昨夕、恐ろしい事件のニュースが飛び込んできた。

茨城県警が昨日8日に会見を開き、老健施設入所者の体内に空気を注入して殺害したとして、元介護職員・赤間恵美(旧姓木村)容疑者(35)=同市大和田=を殺人容疑で逮捕したことを明らかにした。

事件は、茨城県古河市の介護老人保健施設「けやきの舎」で、2020年7月に発生したもの。
介護老人保健施設けやきの舎
各メディアの報道をつなぎ合わせると、事件概要は以下の通りとなる。
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事件概要
2020年7月6日午後0時半ごろ赤間容疑者は、勤務していた老健の入所者の吉田節次さん(当時76歳)の脚につながれた点滴用チューブに、空のシリンジ(注射筒)を接続して静脈に多量の空気を注入し死亡させた疑い。

吉田さんは寝たきりの状態ではなかったとのことだが、約1時間後に病院で亡くなった。その後に司法解剖されているが、不審な点が多かったことから捜査本部は医師や施設職員から話を聞くなどして捜査を進めていた。

吉田さんの死因は空気塞栓症による急性循環不全。空気は少量であれば血液内に入っても溶け込み死亡しないことなどから、既に針が刺されている点滴を使い、シリンジから多量の空気が注入されたとみられる。そのため捜査本部は、容疑者に明確な殺意があったとみて取り調べを行っている。
赤間容疑者
赤間容疑者は同施設に昨年4月下旬ごろから介護職員として勤務していたが、吉田さんが亡くなった7月6日の勤務を最後に自主退職していたという。

その後、容疑者は無職の状態であったそうだが、今年11月21日に牛肉など11点を万引したとして窃盗容疑で現行犯逮捕され起訴されていた。

14:00追記
なおこの施設では複数の入所者の不審死が確認されているそうだ。そのため県警は古河署に捜査本部を設置し関連を調べている。過去に例のない利用者連続殺人事件の様相を呈してきた。
事件概要はここまで。
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看護・介護関係者なら周知の事実であるが、看護師の資格を持っていたとしても、看護師としての発令を受けていない状態では、医師の指示があったとしても医療行為は出来ない。看護師資格をもとにして訪問介護事業所でヘルパー業務を行っている人が、医療行為ができないことと同じである。

赤間容疑者は看護師資格を持っていたが、介護職員として働いており、当然のことながらシリンジを扱うことができない立場だった。

施設側は取材に対し、シリンジは「ある程度適切に管理していた」と説明しているそうであるが、「ある程度しか管理されていない」ということが問題であり、介護職員である容疑者が、シリンジを使って点滴に空気注入できたという事実がある限り、その管理責任は当然追及されるだろうし、過失も認めざるを得ないだろう。

それにしても利用者の点滴に死に至らしめるような多量の空気を注入し、殺人行為に及ぶということは尋常な行為ではない。

犯行は容疑者が入職してから、わずか3月後の犯行だったわけである。そんな短い期間に、被害者を死に至らしめようと考えるほどの深い恨みを持ったというのか。その間にいったいどんな出来事があったというのであろうか・・・今後の動機の解明が待たれるところである。

たまたま昨日更新した記事でも、老健の連続死傷事件を取り挙げているが、介護を受ける場所で殺人という事件が起こることの恐ろしさを改めて感じざるを得ない。

本来その場は、要介護高齢者が護られる場所である。そこで事件に巻き込まれるなんて想像する人もいない場所だ。

そこで直接介護を行う職員の中に、狂気がある人間がいるなんて言うことを考える人なんていないのが普通だ。

しかしSアミーユ川崎幸町事件(※1審で死刑判決を受けている今井被告が、3人の入所者を3階のベランダから転落死させたとされる事件)や昨日論評した事件、そしてこの事件などの報道を目にすると、介護施設に安心して入所させられないと思う人が増えることを懸念せざるを得ない。

それは即ち介護事業者への不信感につながる問題であり、介護職の待遇改善を訴える際のバリアになりかねない問題でもある。

介護人材不足の折、職員募集に応募した人を適性判断が甘い状態で採用し、採用後の人物評価と見極めも行わない場所では、こうした事件がいつ起こっても不思議ではなくなってしまっているのではないか。それは最大の経営リスクであるともいえる。

そもそも殺人を犯すような気質を持つ人物が、採用後の教育訓練でどうにかなると思うのは間違いである。だからこそ採用時の人物評定と採用後一定期間での見極めが必要になるのだ。

採用時の完全なる人物評価は困難であるが、スキル・マインドなどの評価項目を定めて採用するとともに、試用期間をきちんと設けて、その間に人材の見極めを行わなければならない。

そうしたシステムを創り上げないと、短期間で利用者に対して害となる行為に及ぶ人材がいてもおかしくない職場環境に陥り、経営上の大きなリスクを抱えざるを得ないのである。

この部分の危機意識を、介護事業経営者や管理職の皆さんは強く持つべきだ。本事件を対岸の火事のように、悠長に眺めているだけであってはならないと思う。
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