僕は長年に渡って、ある介護の方法論を批判・否定してきた。

その方法論とは、個別のアセスメントのない状態で、利用者全員に1.500ml/日という大量の強制水分摂取を行わせて、二人がかり・三人がかりで利用者を引きずるように歩行させ、日中長い時間トイレやポータブルトイレに座らせて排せつを強いる介護である。

便器に座らせて何が悪いという人がいるが、体幹機能障害・片麻痺がある人で、体重移動が難しい人が便器に座らされて10分でも放置されたときの苦しさ、お尻の痛みを考えろと言いたい。おむつをしないケアのために、それは許されるとでもいうのだろうか。

しかもその結果、おむつ外しができたと言っても、それは日中のおむつが紙パットに変わっただけで、そこへの排尿は許されており、夜はおむつをつけて、定時交換しか行っていない状態でも、「おむつゼロ」であると宣言できるケアの方法論に何の意味があるのか・・・。

その方法の元になっていたのが、「竹内理論」と呼ばれる考え方で、その方法を啓もうしていたのが全国老施協主催の、「介護力向上講習」であったことは、このブログで再三指摘しているところだ。

その批判はSNSでも投稿していたところだが、下記のコメントは、僕のフェイスブックの2013年当時の投稿に対して、老施協会員と名乗る方がコメントとしているものだ。
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竹内理論の解釈について、強い偏りをもって捉え、水分の強制摂取で人権侵害を疑われる事例が一部に見られ是正されないようなことがあったとしても、それは一部のカルト化した受講施設の問題であり、竹内理論事態を否定する根拠にはならないのではないでしょうか。
実際に認知機能の改善や、おむつから脱却した利用者もいるのですから、そこは否定できないのではないですか。
本当に間違った理論だったら、続けられるわけがないので数年後にその答えは出るでしょう。

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僕のFBは、友達としてつながっている人以外でも閲覧・コメントできる投稿設定がほとんどなので(※FBは投稿ごとに設定が変えられます)、このコメント主も僕と知り合いというわけではない。

ただしFBなので匿名ではなく実名投稿であり、この投稿者が全国老施協の会員の方と名乗っていることにも嘘はないと思う。

この意見が書き込まれた当時は、竹内理論を強く支持していた中村博彦元参院議員(実質的には全国老施協のドンと言っても良い存在だった)がまだご存命中のことで、全国老施協と竹内氏の関係も良好であったから、このコメントも竹内理論を支持する立場から書かれたものであろうと推察する。

そして竹内理論の実践は月日を経てもなくならずに続けられ、そのことが僕の批判が間違ったものであるという証拠になるという意味を込めて書かれたものだろうと思う。

しかし今現在消えてなくなっているのは竹内理論の実践の方である。勿論それは完全消滅しているわけではなく、一部の施設では細々と続けられているのだろうと思うが、全国規模で実践施設の数が増えていった頃のような状況とは完全に異なった状況が生まれている。

このコメントが書かれて2年もしないうちに、全国老施協の、「介護力向上講習」は全国レベルで実施されなくなっている。

その後も一部地域では県レベルの同講習会を実施されていたが、その数もどんどん減り、今もなおそれを行っている県が果たしてあるのだろうか・・・。どちらにしても竹内理論に基づく強制水分補給と非人間的歩行訓練・排せつ支援を啓もうする講習と、その方法を実践する施設は減少の一途を辿っている。

そして竹内理論の提唱者と全国老施協は、今では完全に袂を分かつ状況になっており、それを喧嘩別れとみる向きもある。

時の流れが正しさを証明し、消し去ったものがあるとすれば、それは竹内理論による介護実践そのものではなかったのか・・・。しかしそのような乱暴な介護実践が行われなくなったとしても、それまでの過程で乱暴な水分の強制摂取で泣かされていた人や、長い時間便器に座らされて放置されていた人の慟哭は決して消し去ることができる問題ではない。

数多く指摘されてきた問題のある介護方法や、このブログのコメントにも書かれている人権侵害ともいうべき対応についても、今現在はしなくなっただけで、過去には行っていたという事実を消すことは出来ない。

なのにそのことについて責任をとる人は誰もいない。おむつゼロを高らかに宣言し、竹内理論を持ち上げていた施設長連中のうち、その理論実践をやめたことの説明責任を果たしている人がどこかにいるだろうか・・・。

仮に強制大量水分補給によって、心臓ダメージなどを負った人が亡くなったり、病状が重篤化する結果をもたらしたとしても、それは老化であるとされるだけで、過水による病状悪化を証明できることはない。

証拠がないから、なかったことにできるのか。そうであれば介護とはなんと怖いものだろう・・・。

間違った方法であると気が付いた後、間違った方法を行っていたことの謝罪もせずに、貝のように口を閉ざしている人が、介護という職業の経営者や管理職として存在し続けている図々しさはどこから来るものなのか・・・。

偏った価値観に寄り掛かって、方法そのものを目的化して、利用者の意志や希望を無視したのが竹内理論である。しかし当時はそのことを、関係者(というより犯人と書いた方がよいか・・・。)の多くが科学的介護と呼んでいた。

科学的根拠のない、信仰に近い方法がなぜそう呼ばれていたのか・・・。そう呼んでいて、その方法を実践している人たちが、同じ口と同じ手で、現在国が唱える科学的介護とは何かということを語り、実践しようとしている。しかし介護報酬改定で取り入れられている科学的介護の考え方は、竹内理論とは全く異なるもので、むしろ竹内理論を否定した考え方だ。(参照:全否定されたおむつゼロ運動と罪悪の歴史

恥も外聞もないとは、そのことを指すのではないだろうか。

自分の偏った価値観に寄り掛かって、利用者の希望やニーズをアセスメントすることなく、利用者の表情にも気を使わない方法論に固執した方法論で、いかに多くの人の不幸を生んできたのか、そのことを教訓として、二度と人権無視の方法論が繰り返されることがないように、その事実を書き残し、後世に伝えることが僕の仕事でもある。

決してなかったことにしてはならない事実を、記録として残しておく必要があると思うからだ。
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