新しいケアプランチェックの仕組みについて昨日、「新たなケアプランチェックの詳細が明らかになりました」という記事を更新して解説したところである。

ここには書かなかったが、この仕組みが通知された、「介護保険最新情報Vol.1009」には、このほか(2)高齢者向け住まい等対策のケアプラン点検として、サ高住入居者などに併設されているなどの居宅介護支援事業所に限ったケアプラン点検の仕組みも示されている。

それによるとサ高住や住宅型有料老人ホームなどに併設されている居宅介護支援事業所(併設、隣接、近接のほか、同一法人、系列法人など、関係があるとみられる事業所を含む)について、10月以降分の計画で区分支給限度基準額の利用割合が高く、かつ特定の介護サービスの利用割合も高い事業所などにケアプランの提出を求め、その内容が適切かどうかチェックするという内容になっている。
※区分支給限度基準額管理対象サービスは全て選択可だが、組合せは2つまで。区分支給限度基準額の対象外である加算等や超過部分の自己負担分は計算の対象外

ケアプラン検証は市町村独自の方法で行い、地域ケア会議などを活用しても良いことになっており、昨日解説した全事業所対象のプラン検証が、地域ケア会議等の行政職やリハ専門職が参加する形で行う会議等と定められた検証方法より、市町村の裁量が広げられる方法となっている。

問題があるとされたプランは、同様・類似のプランを含めて居宅介護事業所が再検討する点については、全事業所対象のプランの検証後の対応と同様である。

全ての居宅介護支援事業所を対象にしたケアプラン検証は、サービス費の総額が限度額に占める割合が7割以上で、かつ6割以上が訪問介護を計画している事業所であったが、併設等の事業所のケアプラン検証については、訪問介護のみならず全てのサービスについて一定割合以上の場合で、かつ区分支給限度額の一定割合以上の計画が対象となる。

この二つの割合については、何割以上を対象とするのかを市町村が独自に定められるとしている。

市町村は、必要な数値・サービス種類の設定を行ったうえで国保連に依頼することで、対象となる事業所の一覧表が送られてくることになり、検証対象とするというものだ。

全事業所を対象にしたケアプラン検証に該当するのは全体のおよそ3%でしかないわけであるし、併設等居宅に限定したプラン検証の対象事業所は、それよりさらに少ないわけだから、居宅介護支援事業所にとって、このことはあまり負担とならないかもしれない。

しかし市町村は、今後3月ごとに2つの新たなケアプランチェックに関する業務が永遠と続くわけだから、相当の業務負担と思われる。

昨日の記事でプランチェック担当者について、小権力を振りかざして喜ぶ輩が出てくるのではないかと揶揄したが、業務負担増を考えるとそれ以上にねぎらいの言葉を掛ける必要があるかもしれないと反省したりしている。

ところで本日解説したケアプランチェックには、本当にケアマネジメント適正化の効果があるのか疑問に思う点が多い。

そもそもサ高住や住宅型有料老人ホームに入所する人は、最初から外部の介護保険サービスを利用することが前提となっている。サ高住の基本サービスは、「見守りと生活相談」のみであるし、住宅型有料老人ホームにはその義務さえないのだから、要介護認定で非該当とされるような状態像の方でない限り、介護サービス利用は必然だ。

現在、特養入所をしないでサ高住を選ぶ人の中には、「特養に入所すると週に2回しか入浴できなくなる」として、あえてサ高住を選んで、外部の訪問介護を利用しながら1日おきに入浴支援を受けている人もいる。

日中暇な時間は併設のデイサービスを利用したいとして、週5回以上通所介護利用している人もいる。

それらを積み重ねていけば、支給限度額に近い額のサービス利用は当然であるし、利用者のニーズと希望に対応することで、一定のサービスの比率が高まることも当然であり、それはすべてニーズに対応したサービス利用である。

そもそも支給限度額は、その介護度に応じたサービスを保険利用できる適正範囲を定めたもので、上限に近い利用割合が即ち平均値となっても不思議のないものである。

その範囲の中で適正なサービス利用を図るのは行政チェックではなく、居宅介護支援事業所のケアマネジメントそのものである。

そうであるにもかかわらず、基準改正の度に行政のケアプランチェックの網を広げていくのは、いかにケアマネジメントを信用していないかという意味でしかない。そうであるならいっそのこと、居宅介護支援事業を廃止して、要介護者のケアマネジメントは行政責任とすればよいのにと思ってしまう。・・・それは勿論、乱暴すぎる考え方だが、そうでもいいたくなるような腹立たしさである。

サ高住利用者等のケアマネジメントで一番の問題は、サ高住の入所条件として、サ高住併設の居宅介護支援事業所を利用することとして、そこで居宅サービス計画を立てることで、サ高併設のサービス事業所等の関連サービスの中に利用者を囲い込むことであるにもかかわらず、今回のケアプラン検証では、こうしたプランは適正化できない。

サ高住等の高齢者向け住まいに併設する居宅介護支援事業所には、併設施設以外に住む地域の利用者の居宅サービス計画を、一定割合義務付けたうえで、全プランに占める併設サービスの割合も一定割合以下とするルールを創る方が、囲い込みを防いだケアプランの適正化につながると思うのは僕だけだろうか。

利用者の生活課題をアセスメントする手法を中心にしたケアマネジメントを制度の中核に位置付けながら、役人がそれを定期的に監視チェックする仕組みの網を広げるというこの制度は、いったい誰のための、どんな目的の制度になっていくのだろう。

国民の福祉は、そんな方法では向上しないと思うのだが・・・。
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