SOMPOホールディングスといえば、かつては損害保険会社大手というイメージが強かったが、介護事業にも参入して業績を伸ばしていることは、今更言うまでもない。

しかし介護事業に参入した時期は、そう早い時期ではなく後発組と言っても良いと思う。しかしその勢いは目を見張るものがあり、Sアミーユ川崎幸町の殺人事件やアミーユ全体の虐待事件を受けて介護事業が立ち行かなくなった旧メッセージの介護事業を買い取った他、ワタミの介護も買い取るなど急激に事業を拡大してきた。

そのSOMPOホールディングスが、傘下にある介護事業会社SOMPOケアの中核職員約1.000人を対象として、2022年度に年収ベースで100万円程度引き上げる方針を固めたと報道されたのは、先月末のことである。これによってリーダー級の介護職員の給与は看護師と同水準である年収約491万8000円まで引き上げられることになる。

原資となるのは居住系サービスの展開など事業拡大で得た収益で、年間で約15億円を新たに投じていくとのことだ。

同社は2019年度にも一定のスキルを持つ介護職員の給与を最大で年80万円程度引き上げた経緯があり、来年度からはそれからさらに上乗せして介護職員の待遇改善が図られることになるのだろう。

同ホールディングスでは過去に、国内損保事業の従業員を介護の子会社などへ配置転換を進めてるので、配置転換で不利益を生じさせないようにするための対策という意味合いも今回の方針には含まれているのかもしれないが、収益を従業員に還元する一連の給与改善は、同社社員だけではなく、介護業界全体の従業員から拍手が送られてしかるべきである。

こうした大企業の方針が、介護業界全体での職員待遇改善の礎になるとしたら、それは大いに讃えられるべきことであると思うからだ。

そういう意味でSOMPOホールディングス経営陣には心より敬意を表したい。

しかしこうした大企業の経営方針は、経営体力の弱い小規模事業者にとっては脅威でもある。同じように給与改善ができる小規模事業者は決して多くはなく、そこから人材流出が起こる可能性があるからだ。

単純に考えても同じ介護という職業に就くなら、給料がよくて福利厚生も充実しているところで働きたいと思うのは当然のことである。

小規模対応でアットホームな雰囲気で利用者対応したいと考える人にとっても、事業規模が大きくとも、そこで展開するサービスの種別の中には、小規模対応のサービスがあり、そこを選んで就業できるとなれば、その点での問題もなくなる。

SOMPOホールディングスは、居宅サービス部門を中心に拡大路線を続けており、その流れは団塊の世代がすべて75歳となる2022年を前に、通所サービスや訪問サービス利用者の増加という潮流を受けてさらに加速されることが予測される。

その中で人材を集めているのだから、給与改善をしない介護事業者から同社への人材の流出が起きることは必然だろう。

そういう意味で他社は今、SOMPOホールディングスとの人材確保競争が激化すると考えなければならない。そこで勝ち残っていくために何が必要だろう。

小規模事業者の中にはいまだに給料表もなく、昇級規定も存在せず、給与アップは経営者の胸先三寸で決定されて、定期昇給があるかないかさえわからないところも少なくない。しかしそうしたところは、人材にそっぽを向かれて事業が立ち行かなくなることは目に見えている。だからこそ早急なる経営方針の大転換が必要だろう。

事業規模の拡大を図って、提供できるサービス種別も多角化していく必要があることは、このブログで再三指摘してきたところだ。そうしない介護事業者は消えてなくならざるを得ない。

そうであればその影響は、小規模事業者が大企業に吸収合併されていく流れもがきてくるという形で見えてくるかもしれない。小規模事業者同士の経営統合も視野に入れる必要もある。

どちらにしても定期昇給もままならない事業規模(例えば地域密着型通所介護のみの経営スタイル)の事業経営は成り立たなくなるだろう。

そうした危機意識を持たず、職員待遇も旧態依然の状態を放置する介護事業者に勤めている方は、そうしたところをできるだけ早く見放して、自分のスキルアップとステージアップのための積極的な転職を考えることはあって当然だ。

特に能力のある人は、引く手あまたなのだから、きちんと情報を集めて、自分のスキルに見合った転職先を探して罰は当たらないだろう。

SOMPOホールディングスが示した、平均給与モデルは、その際の参考になるのではないだろうか。

そんな新たな流れが生まれる中で、給与を含めた職員待遇面では介護業界の先頭を走ってきた社会福祉法人は、その影響をどんなふうに受けるだろうか。

これから何が起きるだろうか。そのことは明日詳しく論ずることにしたい。(社福は経営規模拡充の波に乗ることができるか呑み込まれるのかに続く)
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