新型コロナウイルスの感染拡大がきっかけとなり、介護現場でもICTの活用が大きく進んだ。その状態は、「時代が10年以上先に進んだ」と表現されることもある。

ICT活用の具体的状況としては、「オンラインミーティングツールによる会議」や「介護施設等でのオンラインによる利用者と家族の面会」・「オンライン研修の実施」などが挙げられる。

このように様々な場面でICTが活用されることによって、選択肢が広がることは良いことだ。

介護施設等の面会がオンラインしか許されないというのでは困るが、オンラインも利用できることで、感染症に関係なく遠方の家族や親族との日常的なコミュニケーションが取れるようになるということは大いなる進化であり、利便性が向上したと言ってよいだろう。

会議でのICT活用は、居宅介護支援のサービス担当者会議の例を見るまでもなく、所属の違う多職種が話し合う方法としてはとても優れている。会議が開催される場所までの移動などに業務時間が削られることもなく、日程調整も格段に容易になった。どこにいても会議に参加できるメリットは計り知れない。

ただしそうしたツールも、使い方によっては効果が挙がらないだけではなく、アナログ対応の方がよかったということになりかねない。

オンライン講演視聴などはその典型だ。

講演会場に行かなくても、講演を聴くことができるオンライン講演は便利ではあるが、集中して講演を受講できるかということについていえば疑問符が付く。

リアルタイム配信のオンライン講演ならまだしも、録画視聴となると、見逃しても聴き逃しても、あとから見直せばよいという意識が働いて、集中力が拡散してしまうことも少なくない。しかし一回視聴した講演録画を、聴き逃した部分があるからと言って、再度視聴しなおす人はほとんどいない。

ある程度の時間、人の話を集中して聴くことが出来るためには、話の流れに乗ることが必要となる。そのため、長時間講演の一部分だけを聴きなおすためには、流れに乗らなくても話を聴くための相当な動機づけが必要になる。しかし多くの人はそのような動機づけやエネルギーを持つことはできないのである。

オンライン講演を視聴する場所も問題である。

どこでも視聴できる便利さと引き換えに、講演を受講する目的だけのために設置される講演会場とは異なる場所でオンライン視聴する際には、業務呼び出しに応じながら、来客対応に応じながらなどのように、「ながら視聴」となることも多い。それで講演内容が頭に入るかといえばはなはだ疑問である。

そもそも講演を集中して聴くことが出来る要素の中には、講演会場の雰囲気というものが含まれると思う。講師と受講者の間に双方向の会話がなくとも感じ取れる意思疎通感覚、会場の受講者同士の一体感といったものは、オンラインではなかなか得ることが難しく、会場講演とは同じ空気感にならない。

それにも増して、会場講演とオンライン講演で決定的に違うものは、後者では講演を聴いて終わりになってしまうことである。

会場講演であれば、講演前後の偶然及び必然の機会の中、志を同じくする人とコミュニケーションを交わす機会が出来たりして、あらたなつながりを創ることができることがしばしばある。オンラインでは同じ画面を共有していても、こうした人間関係が生まれることはほとんどない。

録画講演はさらに視聴効果が薄くなるといえる。

職場内研修として、録画講演を職員全員が時間を見つけて視聴できるとは言っても、多くの職員は仕事中に録画を観ることは出来ない。そのためプライベートの時間を削って視聴することになるが、そこで集中して何かを身につけることが出来るかといえば、それはなかなか難しい。

多くの場合、どこか適当な時間を削って視聴義務を果たそうとするだけで、録画視聴に集中できないことが多く、あまり内容は頭に入らないのが関の山だ。

だから「講演を録画しているので、空き時間に観ておくように」とする職員研修・職場内研修はあまり効果が高まらないことが多いような気がしている。

このあたりのことは職場内研修の在り方を考えるうえで、是非考慮入れてほしいことである。
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