰まり、取り返しのつかない状況に陥るケースは存在し続けるわけである。

しかしこうしたケースを、「仕方がない」と放置するだけでは、地域の介護問題は深刻化するだけである。こうしたケースを一件でも多くあぶり出すためにしなければならないことがある。

少なくともこの地域では、本件のような事件が起きたという事実を受け止めて、この事件の起こった家庭のケースを、「地域ケア会議」で検討すべきである。

発見できなかった介護問題を検討することによって、介護問題が地域に埋もれて表面化せずに済むケースが増えるかもしれないのだ。

本件では介護疲れで親を殺めてしまった二男について、なぜ制度の助けを求めることができなかったのかを徹底的に検証すべきである。

地域ケア会議とは、そうした目的のためにあるのだ。現在進行形のケース検討だけが、その対象となるなんて間違った理解をしないでほしい。
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