大企業の介護職給与改善の波はどう影響するのかより続く)
社会福祉法人は、給与を含めた職員待遇面での水準については介護業界のトップを走ってきた。

それは措置費時代の社会福祉法人の給与体系が、「国家公務員に準拠する」とされていたためである。準拠というのは一段下がるという意味ではなく、同じくするという意味である。

よって僕が特養に就職した当時は、給料表も国家公務員と同様のものを使っており、賞与も各種手当も同じ水準であった。人事院勧告でベースアップが行われると、その年の4月にさかのぼって昇給とされ、それまでの間の差額まで支給されていたのである。

さらに経験年数の長い職員を雇用している法人には、人件費比率が高くなることで赤字経営にならないように、「民間給与改善費」というものも支給され、経営困難とならない手当までされていたのである。当然退職金制度も公務員並みに整っていた。

このように社福は、非課税という優遇措置に護られてきただけではなく、手厚い措置費にも護られてきたわけで、親方日の丸的な立場でいられたわけである。

だから特養のトップは、経営能力がなくとも運営するだけで切り盛りできたために、役所の天下りが、ただ机に座っているだけで施設長であるとふんぞり返っていることもできたのである。

介護保険制度以後は、「国家公務員に準拠」する規定はなくなったが、それでも措置費時代の給与水準を維持してる社会福祉法人が多いために、社福全体の平均給与は現在でも高水準を保っている。

しかし相変わらず経営をせずに、運営だけで乗り切ろうとする施設長も多く、施設管理中心で法人経営が不在な社会福祉法人が多いことの批判が続いた。

それらの法人は事業規模も零細で、特養を1施設だけ運営し、そこにおざなりのように通所介護事業等を併設するだけの運営スタイルから脱却できず、再生産・拡大再生費用は補助金と寄付が前提で、画一的サービスと同族的経営に終始する法人が少なくなかった。

非課税で守られているにもかかわらず、社会福祉法人減免などの公益事業も行っていない法人も見られた。

社福の経営面では、2016年時点で赤字の特養が全体の32.8%に上り、それらの施設は繰越金を取り崩して運営しているという放漫経営状態も目立っている一方で、多額な内部留保も問題とされた。

そのため2016年の改正社会福祉法の施行では、公益的な取り組みを実施する責務が法律明記され、2017年には経営組織のガバナンス強化と、社会福祉法人の財務規律の強化の取り組みが法律に基づいて実施されるようになった。

そのような中で、社会福祉法人としての経営戦略の練り直しを図らねばならない状況が生じ、給与規定の見直しを図ってきた法人も多いだろう。それらの法人は、SOMPOケアの給与改善後の待遇と比較して、それに負けない待遇が維持できているだろうか。

仮に同程度の待遇であるとしても、SOMPOケアはSOMPOホールディングスという大企業を母体としていることを考えなければならない。特に介護人材確保という部分では、SOMPOケアは広く人材を他業種からも含めて、全国至る所から集めることができるのである。

社福ではない企業が本腰を入れて、社福並みの職員待遇を実現した先には、大企業というブランドと、全国展開するスケールメリットを生かして、社福に対抗しうる様々なアイテムを従業員に提供し得るのだ。

そのことを鑑みた新しい介護事業経営戦略が社会福祉法人には必要になるのである。

社福の経営者は、それらの企業と勝負できる戦略を持っているのだろうか。持たないとしたら数年以内に人材流出が顕著となり、人材確保が困難で事業経営に支障をきたす状態が現実のものとなる。

だからこそ社会福祉法人の事業規模の多角化・拡大化は差し迫った課題であると言える。そうして経営リスクの分散化を図る必要があるのだ。法人規模零細なままで経営が続けられる時代ではなくなっているのであって、一法人一事業は過去の遺物と考えねばならない。

場合によっては複数の社会福祉法人合併という選択肢も視野に入れなければならない。

どちらにしても、現在のように同じ市町村内の社会福祉法人の数が、地域包括支援センターの数より多く存在する状態は、経営効率が悪いとして否定される方向に向かうことは必然の流れだ。

社会福祉法人の経営者はそのことを理解できているだろうか?

そのために、昨年改正された社会福祉法により法制化された社会福祉連携推進法人が、いよいよ2022年4月から運用が開始されるのである。

このことについては明日改めて論ずることとしたい。(社会福祉連携推進法人の法制化についてへ続く)
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