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さて話は変わって今日の本題。

科学的介護の実現が最大の課題とされている介護業界であるが、勘違いしてはならないことは、最新技術や最先端機器を活用することが科学的介護ではないということだ。

科学的介護の正しい意味とは、科学的根拠と科学的思考によって、予測される結果に結び付ける方法論のことを言い、そうした介護の実現を図ることを目的とするのが、「科学的介護」である。

しかし介護という領域および介護という職業において、本当に科学的方法論が成立するのかには疑問が残る。

なぜなら科学的方法では、人間の感情にはたどり着けない部分があるからだ。

善意が常に相手に伝わるとは限らないし、正論で結果がすべて導き出せるわけではない。完全予測不能な人の感情とどう向き合って科学すればよいのだろうか?

例えば、こうすればスムースに着替えができると実証されている方法で介護を行っても、介護を受ける利用者の虫の居所によっては、その方法に不満を持つことがあり、時には嫌悪感を表したり、介護拒否したりする結果になることもある。

このように介護という職業には、非論理的な結果が常に出現する可能性がある。

こうすればこうなる、といった事象を集めたうえで、原因と結果を探してゆくのが科学的方法である。それは考え方や行動のしかたが、論理的、実証的で、系統立っているさまをいう。

しかし人の暮らしとは、すべて論理的行動に基づいているわけではない。健全な暮らしを営んでいることに疲れて、不健全で不健康で不条理な逸脱を常に臨むのが感情を持つ人間の複雑さなのである。

行き当たりばったりに何かをして、結果オーライというのは最も非科学的であるとされる。

ところが、こうすればこうなるはずなのに、人によって違う結果が出るというのが、感情をもつ人間に対する介護の困難さでもあるが、その時に慌てふためいて、とりあえず思いついた方法をとった結果が、思わずその人にとっては有効な方法だったという経験を持つ人は多いだろう。

つまり結果オーライの非科学的介護が、特定の利用者にとっては求められる方法論であるということがあり得るのが介護という職業の難しさなのである。

この非科学的・結果オーライケアも、「はずれ値」の一部であるとして、科学的根拠に取り込んでいくことができるのかどうかが、科学的介護の実現の成否に結び付いてくるかもしれない。

例えばある行為を行う上で、事前にその意味を利用者に説明し、意図を理解してもらうことが重要だとされていたとしても、感情のある人間であるがゆえに、それは説明マニュアルだけで解決しない問題である。

ある人には、十分かいつまんで説明することが必要になるかもしれないが、そのような説明を回りくどいと感じ、逆に簡潔で要点のみの説明を良しとする方、説明なんかしないでほしいと思う方、説明より自分の話を聴いてほしいという方など様々である。

それらをすべて含めて科学的介護を実現するには、統計学的論理に加えて、介護サービスの場で一人ひとりの利用者の感情を受け止めて個別化し、それをもケアプラン上に落とし込んでいくということが求められてくる。

そんな難しいことは出来ないと言われそうだが、案外この方法は介護サービスの場ではごく普通に行われている。

例えば新人職員が特定の利用者なプローチする際に、先輩から、「○○さんは、少し頑固で難しいところがある人なので、きちんと声をかけて一つ一つの動作介助をしないとだめだけど、虫の居所によっては、その声かけさえも面白くなくて暴言や介護拒否に結び付いちゃうので、まずは気分を良くさせないとだめよ。そのためには若いころから経理が得意で、会社の経理事務を支えていたことを誇りにしているから、そこに話を持っていって、饒舌に話し出したら声をかけてみてね」なんてアドバイスが行われていたりする。

このことを一人の職員の頭の中だけに置いておかないで、ケアプランの書式に備考欄を設けて、文章として残しておくだけで、個人の感情とニーズを個別化した科学的介護に近づくことができるというものである。

そのケアプランを科学的介護情報システム(LIFE)が読み取って分析することができるかどうかは別にして、介護サービスの場での様々な気づきにはなっていくだろう。

それが蓄積した先に、介護データベースに寄り掛からない科学的根拠が、介護サービスの場で生まれてくるというのであれば、そちらの方が真実に近いと言えるだろう。

どちらにしても私たちが対人援助の場で目指すのは、科学的介護の実践そのものではなく、利用者の暮らしの質の向上であるのだから、そのツールとして国が掲げる科学的介護以上のものがあれば、そっちを利用すればよいだけの話である。

この部分では役人や学者より、私たちの方が使える頭脳を持っているのだから・・・。
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