4月からリニューアルスタートを切った国の介護データベース、「LIFE」への情報提出作業で四苦八苦している介護事業者はまだ多い。

例えば表の掲示板では、科学的介護推進体制加算について、算定に必要な必須項目の入力漏れが今の段階で見つかり、加算返還が必要なのかというスレッドが立てられている。

必須項目については、「やむを得ない場合を除き、すべて提出すること」とされており、既に情報提出猶予期間も過ぎてしまっているので、必須項目に漏れがあった9月分までの加算算定分は返還する必要があるだろう。お気の毒である。

新たなルールの下で慣れない作業の中であり、悪意のないミスについては何らかの救済措置が取られてほしいが、残念ながらそのような措置はなさそうなので、情報提出担当者の方々はくれぐれも確認作業を怠らず、ミスのない情報提出に努めてもらいたい。

ところでこのブログで何度も指摘しているように、LIFEへの情報提出義務がある加算は、情報を提出するだけでは算定できず、提出情報をLIFEが解析した結果がフィードバックされるので、それをPDCA活用すること初めて算定できる。

つまりケアプラン等に基づいた計画的な介護実践を、定期的に検証してLIFEに送るとともに、LIFEからフィードバックされた内容を、事業者方針や個別のケアプランに落とし込んで、計画内容等を常に改善していくサイクルが求められているわけだ。

この際LIFE で作成されるフィードバック票は、事業所票と利用者票の 2 種類から構成されている。これを介護事業者ではどのようにPDCA活用するかという検討を行う場を事業者内に備えておく必要がある。

だが新たにそのための委員会を立ち上げて、フィードバック活用の方法を検討するためだけに時間を割くというのは、介護事業者にとって大きな負担である。

だからこそ僕は、その検討は既存の委員会の中で行うことを推奨している。

例えば事業者フィードバックについては、「全体会議(職員会議)」を活用し、利用者フィードバックについては、サービス担当者会議(ケアカンファレンス)を活用してはどうだろう。そこで必ずフィードバック内容をどう活用するのかを話し合うことにすれば、新たな委員会の立ち上げや、別途委員会を開催するという手間は掛けずに済む。

フィードバック活用の検討の場は必ず必要になるのだから、できるだけ省力化できるこうした方法をとることをお勧めする。

ところでフィードバックの内容については、国資料の「個別化された自立支援・科学的介護の推進例(イメージ)」では、事業者フィードバック例としては、「入所者の要介護度は全国平均より低くADLも良好であり、食事摂取場所も全国平均と同様居室外が多いのだから、排せつは全国平均よりオムツにする人が多いので、更なる改善が必要」としている。

また利用者個人のフィードバック例としては、「要介護3・80歳男性」について、「同じような利用者のデータと比較して、リハビリ効果が低いが、それはBMIの低さが起因している」として、「リハビリに併せて食事提供量の増量」を求めている。

この資料の内容のようなフィードバックであれば、それをPDCA活用することはさほど難しくない。具体的に改善すべき内容が示されているので、事業者フィードバックの活用は、おむつを外して日中トイレで排泄できる人を増やすように、ケアプランの見直しなどを行った記録があればよいし、個別フィードバック活用は、当該利用者のケアプランに食事提供量の増量に関する内容を加えればよいだけだからだ。

ところが今現在LIFEからフィードバックされているものは、国資料のような具体的内容になっていない。

今フィードバックされているのはADL値点数の改善推移などで、時系列の利用者データを棒グラフで表し、LIFEでの全国平均値が折れ線グラフで表されている。排尿・排便などの施設全体の状況では、全介助・一部介助・見守り・自立の割合を、全体を100とした棒グラフで、時系列の横並びで表し、左側にLIFEでの全国平均値が棒グラフで表されるだけである。

このグラフを見て、「あの数字の羅列のどこを、何を、どんな風に活用すればいいのか。」と疑問を口にする関係者も多い。

確かに全国平均値と自らの事業所の数値の違いをPDCA活用するというために、何をどうしたらよいのかということは判断が難しい問題だ。利用者属性等に違いがあるのだから、数値の推移が平均値と異なるのはある意味当たり前だからである。

しかし全国平均値は、それが標準とされる可能性が高くなる。それ以下の事業者は、『ケアの質が低い事業者である』とされる可能性があるのだ。よって各事業者は、この数値変化の平均値を意識せざるを得なくなる。その数値を下回らない、あるいは近づけるために何をすべきかを考えて、PDCA活用する必要があるのではないだろうか。

とりあえず考えられるPDCA活用の方法とは、送られてきた全国平均値と自社の実態を比較して、その違いの原因を検証するとともに、平均値より劣っていると考えられる部分の改善案を事業者方針や、個別のケアプランに落とし込んでいくしかないように思う。その記録をもってPDCA活用の証拠とするしかないと思う。

本当にそれが高品質サービスにつながり、利用者に豊かな暮らしを提供できる根拠となるかどうかは怪しいが、決められたルールの中で費用算定をしなければならないので、そこは割り切ってできることをしていくしかないのだろうと思う。

おそらくこうしたフィードバックしかできないのには理由がある。それはLIFEシステムの準備不足やヘルプデスクの対応が遅れたことなどから、LIFEへの情報提出に当初想定しなかった猶予期間を設定する必要が生じたことも一因だろう。

しかし何より現在はデータを集積している途中であって、それを十分に解析するに至っていないということだと思う。「こうすることで、こういう結果につながる」というエビデンスが生まれたわけではないのである。よってしばらくの間は、提出したADL値などの時系列の変化と、全国平均値のそれを比較するグラフでしかフィードバックされないと思われる。

国はフィードバック内容を順次拡充していくとしているので、順次PDCA活用が容易となる具体的フィードバックに近づいていくことだろう。ただそれは来年度以降となるのではないだろうか。
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