日本の製薬大手エーザイの株価が、8日午前の取引で前日比19%高の9.251円とストップ高となった。

その原因は米食品医薬品局(FDA)が、同社と米バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病治療薬、「アデュカヌマブ」を承認したことによるものだ。

新薬が認知症治療薬として臨床で実用化されれば、莫大な利益となることは誰にでもわかることなので、同社の株価はしばらく上昇が続くだろう。

FDAの新薬承認を受けて日本の厚労省も、「アデュカヌマブ」について、年内にも承認の可否判断する可能性があると明らかにした。

これに関連して田村厚労相は、「画期的な治療薬だと思う。ただ現在、日本では安全性・有効性の確認をしているところ。まずはしっかりと審査を行い、そのうえで対応を決めたい」と述べている。

アデュカヌマブは、脳内にたまった異常なタンパク質(アミロイドβ)を取り除き、認知機能の低下を抑制する効果を示しているという。

現在日本の臨床で使用されているアリセプトなどの4種類の薬は、いずれも認知症の症状を一時的に軽くする効果はあるが、認知症の根本的治療薬ではないし予防効果もない。

それらとは異なり、新薬は病気が進む仕組みに直接作用し、認知機能の悪化を抑える効果があるとされ、認知症の根本治療につながる可能性があると期待されている。

ただしFDAは新薬の副作用として、画像診断で脳内の一時的な浮腫がみられたと指摘しており、無症状の人もいるが、頭痛や錯乱などを伴うこともあるとして注意喚起している。そのため新薬について追加の臨床試験で更に検証を重ねる必要があるという立場をとっており、その結果次第で承認が取り消される可能性もあると伝えている。

そもそもFDAは、臨床試験からは新薬の効果は不確実としているのだ。しかし脳内のアミロイドβの減少は認めるとしているだけである。

そう聞くと、単に脳内のアミロイドβを減らすだけでは認知症治療や予防薬にはならないのではないかと疑問を持つ人も出てくるだろう。アミロイドβがなぜ排出されずに貯留するのかという根本原因が明らかになって、その原因に効果が及ぶものでは無ければ治療にはつながらないのではという意見もあるだろから、FDAの臨床試験評価は、新薬の効果に期待を寄せている人にとって、「この新薬も実際の効果はないのでは・・・。」と不安と失望を持つかもしれない。

それはともかく、認知症治療薬の開発に向けて少しだけ新しい一歩が踏み出されたことの意味はきっとあるのだろうと信じたい。

新薬は4週間に1回の点滴投与で、価格の目安は患者当たり年約610万円とされている。

価格は普及とともに下がる可能性があるのだから、問題は治療効果が今後どのように明らかになっていくかである。

今更言うまでもないが、脳内にアミロイドβが貯まり始めるのは、認知症の症状を発症する20年も前からであるケースも多い。今現在の僕や、読者の皆さんの脳内で、アミロイドβが排出されない状態が引き起こされている可能性だってゼロではないわけだ。

今なんの症状もなく、日常生活上に何の支障もなく暮らしている人も、既に認知症の原因となる脳内現象が始まっているかもしれないのだ。しかしそれがわかったからと言って、現在はその治療法も予防法も存在しないのだから、手をこまねいて認知症の症状がいつ出現するのかということに怯えているしかない。

アリセプトも実際に認知症の進行を遅らせているのか、その効果が疑問に思えるケースは多々ある。副作用は消化器系の症状だと言われているが、臨床に関わっている人なら、アリセプトを服用後に攻撃的になる人が多いということを実感していることだろう。

僕の経験で言っても数年単位でアリセプトを服薬していた場合、服薬をやめてもほとんど症状が変わらない人の方が多かったような印象が残っているし、服薬をやめて精神的な落ち着きが増したケースもある。どちらにしておアリセプトは、服薬期間が長期になればなるほど、効果は見られなくなる印象が強い。

それとともに、アルツハイマー型認知症の新薬と言えば、僕らの年代はどうしてもあの、『ポパテ』を思い出してしまう。

昭和50年代の後半、日本中の精神科医療機関でポパテという薬が、「認知症の特効薬」として投与されていた。当時は認知症という言葉はなく、「老年痴呆症」と呼ばれていたが、その診断を受けた人に、ポパテが処方されるのは当然という風潮さえあった。

しかしその数年後、ポパテを服薬した方が脳梗塞を発症し死亡するケースが相次いだ。それがポパテの副反応とされ劇薬指定されたために、臨床でほとんど使えない薬となった。

今ではそのような薬があったことも、その薬害さえも知る人が少なくなり、ポパテという薬剤名を記憶している人さえ少なくなっている。

そのようなトラウマもあるために、新薬に過度な期待は寄せられないと考えてしまうが、しかし人類にとって認知症の治療薬と予防薬の開発は、久しく待ち望まれていることであることに間違いはない。

認知症になっても幸せに暮らしている人はいるが、その反面、認知症になったことにより家族の顔もわからず、最愛の家族に暴力を振るうようになって、本来愛し愛されるべき人達から疎まれる人もいる。認知症が原因で、自分が運転する車で愛する孫をひき殺してしまったのに、その事故の記憶がなく、毎日孫を探して精神科病棟を徘徊している人がいる。

そうした不幸を創り出さないため、少しでも減らすためには、認知症の治療薬は救世主である。

一日も早い臨床で実用化できる認知症治療薬が誕生してほしい。
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