今週・火曜日(26日)に表の掲示板に建てられたスレッドの一つに、非常に気になる内容が書かれていた。

そのスレッドとは、当月ケアマネジャー不在による全額自費でのサービス提供についてである。

居宅介護支援事業所のケアマネジャーが、利用者の家族とのトラブルが生じて、今月のサービス利用が、居宅サービス計画がない状態での利用となってしまったというケースの相談である。

質問内容そのものにも引っかかるものがある。居宅サービス計画がないのだから、全額自費利用(保険外利用)として問題ないのかと質問すること自体が残念なことだ。

介護保険制度からもう20年以上経っているのに、居宅サービス計画書が何のためにあるのかわかっていない人が多いということに愕然としてしまう。

居宅サービス計画書は保険給付の条件ではなく、あくまで償還払いを現物給付化する要件でしかない。

居宅サービス計画書を作成しない状態での保険サービス利用も十分認められており、その場合は利用者が利用している介護事業所に法定価格の全額を支払い、領収書の交付を受けて、それを市町村に提出することによって、自己負担割合に基づいて9割〜7割を払い戻してもらうことができるのだ。

保険給付分の払い戻しが数カ月遅れになるという一時的負担増はあるものの、それだけの話である。保険給付にまったく問題はなく、お金が手元に返ってくるまで多少のタイムラグがあことを問題ではないと感ずる人は、居宅サービス計画を作成しないままサービス利用して何も問題ないわけである。

にもかかわらずいまだに居宅サービス計画書が作成されていない=全額自己負担利用と思い込んでいる関係者がいるということ自体が問題なのである。計画がなくとも、保険サービスを法定割合の自己負担で利用できるという『権利』は失われないという常識を持っていただきたいと思う。

このことを知らずに居宅サービス事業者が、計画のない利用者と保険外利用契約を行い、全額自己負担させていた場合、その契約の前提が、「保険サービスは受けられません」という事業者側からの通告に基づいていたとすれば、虚偽のルールを押し付けた保険外サービス利用の強要として運営指導を受けるだけではなく、場合によっては詐欺事件に発展しかねないので注意が必要だ。

なお施設サービス計画書と、居宅サービス計画書に基づいて提供される居宅サービス事業所(訪問介護等)の計画書については、現物給付化の要件ではなく、サービス提供の要件となっており、それらの計画のない保険利用は認められていないので、その点も注意が必要だ。(参照:居宅サービス計画と施設サービス計画の法的位置付けの違い

参照記事をもう一度確認して、しっかり法令理解を深めていただきたい。

しかしこのスレッドで一番気になったことというのは、それ以外のことである。

それは、「ご家族と担当ケアマネジャーとのトラブルで給付管理をする居宅介護支援事業所が不在となりました。」という一文である。

つまり本ケースは、最初から計画のないサービス利用であったわけではなく、あらかじめ計画書は作成されていたにもかかわらず、家族とケアマネがもめて、その計画の給付管理をしてくれなくなったために、居宅サービス事業所が国保連に費用請求しても支払いがされないというケースと考えられる。

それは困るので、計画書のない償還払い扱いにして、給付管理を行わなくても良いようにアドバイスされているもので、その解決方法自体に問題はない。

しかしこんなことが許されるのだろうか・・・。

事前作成していた居宅サービス計画に基づいてサービス利用している当事者がいるのに、そこで家族とトラブルになったからと言って、たとえそれが家族に一方的に非がある問題だとしても、その計画の給付管理を放り出して、「あとは勝手にしてくれ」という態度を、介護支援専門員という対人援助のプロが取ってよいものだろうか・・・。

そんなことがあってはならない。「それはトラブルを起こした家族の責任でしょ」ということにもならない。

そのことで迷惑をこうむるのは利用者だけではない。それはサービス提供事業所にも影響を及ぼす問題であり、それは担当ケアマネが扇の要となるべきチームにも迷惑をかけているという意味になる。

どのようなトラブルがあろうとも、自分が立案した計画に基づいてサービス利用をしている人がいる以上、その給付管理業務は自らの責任として全うしなければならない。

仕事を完結させたうえで、このような状態では信頼関係を結んで支援を継続することは不可能なので、担当を下ろさせていただきますというふうに、「飛ぶ鳥跡を濁さず」の精神が必要だ。

その場合にも、次の担当ケアマネにケースを引き継ぐまで責任を持つというのが、ケアマネジャーという有資格者の責任だろう。

そのような常識さえ持てないと人間は、ケアマネジメント業務に携わってはならないというだけではなく、対人援助という職業から退場せねばならないと思う。

このように途中でケアマネジメントを放り出してしまうケアマネジャーがいては、ケアマネ不要論(厚労省内部でそんな論議はないが)を唱える輩は、いつまでもなくならないと思う。

それは介護支援専門員という資格を、介護支援専門員自らが貶めてしまう行為だということを自覚してほしい。
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