経営相談を受けている介護事業者のP/L(損益計算書)を見て愕然とすることがしばしばある。
算定すべき加算を取らずに何年も経過しているのに、その加算をどうして算定できないのかという問いに、経営者が明確に答えられないという状態は、加算を取得するように経営努力をしていないという意味だ。
同時に取得できない理由があったとしても、その理由を積極的に取り除く努力が見られない事業者も多い。小さな加算でも、取り逃さない努力をしていかないと、従業員に適切な対価を渡しながら経営を続けることは困難になるということをもっと重大視してほしい。そしてスピード感をもって改善に取り組んでほしい。
だがそれにも増して僕が問題視したいのは、垂れ流しにも似た支出の放置状態である。
明らかに無駄と思える支出を何年も放置し、それを改善しようともしていない状態で、収益が挙がらないと嘆いている経営者が実に多いのである。
これはトップに立つ人が介護事業経営を行っておらず、介護事業運営レベルにとどまっているからに他ならない。つまり経営を知らない人がトップに立っているという意味である。
特に措置費時代の残像を引きずっている社会福祉法人等に、こうした状況が数多くみられる。行政からの天下りが、机に座っているだけで運営ができた時代とは違うという意識改革をしないと、単年度赤字は解消できない。繰越金が未来永劫あり続けるわけではないのだ。
介護人材不足が叫ばれる現状から、求人費支出が毎年増えていること自体はやむを得ない。求人にも費用をかけないと良い人材が確保できないほど、人材は枯渇している。
しかし求人に毎年費用をかけ、その支出額が増え続けているのに、人材不足が解消しないということを、「社会情勢」とあきらめてしまっていてはどうしようもない。支出が増えているのに人材不足が一向に解決しないという状態は、かけた求人費支出がすべて無駄金・死に金になっているという意味である。
求人費の内訳をみると、求人媒体に対する費用支出が目立っているが、今現在の状況で言えば求人媒体はどこを使ってもたいした成果は得られない。
求人媒体が目新しかった頃は、そこに広告を載せる介護事業者も数が限らていたため、それなりの成果はあったが、今現在は無数の介護事業者がそこに掲載されている。
その結果、求職者は条件面だけを比較して応募することになり、介護事業者の理念や介護サービスの品質に興味のない人だけが集まり、定着率は向上しない。そのため人材確保にはつながらないのだ。
そもそも求人媒体は、広告主の成果にフォーカスしないだけではなく、成果のない広告を載せ続ける方が収益になることを理解せねばならない。
さらにそうした求人費をかけているのに、人が集まらないために人材派遣会社への紹介料などの支出も増えている。これは無駄に無駄を重ねているとしか言いようがない。
そもそも派遣職員は仕事ができても人財にはならないのである。派遣職員が優先するのは、派遣先の利益ではなく派遣会社の利益である。よって介護事業者の理念を実現するために全職員がスクラムを組まねばならないときに、そのスクラムから外れて、冷めた目線で見つめる位置にしか立とうとしないことも多いのである。
派遣職員を選ぶ人の動機は、そちらの方が給料が高いからというほかに、人間関係が煩わしいからという理由が多い。組織内で人間関係の問題が少しでも生ずると、派遣先を安易に変える人が多いことがそれを証拠立てているが、そのような人は組織人として適性があると言えるのだろうか。
そもそも人間関係を煩わしい人が、他者の感情と向かい合う対人援助の適性があると言えるだろうか。
乱暴な話ではあるが、僕の持論は、「看護や介護の職業に派遣労働を認めてはならない」というものだ。だから自分自身が経営していた社会福祉法人で、派遣労働者を雇用したことは一度もない。
どちらにしても求人費を垂れ流し、派遣職員がいないと経営が成り立たないような事業の危うさに考えが及ばない事業者は淘汰対象であると言えよう。
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