厚労省は都道府県が福祉人材センターへ、「介護助手等普及推進員(仮称)」を配置した際に、人件費などを補助していく方針を決定し、来年度予算の概算要求に3億円を盛り込んだ。

推進員の役割は、各地の社会福祉協議会や福祉事務所などを巡回して介護助手の担い手を掘り起こしたり、介護助手の受け入れに有効な介護事業者の業務改善・求人開拓などに関する助言などを行うことであると例示されており、当面は都道府県ごとに1人以上の推進員の配置を目指すそうである。

しかしこんなことを介護事業者や国民が求めていると本当に思っているのだろうか?

そもそも介護助手なんて、介護現場で本当に役に立つのだろうか?

助手の役割とは、施設などで物品の補充や食事の配膳、清掃といった仕事をこなし、身体介護などの担い手をバックアップすることである。それによって介護職の人手不足を補うと国は主張しているが、本当にそんなことで介護職員の業務負担が減って、仕事が回っていくだろうか。

清掃を介護職員が行っているという施設はほとんどない。清掃員は別に配置されてるところがほとんどであるし、配膳だって調理委託する業者の職員が行うのが普通だ。それらは既に介護の場からアウトソーシングされ、介護事業者の業務負担ではなくなっている。

物品の補充だって営繕職員か事務職が行っているだろう。今更介護助手を雇って行わせるような業務ではない。

僕が社福の総合施設長を務めていた当時、忙しく重労働に励む介護職員の業務を少しでも楽にしようとして、フルタイムで働くことができない事情のある人や、一部の介護業務しかこなせないスキルの人も雇い入れ、その事情や能力に応じた短時間配置を行ったりした時期がある。

その中には、現在国が配置を促している介護助手に当てはまる職員も複数いた。

しかしそうした職員雇用に対して、介護職員からの評判は良くなかった。

どうせ人を雇うなら、きちんと介護ができる人を雇ってくださいと言われたものだ。特定の時間に、特定の行為しかできない人がいても邪魔になるだけだと言われたこともある。

なるほど・・・。配膳した後、食事介助を行うことができない職員がそこにいて何の意味があるのだというわけである。それならいっそ調理の人が配膳して、そのあと厨房に入っていてくれた方がマシということだ。

そのように考えると、介護施設で介護助手とされる人たちが必要とされる場面というのはほとんどないと言ってよく、そういう人がいた場合には、介護職員があまり介護に精通していない人に、何をすべきか何をしてはならないのかを細かく指示するだけ、業務負担が増える結果になりかねない。

助手的な業務しかできない人はスキルもそれなりで、指示に沿わない動きもしてしまうだろうから、そのことは介護職員の大きなストレス要因だ。

しかも今般の予算要求は、介護助手そのものに対する費用ではなく、その配置をバックアップする推進員を配置するのにかける費用だ。それに対してこの財政難の折に3億もの国費を投入するのも疑問だ。実績のない推進員を配置したからと言って、介護人材不足の解消につながるなんて考えられないからである。無駄金・死に金としか思えない。

さらに言えば推進員が介護助手を、「掘り起こす」というが、介護業務を担えないスキルの人材を掘り起こして、その人が介護事業者の戦力になるとでも思っているのか。そんな中途半端なスキルしかない人物を掘り起こしたころで、事業者のお荷物か、場合によっては事故や不適切対応が増大するというリスク要因にしかならない。

介護人材不足は深刻で、だからと言って介護という専門職は誰にでも担える業務ではないことから、それを補う別な人材を配置して、少しでも介護職員の業務負担を減らそうという目論見はわからないでもない。

しかし所詮介護実務に精通していないお役人の考えることである。介護事業者のニーズと、その考えは全くあっていない。

推進員の詳しい要件にしても同様で、社会保険労務士や経営者らを想定していると言うが、社労士が制度を熟知している人と言えるだろうか?これもあっち向いてホイの考え方である。

お役人様は頭の良い人達だが、自分の身体を使って介護労働を一度もしたことのない人だから、机上の上だけで数合わせや、業務軽減というものを考えてしまう。だからこのような無駄で意味のない対策しか取れないのである。

地位や身分を抜きにして、介護の場に精通した人であって、かつその考え方をきちんと言葉や文章にできる人から意見を聴くべきだと思う。

そうしない限り本当に必要な対策など打ち立てられるわけがないのだ・・・。
きみの介護に根拠はあるか
新刊「きみの介護に根拠はあるか〜本物の科学的介護とは(2021年10月10日発売)特典付き注文書は、こちらをクリックしてください。送料無料です。
登録から仕事の紹介、入職後のアフターフォローまで無料でサポート・厚労省許可の安心転職支援はこちらから。

※介護事業経営に不可欠なランニングコストをリスクゼロで削減できる新情報を紹介しています。まずは無料診断から始めましょう。電気代でお困りの法人・個人事業主様へ、電気コスト削減!【ライトでんき】





※別ブログ「masaの血と骨と肉」と「masaの徒然草」もあります。お暇なときに覗きに来て下さい。

北海道介護福祉道場あかい花から介護・福祉情報掲示板(表板)に入ってください。

・「介護の誇り」は、こちらから送料無料で購入できます。

masaの最新刊看取りを支える介護実践〜命と向き合う現場から」(2019年1/20刊行)はこちらから送料無料で購入できます。