高校を卒業して介護福祉士養成校に入学してくる学生は、介護福祉士になりたいという様々な、「動機づけ」を持っている。

しかもその動機づけは、かなり強く重たい動機づけであることが多い。

学生時代に進路指導の際に担当教員から、介護の仕事に将来性はないので進路を考え直すように指導されたにもかかわらず、強い意志で当初からの動機づけを護って入学してくる学生も少なくない。

その中には介護福祉士として働く自分の親の姿を見て、あんなふうに人の役に立つ仕事をしたいと思って入学してくる学生もいる。まさに親の背中を見て育った結果である。

そんな風に我が子に尊敬される介護福祉士は、きっと誰もが認める信頼される仕事をしているのだと思う。そしてその仕事ぶりを、自分自身の姿や言葉で子供に伝えているのだろう。それは尊敬に値することだと心から思う。

自分の仕事に誇りを持っているからこそ伝わるものがあり、我が子の心を動かすのだろうと思う。そんな家庭で育った若者が、変な人間になるわけがない。

彼ら彼女らは、親とその仕事に誇りを持っているから、自分が介護の専門職になろうと頑張ることにも誇りを持っている。介護の仕事に決して将来がないなん思っていない。むしろその子たちは、自分の将来を、自らの力で手に入れようとしているのである。彼ら彼女らに幸あれと願うばかりだ。

そういう介護人材こそ本当の意味で、「金の卵」だと思う。そうした人材をつぶさないように、大切に育てたいと思いながら彼らを指導している。

ところがそんな大切な人材をつぶしているのが、人材を求めているはずの介護事業者である。そこで働く介護職員が、若い芽を摘み取ってしまうという現実がある。

介護実習中に介護技術を伝えようとせず、職場のルーチンワークを指導して終わるだけならまだしも、そこで利用者の方々に丁寧に接しようとしている若者に、「そんなことしていたらいつまでも仕事が終わらないよ」と言って、乱暴で機械的な作業を強いる人がいたりする。

それに対して学生は疑問の声さえ挙げることを許されない。何か言おうとしたときに、「理想と現実は違う」という言葉で、すべての声は封殺されてしまうからだ。

しかし理想と現実が違っているのは当たり前だ。理想は目指すべきものであり、現実がそこに達していないからこそ、目標にする理想が存在するのだ。

その目指すべきもの自体を否定してどうするのだと言いたい。あなたの現実のひどさを、何とかしようとして理想があるということを忘れないでほしい。

人は間違ったことを他人に強いるとき、「それが現実だ」というのである。そうした間違った指導がそこかしこで行われているから、人材は育たず、良い人材ほど先にバーンアウトしてしまうのだ。

そのような人材をつぶす指導が学生実習の場だけではなく、新卒者が就職した職場で、入職初日から行われることも多い。そこで志のある若い芽は摘まれてしまうのである。

それが日本の介護現場の実態の一部であり、人が育たない根本原因でもある。ここにメスを入れない限り、介護人材不足は解消しないだろう。

昨今の介護業界は、そこで働く人々に仕事に見合った対価を支払おうという方向に動き続けている。政治もやっとその方向に舵を取り始めたところだ。

そうした風を受けて、まともな介護事業経営者なら、介護福祉士の存在価値をきちんと認めて、相応の対価を支払う方向に舵取りをしていくはずだ。

そういう意味でも介護の仕事に将来性がないなんてことにはならないし、介護福祉士という有資格者の未来は決して暗くないのである。

介護という職業に光が差し始めているのだ。しかしその光を遮るのが、介護の場で働く志を持たない先輩職員であるという現実がある。それが光の届かない影を作り、闇を深くする根本原因だ。

この闇を払うために何をすれば良いのか・・・そんなことを考えながら日々情報発信を続けている。そして志を同じくする人々と、闇を払うためのスクラムを組もうと繋がりあっている。

貴方の職場が、どうぞ若い芽を豊かに育てる職場環境であってください。どうぞ若い芽を枯れさせないように、あなたの手で水を撒いてください。どうぞ・・・お願いします。
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