福祉医療機構が7/16付で、「社会福祉法人経営動向調査の概要」を公表した。

それによると昨年度、収益が前年度比で減少した特養は18.9%であった。それに対して、「横ばい」が51.4%、「増加」が29.3%となっている。

昨年度(2021年度)は、2018年に改定された介護報酬3年目にあたり、その3年の中では最も収益が減ることが想定される年度だ。定員が定まっている特養にとって、3年間法定給付費が変わらないのだから、職員の定着率が高ければ高いほど昇給分による人件費高騰が収益に影響してくるので、改定3年目は改訂1年目と2年目と比較して、一番収支差率が低くなって当然だからである。

そうであるにもかかわらず8割以上の特養の収益が横ばいかアップというこの結果は、感染対策補助金や介護報酬の感染特例算定が大きな影響を与えていると考えられる。

特にコロナ禍で退所者のベッドを埋めるための新規利用受け入れができない期間や、ショートステイの受け入れができない期間があったこと及び感染対策費が大幅に増えたことを考えると、前年比減益の特養が2割未満でしかないという状況は、国の感染対策が効果的に機能していると言ってよいと思う。

支出面では、コロナ禍の影響で通常支出で減っているものがあると思え、それも収益確保に多少は影響しているかもしれない。

例えば教養娯楽費の支出が減っている特養が多いのではないだろうか。密を避けるために集団活動が制限されたため、イベントやレクリエーションができなかったことによって、そこに掛けていた経費がそっくりなくなったり、外出制限の影響で、利用者を外に連れ出して行うレクリエーションがなくなり、その面の経費もゼロとなっているかもしれない。

外部研修が軒並み中止になって、職員の派遣費用や参加費支出がなくなったり、事業所内研修も開催できず、講師料支出が無くなったりして、研修費が大幅に余った事業者も多いだろう。しかし職員のスキルアップは、事業経営を左右する問題につながるので、今年度以降の研修の充実のために、それらの費用支出は復活させる必要がある。

このように特養に関して言えば、コロナ禍が収益面では決してマイナス要因にはなっていないと言えよう。この傾向は施設サービス全般に言えることで、通所サービスのように収入が一切途絶えた時期のあるサービスとは異なり、ある意味恵まれていたと言えるかもしれない。

しかも今年度はプラス改定の影響で、丁寧に加算を拾っていくことで、収入アップが期待できる年である。

そうであるからこそ、感染対策に万全を期した体制作りに投資したいところだ。コロナ禍が終息しても、今後は数年ごとに何らかの感染症対策を必要とする可能性が高いからだ。

例えば面会制限については、国も緩和するようにたびたび通知を出しているが、緩和対策のための感染予防策に少しお金をかけるという考え方はあって当然だ。面会のための専用スペースの整備コストはかかって当然だ。

そのほか面会専用スペースの空間除菌設備も導入したい。次亜塩素酸水による空間除菌は、体に害があるというフェイクニュースが流されているが、「次亜塩素酸水溶液普及促進会議」が昨年記者会見を行い、次亜塩素酸水による空間噴霧は毒性なしとして、『政府は国民の命と健康を守るため医療機関、高齢者施設などを始めとする必要な個所への次亜塩素酸水の配布と備蓄を進めていただきたい』と呼びかけている。その後、国は空間除菌が健康被害を引き起こす恐れがあると公言しなくなった。

そしてたくさんの医療施設や介護事業者でクラスター感染を防ぐ観点から空間除菌が行われるようになっているのだ。例えば、「使用後95.5%の医師が継続使用を希望する空間除菌法」で紹介している安全で効果の高い除菌水は、クラスター感染を防ぐ決め手となり得るのである。

ところで面会制限に関して言えば、入所者や職員全員がコロナワクチンの2回目の接種を終えた施設については、もう全面的な面会制限はあってはならないと思う。それは人権侵害でしかない。

ただし社会全体でみると緊急事態が続いている地域があるので、感染対策を施したうえでの面会制限緩和が求められており、国は次のような対策を例示している。

・ 面会時間は必要最小限とし、1日あたりの回数を制限すること

・寝たきりや看取り期以外のケースでは居室を避け、換気可能な別室で行うこと(※逆に言えば、寝たきりや看取り期の方は、居室での面会でも構わないとしている点に注目してほしい)

・来訪者が施設内のトイレを極力使わないようにすること


このほか熱があったら来訪を断る(過去2週間以内に発熱していないこと・同居家族にも症状が出ていないこと。)、名前や連絡先を記録する、マスク・手指消毒を求める、大声での会話は控えてもらう、といった基本の徹底も呼びかけている。

介護施設や居住系施設の利用者の方々が、一日も早く家族の手を握って話ができる機会をつくろうという体制づくりに興味がない人は、対人援助の職業から身を引いた方が良いと思う。
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