先週起きた二つの事件から、深く考えされられた問題があった。

まず一つは、「プライド」の問題である。

東京都港区の東京メトロ白金高輪駅で男性会社員(22)に硫酸とみられる液体をかけたとして、傷害容疑で静岡市の大学生・花森弘卓容疑者(25)が逮捕された事件では、被害にあった男性が、事件のきっかけになったと思われるトラブルについて事情聴取の中で、「タメ口が原因」と供述しているというのである。

報道によると、花森容疑者はかつて琉球大農学部に在籍し、映画サークルで被害者である男性と一緒だったそうであるが、男性は「数人でいた時に花森容疑者にタメ口を使ったら『自分が年上なのに、タメ口はおかしい』と怒られた」と説明している。花森容疑者は男性より1年早く入学したが、2年生になって入ったサークルでは同期だった。

サークルで同期と言っても、学年では容疑者が1年上なのだから、タメ口で話しかけられて気分を害すること自体はわからない感情ではない。しかしそれがずっと何年も尾を引いて恨みとして残り、犯行に結び付くというのは常人には理解できないことだ。

本当にこのことが事件の動機になったのかは疑問が残るが、被害者が唯一トラブル原因として記憶している事柄が、「タメ口」によるトラブルなのだから、容疑者は我々の想像以上に、そのことに根深い恨みを抱いて、その恨みを一方的に募らせた末の犯行であったのかもしれない。

現代っ子と言ってよい、22歳と25歳の間のトラブルにおいても、年齢差・人生の先輩後輩・礼儀ということが問題になっていることを考えると、戦後生まれの方が多くなったとはいえ、介護サービス利用者の多くは、儒教道徳の影響を色濃く受けており、長幼の序を重んずることを考えなければならない。

若い介護職員が親しみやすさのつもりで日常的に、「タメ口」で接することは苦々しく思っている高齢者はたくさんいるし、そのことに傷ついて悔しがっている人も多いことを、介護関係者は心に刻むべきである。・・・そのことがまず一つ。

もう一つは、相変わらずなくならない介護事業者の虐待に開いた口がふさがらないのと同時に、世間がそのことに思った以上に憤慨し、糾弾の狼煙をあげていることの怖さについてである。

先週金曜日に報道された事件は、山口県周南市の高齢者入所施設で起きたもので、施設長である片岡加寿子容疑者(60)が、入所者の目や口に粘着テープを貼ったとして、暴行の疑いで逮捕されるという施設長として、介護関係者としてあるまじき恥ずべき行為が行われていたというものだ。

行為そのものが驚くほど常軌を逸したものであるが、おそらくこうした暴行は、日常的に何らかの、「罰則・行動制限」として行われていたのではないだろうか。

容疑者は犯行を認めているとのことで、その行為はいかなる誹りを受けても仕方のないものであるが、この報道がネット上に流されてから2時間も経たないうちに、容疑者の顔写真や自宅を探し当てようとする情報サイトが立ち上がっているという恐ろしいことが行われているのだ。
容疑者をさらすサイト
※報道数時間後にネット上に立ち上がったサイト。

容疑者の顔写真やSNSアカウントを探すサイトが立ち上がったことをきっかけに、それとは別に容疑者を徹底的にたたく掲示板が立ち上げられ、そこでは当該事業所のサイトに容疑者画像は掲載されていないか等々、憶測も交えて様々な情報がたれ流されている状態である。

そこに参加している匿名のネット住民は、みんな清廉潔白な人ではないと思うのだが、事件の糾弾の論調については全員が正義は我にありという論調で、犯人を厳しく糾弾している。

それは繰り返される介護事業者の虐待報道にいら立っての論調だけとは言えないように思え、そこには事件を糾弾する意見を煽って、個人攻撃の炎を燃え盛らせて愉しむことを目的化したような書き込みも多くみられる。

そこはまるでネットの世界が法廷と化し、弁護人のいない被告に対して参加者全員でその罪を糾弾し、罵詈雑言を浴びせて人格攻撃を行い、その状態が果てることがないかのような状態だ。

その罵詈雑言は容疑者のみならず、容疑者が所属していた介護事業者のありとあらゆるものに向けられてゆく。そのことにも限りがない・・・。容疑者が行った行為は恥ずべき蛮行とはいえ、このようにして、容疑者をさらしものにして攻撃し続ける状態は恐ろしいことであると思えてくる。

だがこうした風潮を嘆いても始まらない。ネット社会とは、こうしたことが普通に行われるものなのだということをしっかり認識しなければならない。そして介護事業者のリスクマネジメントも、そうした風潮をも含めて考えていかねばならない。

二つの事件を考え併せると、職員が日常的にタメ口で人生の先輩に接している介護事業者のリスクマネジメントは、なっていないことを改めて認識しなければならない。顧客にタメ口対応しかできないことがネット社会で糾弾されたときに、その事業者の経営者や管理職・リーダー職などは、糾弾される対象になることを自覚して改革に努めていかねばならない。

そういう意味で介護事業経営者や管理職の皆さんに、改めて考えてもらいたいことがある。

従業員がマナーのない顧客対応を行っていることが即ち不適切とされるという問題意識を持っているだろうか。

あなたの所属する介護事業者は、世間から誤解を受けるような対応が全くないと自信を持って言えるだろうか。

それとともに、自分に管理責任のある場の従業員が、利用者に不適切対応をしたことによって、自分が報道関係者の前で、「お詫び」の会見を開き、頭を下げる姿を想像してみてほしい。そうなるとしたら、あなたが会見場で糾弾されながら質問に答える姿を見て、あなたの家族が泣くことになるかもしれないのだ。

そんなことが決してないと言い切れる職場を今のうちに創っておく必要があるということだ。

そのためにはまずあなた自身が、顧客である介護サービス利用者に対し、マナーのある接し方を行うことができる人になる必要がある。
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