6月11日に、福島県郡山市の通所介護事業所管理者が逮捕された、「80代女性の遺体遺棄事件」は、なんとも不可思議な事件である。
様々なメディアではこの事件を、「郡山市の介護施設死体遺棄事件」と報道しているが、事件の舞台となったのは介護施設ではなく、郡山市内の地域密着型通所介護事業所である。
そして死体が遺棄されていたの、通所介護事業所のすぐ隣のアパートで、職員休憩所という名目で通所介護事業所が借り上げていたものだという。
この事件が、「介護施設死体遺棄事件」と称されているのは、報道する記者の浅薄さに起因していることに加え、被害者及びその関係者が、被害者は施設入所しているつもりであったことによるものと推察する。そこがこの事件の根にもなっている。(※実際に被害者は通所介護事業所に隣接するアパートで一人暮らしをさせられていたと思われる。)
アパートの所有者によると、通所介護事業所が開所したばかりの2017年秋ごろ、通所介護事業所関係者から「従業員の休憩用に」と言われて1部屋を貸したが、実際にどのような使い方をしているかは把握していなかったという。
事件に関連する通所介護事業所は職員が9人の地域密着型通所介護事業所で、この事件の容疑者として逮捕されたのは、その通所介護事業所の管理者であっ石田兼也容疑者(39歳)である。FBで検索すると、この人物と思しき人のタイムラインに行き着くことができる。
事業所は郡山市の大通りの内環状線に近い閑静な住宅街にあり、周辺には大学もある場所に立地している。
事件の発覚は6月10日に遡る。この日の夕方、死亡した女性(80代)の関係者が女性に面会しようとしてこの通所介護事業所を訪れたことがきっかけになった。
その関係者が石田容疑者に女性との面会を求めると、石田容疑者は、「いなくなった」と言ったため、面会しようとした関係者が、「警察に届けた方がいい」と促したそうである。これを受けて石田容疑者は警察に連絡したという。

関係者なる人物が、被害女性とどういう関係だったのか不明であるが、その人は被害女性は通所介護事業所にずっと宿泊してサービス利用していたと思っていたのか、あるいはお泊りデイサービスという認識はなく、通所介護事業所も介護施設と同じようなものと思い、そこに入所していると思っていたのかもしれないし、単純にそこが長期入所できる介護施設だと勘違いしていたのかもしれない。
実際に被害者の女性は、今年になってから自宅から離れていたらしいが、お泊りデイサービスを利用しながら通所介護に滞在していたのではなく、お泊りデイサービスを行っている事業所の隣のアパートの1室に置かれていただけという状態であったようだ。しかも通所介護の管理者以外の職員は、被害女性の存在に気が付いていない。
ということは被害女性が通所介護に隣接するアパートに住み替えて、石田容疑者から何らかの介護を受けていたということのようだが、それは通所介護事業所と被害女性の契約ではなく、逮捕された石田容疑者が、個人的に女性の介護を請け負い、事業所に隣接するアパートで最低限の介護支援を行っていた可能性が高い。職員の休憩所とされていたアパートの一室が、実際には誰も利用せず、使われていなかったことを利用したのだろう。
ところが女性は4月下旬に死亡したという。女性に目立った外傷はなく、司法解剖した結果、死因は不詳だったということで、病死の可能性が高い。女性はビニール袋に入れられていたという。
石田容疑者は、「(女性が)アパートで4月下旬ごろに亡くなったことは分かっていたが、放置していた」と供述しているが、その理由については、「(亡くなったことが)ばれたくなかった。一人で抱え込んでしまった」との趣旨の供述もしているという。
つまり通所介護事業所とは関係のない個人の請負契約で、通所介護が借り受けているアパートを使用して、勝手に介護契約を結んでお金を受け取っていたため、そこで死亡した人がいることがわかると、通所介護事業の経営母体にもそのことが知れてしまい、責任を取らねばならなくなるので、遺体を1月以上も放置した事件ということであろうか・・・。
本件の遺族は、女性を介護施設に預けていると思い込んでおり、しかし実際には被害者は、通所介護事業所が借り入れたアパートの一室に置かれて、容疑者から個人的に介護を受けていたに過ぎず、しかも容疑者の所属する介護事業者側はそのことを把握していなかったという特殊な事件である。
それは自分の小遣い稼ぎのために、考え付いた個人請負契約だったのかもしれない。一人暮らしが可能な軽介護者だということで、所属事業者には内緒で、普段利用されていない休憩所(アパートの一室)を利用して、自分の空き時間でできる支援で何とかなると軽い気持ちで引き受けたものの、思いもよらず利用者が病死してしまい、処理に困ったケースではないかと思われる。
しかしそれは、人暮らしを軽んじていると言われても仕方ない状態で、結果的には利用者が一人寂しく死を迎え、さらにその状態を1月以上放置するとう重大な結果につながっている。
取り返しのつかない結果と言えよう。被害者のご冥福を心よりお祈りするとともに、このような悲劇が繰り返されないように願いたい。
関係者には今一度、法令ギリギリのブラックあるいはグレーな、個人請負契約がないよう周囲を見回してほしいと思う。
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