このブログで過去に何度か紹介させていただいているアローチャート研究会の主宰者は、梅光学院大学・特任教授である吉島豊録氏である。(参照:アローチャートは自分の思考回路を覚知させてくれます

梅光学院大学は山口県下関市にあるが、下関から九州側を見ると、福岡県北九州市門司はすぐ近くに位置していることがわかる。

両者の間に関門海峡という海があると言っても、関門トンネルという地下道があって、下関〜北九州間は歩いて通れるし、関門橋(かんもんきょう)という橋もかかっている。
関門橋
吉島先生は、その関門橋が建て始められてから、完成されるまでの様子を近くで見ていたそうである。

建設は下関側と、門司側の両者から同時進行的に行われ、最後に中間地点で1ミリの狂いもなくぴったり合わさって橋ができたそうである。

なぜこんなエピソードを取り挙げたかというと、吉島先生が僕のオンライン講演を聴いて、その内容が関門橋の建設作業を思い起こさせるものだと感想を述べられたからである。

その内容とは、11/21のアローチャート学会オンラインの中で僕が行なった、「きみの介護に根拠はあるか〜本物の科学的介護とは」という講演で語った、「科学的介護の確立」に向けた提言のことである。

僕が話した内容を要約すると以下のようにまとめることができる。

今現在国は、科学的介護情報システム(LIFE)に全国の介護事業者からデータを収集・蓄積している段階である。ごく近い将来にそのデータを分析し、ある一定の結果につながる介護の因果関係を導き出して、『こうしたらこうなる』という、科学的根拠(エビデンス)のある介護実践法を見出して、介護事業者にその実践を促したいと考えている。

しかし本当にそんなものはできるのだろうか・・・。

LIFEに集められているデータとは、ADL値、認知症のBPSD(行動心理症状)、栄養状態に関するデータに過ぎない。だから現在行われているフィードバックも、ADL、栄養、認知症など各項目の提供データ数値と、全国割合と該当者数を確認することのできる「暫定版」にとどまっている。

暫定でなくなったとしても、具体的なエビデンスが示されないで、単に全国平均値以上の数値を求めることしかできない可能性もある。

具体的な指摘ができるとしても、所詮それは栄養状態とADLもしくはBPSDの関連性、ADLとBPSDの関連性の指摘しかできないのではないか・・・。

そもそも人それぞれ個性が違う感情に向かい合う介護のエビデンスは、数値データだけで創り上げることはできないと思う。例えば生活習慣が介護の方法論に影響する場合もあるのだから、介護サービスの場で、いかに根拠に基づいた実践を重なることができるかが重要で、そうした根拠を積み重ねて初めて原因と結果の因果関係が見え、再現性のある方法論が生まれるのではないか。

つまりLIFEの運用によって科学的介護が導き出され、その方法論が確立するなんて云う幻想を描かないことが大事であり、介護のエビデンスづくりを国に頼らず、国が参考データを導き出してくれるのを期待しながら、私たちは介護実践の場で、根拠に基づいた介護を行い、こうしたらこうなるという言葉で伝えられる介護の実践法を自ら作り出す必要がある。

それがLIFEのデータと繋がって初めて、本当の科学的介護になり得るのではないかというのが僕の主張である。

吉島先生が、その話を関門橋の建設場面とオーバーラップして論評してくださったことにちなんで、僕のこの理論を、「関門橋理論」と呼ぶことにしようと思う。

関門橋のように、国と介護実践の場の両方向からアプローチが出来たら法等の意味で介護のエビデンスが生まれるのではないか・・・。国が数値データを分析した結果と、介護実践の場で根拠に事づいて積み上げた介護の方法論が、ちょうど真ん中でつながるように科学を創り上げることができれば、介護の方法論が大きく変わっていくかもしれない。

経験と勘に頼る介護は非科学的で、そのような介護から脱却することが求められると言うが、経験と勘を、『言葉と文章』で表現できれば、それはエビデンスと言えるのである。

だからこそ科学的介護が求められる今後の介護実践は、すべての支援行為の根拠を言葉や文章で表現できるように心掛けることが重要なのである。それが本物の科学的介護につながるのである。
関門トンネル
関門トンネル内の下関市と北九州市の分岐点に立つ筆者。
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