介護保険施設の夜間配置基準は、「看護職または介護職」の配置人数を定めたもので、それ以外の職種が夜勤を行っても配置人数としてカウントすることは出来ない。

職員が不足しているからといって、相談員や事務員を夜勤シフトに入れても、配置人数とされないわけである。そのために配置規定数以上の看護職員もしくは介護職員を毎日配置する必要があるのだ。

ところで特養の場合は、看護職員が毎日夜勤シフトに入っている施設はほとんどない。

なぜなら特養の看護職員の配置基準は、入所者数(前年平均)130人未満の場合で常勤換算3人以上でしかないのだから、その3人で毎日夜勤シフトを組むと、3日に一度の夜勤ということになり、日中は最高で2人しか看護職員配置がなくなってしまう。(※前年平均入所者数50人以下の場合の看護職員配置数は常勤換算2以上

配置規定人数より看護職員の実配置人数を二人や三人増やしたとしても、その事情は大きく変わらないのだから、実質的に特養では看護職員が毎日夜勤業務に入ることは困難であると言ってよい。

そのためほとんどの特養は、看護職員の夜間オンコール体制を敷いているわけである。例えば1週間ごとの当番制で夜間オンコール担当者及び副担当者などを定めて、その期間は当番に当たる看護職員に夜間いつでも緊急連絡をしてよいということになっている。

ところがこの緊急連絡の定義を巡って、看護職員と介護職員の間でトラブルになることも少なくはない。

介護職員からしてみれば、利用者のちょっとした変化でも心配になって、看護職員と連絡を取って対応の指示を受けたいと思う。看取り介護対象者の場合なら、特に少しの変化でも対応を指示してもらいたいと考えるのは、ある意味当然である。

しかしそのことを当然であると理解してくれる看護職員ばかりではない。「その程度のことも自分で判断できないの?」・「そんなことまでイチイチ連絡しないでよ。」という対応で、看護職員・介護職員の双方にわだかまりができて、職場の人間関係に重大な支障を与えることもないとは言えない。

特に「そんな程度のこと」というあいまいな基準で叱責を受ける介護職員は、夜勤中のオンコールすべき状態判断に迷い、そのことが大きなストレスとなって、燃え尽き退職に至るケースもしばしばある。

それは労務管理上の大問題であり、事業経営危機に直結しかねない問題でもある。

だからこそ夜間のオンコール体制を敷く際には、どのような些事でもオンコールしてよいというルールを定めて、コール待機する看護職員に十分な理解を得ておくとともに、そのことの徹底を図るという意味で、夜勤中の看護職員と介護職員の連携と連絡がスムースにされているのかという確認と仲介を行う役割の職員も定めおく必要がある。

だが夜間オンコールがあまりにも些事に渡り頻回である状態は、待機する看護職員のストレスにもつながっていくわけである。その中には第3者から見ても、「そんなことまで連絡しなくても良いだろう」と思う問題もあるが、夜勤当事者からすればそんなことはないという話になる。

特養の看護職員の中には、医療機関の看護職員を長く務めた後、夜勤をしなくてよい状態に魅力を感じて特養に務める人もいる。そういう人が、さして必要性がないと感じる夜間の頻回なオンコールに嫌気がさして退職してしまうとケースも問題視されるべきだ。

しかし連絡する方、される方の両者に言い分がある問題の線引きは事実上困難である。どちらも正しいのだ。

そこで考えたいのは夜間オンコールのアウトソーシングである。

指定介護老人福祉施設の運営基準では、「指定介護老人福祉施設は、当該指定介護老人福祉施設の従業者によって指定介護福祉施設サービスを提供しなければならない。ただし、入所者の処遇に直接影響を及ぼさない業務については、この限りでない。」と規定されている。

逆に言えば、「この限りでない」部分はアウトソーシング可能なのである。
夜間オンコール
夜間の看護職員のオンコール対応はこの例外規定に当たるために、アウトソーシングできるのだ。

そもそもオンコールの8割は看護師が駆けつけなくとも解決する問題なので、オンコール対応の負担で看護職員の募集に応募がなかったり、それを理由に看護職員が辞めてしまう施設にとっては、こうしたアウトソーシングは大いに魅力的であると言える。

しかもアウトソーシングの場合、連絡を受ける外部業者は夜間に連絡を受けることそのものが本体業務であるから、どのような小さな問題であっても、第3者から見て下らないと思える連絡であっても、徹底的にウエルカムである。そこで連絡した介護職員が叱責を受けたり、不満をぶつけられたりすることは一切ないわけだ。

コールセンターで夜間連絡を受ける職員も看護職員であるから、連絡を受けた上で、どう対応すべきかアドバイスするとともに、実際に看護職員の直接介入が必要であると判断した場合には、コールセンターから施設の夜間待機看護職員に連絡をして、対応を促すことになる。

すると待機している施設看護職は、オンコール対応の際より、連絡を受ける頻度が8割程度減ることにつながり、待機の負担やストレスも大幅に減ることになるのだ。

人材確保に益々困難性が増す介護施設経営を考えるのであれば、こうしたアウトソーシングを進めることで、看護職員・介護職員双方の業務負担軽減とストレス軽減を図っていくことは大事な視点ではないかと思う。

僕が施設経営に携わっているときに、そうしたアウトソーシングできる社会資源があってくれればよかったのにと思っているところだ。

現在はそれがあるのだから、活用を考慮しない手はないと思う。
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