厚生労働省の公式サイトに、「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」という分析結果が7月9日付で掲載されている。
それによると2025年度時点で介護職員の必要数は約243万人、2040年度では約280万人であるとし、2019年度時点ではその数が約211万人であることから、今後4年の間に約32万人、2040年度までに約69万人を確保しなければならないとしている。
しかし直近3年間の増員数は年平均3.7万人にとどまっており、仮にこのままのペースでいくと、2025年度の時点でおよそ10万人以上の不足が生じることになる。
だが介護職員を増員する手立てはほとんどないと言ってよい。
例えば、「特定技能」により日本で介護の仕事に就労する外国人の数が、今年3月時点で去年の30倍の1705人となっており、貴重な戦力となってはいるが、介護の特定技能は1号のみしか認められていない。
その意味は在留期間は5年限定されているということだ。繰り返し延長更新できる2号とは異なるので、特定技能で介護事業者に就業している人たちは就業後5年後以降も働き続けるためには、介護福祉士の資格を取るしかない。それはあまりに高いハードルであり、その人たちがいくら増えても、長期的な人材確保戦略を練るうえで、数字としてカウントできないのである。
そのため国は、介護福祉士の国家資格を持っている人の中で、介護・福祉など以外の分野で働いている7.0%(4万589人)の人々と、特に仕事をしていない13.8%(8万154人)の、「潜在介護福祉士」が介護事業に就業できるような支援策を講じようとしている。
例えば、引っ越しや研修、移動手段の確保などに充てるお金として最大40万円を貸し付け、介護職員として2年間従事した人の返済を全額免除する、「再就職準備金」の支給もその一つである。
しかし潜在介護福祉士と呼ばれる人のうち、「ぜひ働きたい」は数%程度に、「条件があえば働きたい」は30%強にとどまっているという数字もある。
介護福祉士の資格を持ちながら、介護の仕事に従事していない人は、それなりの理由で離職しており、「今後介護事業者で働く意思がある」と答える人も、そのハードルはかなり高く設定しており、ほとんどその意思がない人も多いのだ。
特に年齢が高くなればなるほど、夜勤を伴う介護業務はほとんどする気がない人が多い。また「すぐ働きたい」と回答している介護福祉士の中には、資格は持っているが能力が低いため、まともな仕事ができずに、人手不足の介護事業者も雇うことをためらうというスキルの人が含まれているのが実態だ。
国家試験を経ない養成校卒業生の中には、そういう有資格者も少なくないのだ。まさに、「失火右派仕事をしてくれない」ということの証明である。
どちらにしても潜在介護福祉士を掘り起こすこ徒自体が無理な話で、そのような対策で介護人材不足対策の一翼を担うことができるなんてことはないのである。
そのほかの国の介護人材対策も的外れだ。
今年度から他業種で働いていた者であって、介護職員初任者研修等を修了した者に対して、介護・障害福祉分野における介護職として就職する際に、就職支援金(20 万円)の貸付を行い、2年間、介護・障害福祉分野における介護職員として継続して従事した場合は全額返済免除となる事業も実施される。(参照:雇用と福祉の連携による離職者への就職支援の推進について)
支給要件である初任者研修は、就職後に受講しても良いことになっていることも国は売りにしたいようだ。しかし20万円というお金を一時的に支給されて、返済免除になるからと言って、そのことを動機づけにして介護の仕事をしようとする人がどれだけいるかは疑問だ。転職の動機づけにするには金額の桁が一桁違うのではないかと思う。
国の施策で介護職員の数が充足することはないことは、この支援金を見てもわかろうというものである。
しかも介護保険制度がスタートした2.000年から既に20年以上経ち、今後は制度開始直後に他産業から介護職に転職した人で65歳に達する人が増えることを考えると、今以上に退職者数が増えてくる。よって介護人材の必要者数を確保することは絶望的である。
だからこそ介護事業を継続経営していくためには、国の施策に頼らずに独自で職員確保する対策を講じていかねばならないということになる。募集に応募する人を増やすだけではなく、採用した職員が定着し、成長する職場づくりが求められることは、今更云うまでもない。
その具体策はこのブログで何度も書いてきたので、カテゴリー介護人材確保や人材育成を参照してもらいたい。
それとともに介護事業経営者や管理職の方々には、自分が人を引き付ける魅力を身に着けてもらいたいと思う。
自分がどんな事業者で働きたいかを、被雇用者の身になって考えてほしい。
仕事には厳しさが必要だけれども、人を気遣える優しさがない人がトップやリーダーの位置にある会社に、自分の大切な時間や将来を預けたいとは思わないのである。
逆に言えば介護人材不足が解決しないという意味は、今後ますます介護を職業とする人は職場を選ぶことができるのだから、自分の将来を託せない場所に我慢して勤め続ける必要はないということだ。
被雇用者が自分の能力に応じて、きちんと職場選びをすることで、良い経営者が労働者にとっても受け入れられる良い経営を行い、そこに良い人材が集まるという流れができる。そこに利用者も集まり、品質の高い介護サービスを利用できるというのが理想である。
どちらにしても介護人材不足が解消できない社会構造は、介護を職業としているスキルの高い人にとっては、自分の能力と希望に応じた職場選びがより可能になる社会であることも意識したうえで、賢い選択をしていただきたいと思う。
その一助に下記のサイトを推薦している。ここは相談から紹介まですべて無料で、しかも専任のアドバイザーが求職者の希望に沿って、随時相談にも応じてくれて、情報も豊富である。お金は一切かからないので、まずは登録から行っていただきたい。
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