(改定報酬体系・加算要件は職員全員に伝えるべきですより続く)
最初にお知らせです。東京の感染拡大が予測以上です。このため10/5(火)に予定して会場も抑えていた出版記念シンポジウムを行うことは難しい状態と判断しました。現在10月のシンポジウムを延期して、年内に実施できないか検討中です。予定に組み入れていた方には申し訳ありませんが、こうした事情ですので、ご容赦くださいますようお願い申し上げます。
なお本の出版は予定通り、9月中に発売予定です。
お知らせは以上です。ということで本題に移ります。
介護保険制度の理念の一つが、「自立支援」であることは今更言うまでもない。
しかし介護保険法総則においてこの法律の目的は、「国民の保健医療の向上及福祉の増進」であるとされているのだから、自立支援もその目的を達成するための理念の一つであると言える。
福祉とは、「しあわせ」や「ゆたかさ」を表す言葉なのだから、国民の幸せが増して進まない自立支援は求められていないということになり、介護を要する人に対して、「自立して暮らさないと悲惨な暮らしになってもしょうがないよ」と脅しながら、自己責任を強いることを意味しているわけではないのである。
そのため介護保険制度には、「自立支援」と並んでもう一つの理念が存在する。それが「生活の質(QOL)の向上」である。
しかし過去の制度改正や報酬改定では、「自立支援」を重視した方策に偏った議論が見られ、そのために「生活の質の向上」はおざなりに扱われる感も否めなかった。
しかし今年度の報酬改定においては、「暮らしの質」に着目した、新たな視点が数多く示唆されている。
例えば、排せつについて多床室のポータブルトイレ利用を戒める指摘が行われている。
特定施設と介護保険施設の、「サービス提供強化加算」の新要件として以下の考え方が示された。
・ケアに当たり、居室の定員が2以上である場合、原則としてポータブルトイレを使用しない方針を立てて取組を行っていること
介護施設の「自立支援促進加算」でも次のような考え方が示されている。
・排せつは、入所者ごとの排せつリズムを考慮しつつ、プライバシーに配慮したトイレを使用することとし、特に多床室においては、ポータブルトイレの使用を前提とした支援計画を策定してはならない。
このことに関連してQ&Aでは、多床室でポータブルトイレを使用してよい特例を、「在宅復帰の際にポータブルトイレを使用するため、可能な限り多床室以外での訓練を実施した上で、本人や家族等も同意の上で、やむを得ず、プライバシー等にも十分に配慮して一時的にポータブルトイレを使用した訓練を実施する場合」としており、一時的な使用にとどめ、恒常的に多床室でポータブルトイレ利用することを認めていないのである。
そのうえで、「原則として排せつは、入所者ごとの排せつリズムを考慮しつつ、プライバシーに配慮したトイレを使用すること」とされているのである。
オムツをはずしさえすればよくて、おむつ交換しなくて済むなら、それ以外の排泄方法の質は問われなかった従前の考え方から、大きく一歩を踏み出した考え方だと言えよう。
僕は以前グループホームの外部評価を行っていたが、GHでもポータブルトイレの不適切な使い方を何度か指摘したことがある。例えば(家具調ではない)便器そのもののポータブルトイレが無造作にホールに置かれ、便器が丸見えの状態で利用者が食事している姿を見て、食事場所から見えるところにポータブルトイレを置かないように指摘したこともある。
ケアとは何かという本質を忘れて、排泄動作だけを支援すればよいと考える先には、利用者が便器を見ながら食事をさせられていても、何も問題を感じないという感覚麻痺が生まれ、それがやがて様々な場面で、プライバシーと羞恥心に配慮のない不適切ケアを生み出すのではないか。
他人が自分のベッドのすぐ横で、日常的に排泄する姿を見せられるというのは、暮らしの質としては最低である。いくらトイレスクリーンで、ポータブルトイレを隠しても、音やにおい、排せつの気配までは消せない。そういう意味で、多床室のポータブルトイレ使用の戒めは非常に良い示唆だと思う。
排泄自立とは、他人の目の前で、ポータブルトイレに座って排せつすることではないことを、今回の新規程は示しているように思える、このことは全職員に伝えておかねばならない示唆であろう。
今回の改定では、排せつに関する示唆はさらにあるし、日中の過ごし方や、食事介助の方法に関する新たな視点も示されている。字数が長くなったので、そのことは明日の更新記事で改めて示すことにしよう。(暮らしの質に関する新たな示唆に続く)
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