年度末の3/31に、居宅サービス計画書標準様式及び記載要領の変更通知が突然発出され、居宅サービス計画書第1表の項目が、「利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果」に変更されたことは、何度かこのブログで解説している。(参照:計画書標準様式の変更内容とその目的 ・ 生活に対する意向を踏まえた課題分析)
その意味は、この項目に記載すべき事柄は、単に利用者や家族のデマンドであってはならないことし、聴きとった意向をニーズに置き換える必要があることを示したものだ。
それは居宅サービス計画書の目的は、あくまで自立支援であることを忘れないように、「御用聞きケアマネになるな」と介護支援専門員に釘を刺したという意味であろう。
逆に言えばこの項目に書かれた内容が、利用者もしくは家族の意向そのものであったとしても、それを実現することが自立支援に結び付くという理論武装ができているのなら特段問題はないということになる。
よって今までの計画書を全部見直して、この項目の文章を修正しなければならないということでもない。
そしてアセスメントを実際に行っていない行政指導担当者が、居宅サービス計画書について、「その意向は、自立支援につながらない単なるデマンドでしょう。」などと指導できる筋合いのものでもないのである。アセスメントをきちんと行って、必要なサービスを計画書に組み入れていると自信を持っている介護支援専門員は、変な行政指導が行われたら毅然として反論してよいのである。
ただし明らかに利用者や家族におもねって、不適切なサービス内容となっている計画もあるので、そうしないように改めて注意をするという気持ちは忘れてはならない。
ではどのような計画内容は不適切と言えるのだろうか。そのことについて報酬改定Q&Aにヒントが隠されているように思う。
Q&A Vol10の問5は介護施設に新設された、「自立支援促進加算」についての疑義解釈であるが、排せつの自立支援について次のように示されている。
「個々の入所者の希望の確認にあたっては、改善の可能性等を詳細に説明する必要があり、例えば、入所者がおむつを使用している状態に慣れて、改善の可能性があるにも関わらず、おむつの使用継続を希望しているような場合は、本加算で求める入所者や家族の希望とはいえないことに留意が必要である。」
このように改善可能性を否定して、安易に現状維持を望むだけの意向を計画書に載せるだけでは駄目なことを示唆しているように思う。
こうした考え方は、居宅サービス計画の作成にも応用したほうが良いと思う。
今回の計画書様式変更は、居宅サービス計画書だけであり、施設サービス計画書は変更されていないが、自立支援に結び付く計画を作成するという考え方は施設サービスも同様であり、様式は変わらなくとも施設サービス計画書の第1表の「利用者及び家族の生活に対する意向」にも、利用者ニーズと言える意向を書くようにすべきだろう。
その際、Q&A Vol10の「自立支援促進加算」の疑義解釈は大いに参考になると思う。例えば問5のほかには以下のような考え方が示されている。
・治療のための安静保持が必要であることやターミナルケア等を行っていることなど医学的な理由等により、やむを得ずベッド離床や座位保持を行うべきではない場合を除き、原則として、全ての入所者がベッド離床や座位保持を行っていること
・経管栄養といった医学的な理由等により、ベッド離床を行うべきではない場合を除き、ベッド上で食事をとる入所者がいないようすること
・多床室でポータブルトイレを使用している利用者がいないこと
・夜間、定時に一斉に巡回してすべての入所者のおむつ交換を一律に実施するような対応が行われていないこと
・入浴時間を本人の希望を踏まえた時間に設定することや、本人の希望に応じて、流れ作業のような集団ケアとしないため、例えば、マンツーマン入浴ケアのように、同一の職員が居室から浴室までの利用者の移動や、脱衣、洗身、着衣等の一連の行為に携わること
・起床後着替えを行い、利用者や職員、家族や来訪者とコミュニケーションをとること
道内千歳市にある某老健施設では、利用者にとって寝るときに寝巻に着替え、朝起きたときに日中着に着かえることは負担であり、そうならないことを希望しているという理由で、日中と夜間にずっと着ていられるスポーツウエアを着させて、毎日行うべき着替えの支援を怠っていたが、そういう屁理屈での計画作成はまかりならんと改めて警告されたわけである。
それは極めてまっとうな指摘と言えるが、同時に課題分析が利用者の希望をつぶすものであってはならないという一面もあり、そのことは明日更新する記事で改めて論じてみたい。(※課題分析が希望をつぶすものであってはならない、に続く)
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