介護保険の理念の一つは、「自立支援」である。しかしもう一つ忘れてはならない理念があり、それは「暮らしの質の向上」である。

過去の制度改正や報酬改定では前者が前面に出されて、後者についてはほとんど脚光を浴びてこなかった。しかし今年度の報酬改定では、その部分に新しい光が当たっている。そのことに気が付いている方はどれほどいるだろうか・・・。

例えば特定施設入居者生活介護と、介護福祉施設・介護保健施設・介護医療院のサービス提供強化加算に、「質の向上に資する取組を実施していること」という算定要件(厚生労働大臣が定める基準)が追加されている。

このことについて解釈通知では、その具体例としてLIFEを活用したPDCAサイクルの構築と、ICTやテクノロジーの活用のほか、ケアサービス面では次の内容を挙げている。

・ケアに当たり、居室の定員が2以上である場合、原則としてポータブルトイレを使用しない方針を立てて取組を行っていること。実施に当たっては、当該取組の意義・目的を職員に周知するとともに、適時のフォローアップや職員間の意見交換等により、当該取組の意義・目的に則ったケアの実現に向けて継続的に取り組むものでなければならない。

さらに施設サービスに新設された、「自立支援促進加算」の算定要件の中には、「排せつは、入所者ごとの排せつリズムを考慮しつつ、プライバシーに配慮したトイレを使用することとし、特に多床室においては、ポータブルトイレの使用を前提とした支援計画を策定してはならない」という規定も盛り込んだ。

このように多床室でのポータブルトイレ使用は、生活の質を低下させる要素であるとして、そうした使用実態をなくしていく方向性が示されているわけだ。

施設サービスにおいて自排泄自立のアウトカム評価を行う、「排せつ支援加算教擇哭掘廚砲弔い討癲△修離▲Ε肇ム評価基準の中で、「リハビリパンツや尿失禁パッド等の使用は、おむつの使用に該当する」として、おむつ外しの評価としてリハビリパンツや失禁パットの代用を認めないこととしたうえで、「排せつ支援加算()又は()の算定要件について、おむつの使用がなくなった場合に、排せつ状態の改善と評価するものであり、おむつの使用が終日から夜間のみになったとしても、算定要件を満たすものではない」として、日中のみのおむつ外しを評価しないとされた。

ここで思い出すのは、かつて全国老施協が推奨していた、「おむつゼロ運動」である。

竹内理論という、「とんでも理論」を拠り所に、利用者に対する1.500ml/日以上もの大量強制水分摂取を前提にして、排せつ支援や方法の質は問わずに、おむつを外すことだけを目的化して目標を達成していた施設を表彰までしていた。

しかしその実態は、おむつを使用しないのは日中(概ね日勤時間帯)のみであり、夜はおむつの使用ありで、しかも日勤時間帯のおむつゼロと言っても、紙パットの使用とそこへの排泄は有りとされていた。つまり利用者全員がトイレで排泄できているわけでもない、「まやかしのおむつゼロ」が表彰されていたわけである。

しかもそこでは多床室のポータブルトイレでの排せつはごく当たり前に行われ、お尻が痛くなるまで、ずっとポータブルトイレに座り続けさせられる放置さえ行われていたという実態がある。そういった虐待まがいの方法の結果に表彰状が与えられていたのだ。それは、「恥の表彰状」でしかない。(参照:カルト宗教と同じようにはびこる洗脳ケア

そのことを痛烈に批判し続けていた僕に対し、当時の老施協関係者は、いずれ歴史がどちらが正しいかを証明するとうそぶき、あたかも僕の正論が時代遅れの理論であるかのように見下していた。

しかし歴史は何を証明したというのだろう。

悪魔の所業・諸悪の権化ともいえる竹内理論と、全国老施協は縁を切り、竹内孝仁とも袂を分かち、その方法論で全国の介護施設職員を洗脳していた全国老施協主催の、「介護力向上講習」はなくなっているではないか。(※今残っている、「介護力向上講習」は、洗脳されたままの一部の県老施協主催のもののみ。)
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画像は、竹内理論と介護力向上講習を否定し、正しい水分摂取法と排泄ケアの方法をレクチャーした、「支援という支配」講演会場で、その内容を含めた自署本販売コーナーの画像。)

一方で僕が地道に講演会などで主張してきた、「水分摂取は大事だけれど」で示している方法で、1日に必要な水分摂取量を導き出す施設が増えている。そこでは水分の過剰摂取による内臓疾患が生ずることもなく、脱水を防いで意識レベルが低下しないで元気に暮らす高齢者の姿がある。

どちらが利用者にとっての暮らしの質につながっているのかという部分では、すでに勝負はついている。しかしこんな形の勝ち負けは本来必要なかったはずだ。被害者の屍(しかばね)が累々と積み重なった末の、「介護の歴史」なんて何の意味もないし、あってはならないものである。

何年もの間に、強制水分摂取の被害に泣いてきた多くの介護施設利用者がいて、日中のみの、「まやかしのおむつ外し」のために、たくさんの要介護高齢者の人権が無視され、苦しい・助けてという声が無視されて続けてきた歴史をつくった責任は、いったい誰がとるのだろうか・・・。

おむつゼロという目標を達するためだけに、利用者の方々の暮らしの質を無視して行われた悪魔の所業・・・そうした行為に泣いてきた人の心の傷と体の痛みは、決して消し去ることがないのである・・・。

スローガンに踊らされて利用者の意志や表情が無視される、「介護の方法論」ほど恐ろしいものはないことを、介護関係者は心に刻まねばならない。

我々はその歴史を二度と繰り返してはならないのである。
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