特養の夜間配置基準は今年度から、見守り機器やインカムの活用・安全体制の確保などを前提として従前より緩和されている。つまり昨年度より少ない人数で夜勤業務を行うことができるようになったわけである。

このことについて昨年末に、「特養で夜勤する人がいなくなるかもしれない緩和策」という記事を書いて、この緩和策は夜勤を行う当事者にとっては決して歓迎できるものではなく、労働負担増というしわ寄せが来るだけの結果しか生まないことを指摘した。

ただし今年度早々からこの配置緩和を行なおうとする特養であっても、4月からいきなり配置人員を減らすことは出来ない。この緩和にはいくつかの条件が付けられており、その中の一つに3月の試行期間をつくらねばならないという条件があるからだ。

試行期間中は実際に配置人員を減らさずに、新基準に合わせた緩和された人員配置で業務を行うことを想定したうえで、夜勤業務を行う必要があるのだ。

しかしこの試行が始まったばかりで、緩和された人員で本当に充分なケアを行うことができるのかということや、職員の心身に過度な負担を与える結果にならないのかなどの検証作業が行われていないにもかかわらず、15日に行われた財政制度分科会で財務省は、その緩和の更なる拡充を求めている。

財務省の担当者は、現役世代の急減・介護ニーズの増大で人材確保がますます難しくなっていくことを念頭に、「より少ない労働力でサービスを提供できるように」と主張し、更なる配置基準緩和が、「今後、就業者の大幅な減少が見込まれる。介護サービスを安定的に提供していくために不可欠な取り組み」と決めつけた。

こうした主張をしている人たちは、おそらく肉体労働を一度もしたことはない人だろう。徹夜で事務仕事をこなした経験は数多くあっても、夜間にたった一人で、何人もの利用者に相対するという人間相手の感情労働を行なったことがない人だから、こんなに簡単に夜勤配置が緩和できると主張しているのだ。

しかし介護人材不足の原因は、1に低賃金、2に教育の機会が少ない、3に休みをとりにくいことだと言われている。配置基準緩和策は、この原因を解決する策にはなっておらず、むしろ教育機会の少なさや、休みが取れないという状況をさらに悪化・助長させる愚策である。

そもそも人手不足をテクノロジーで補えといわれても、人に変わってICTやインカムが介護をしてくれるわけでもない。

夜間たった一人で何人もの要介護者に向き合うとき、様々な判断が必要になるが、それは書類をどうするかという判断ではなく、命ある人の生命や暮らしの危機に向き合う判断かもしれない。そうしたことを無視して、夜間は多くの人が寝ているのだから、一人でも対応できる場面は多々あるなんて変な主張をする人がいたりする。

特養で夜間勤務中に、全員が寝ている時間帯などほとんどないに等しいことをそれらの人はわかっていない。しかもサービスの質が高いと言われる特養ほど、就寝中の人に対するケアもきちんと行っているのである。

夜勤配置を緩和して、一人で多数の利用者に対応する時間が増えれば、十分な排泄ケアや体位交換は出来なくなって当然だ。褥瘡は間違いなく増えるだろう。それとも褥瘡を直したり、予防したりする機器ができるとでもいうのだろうか・・・。

テクノロジーの進化や、その導入によって人の配置を減らすことができるという荒唐無稽な主張の尻馬に乗る輩の声が高まって、本当に夜間配置基準がさらに緩和されたとき、そこで行われる夜間ケアの質は、人が息を止めないように最低限の対応を行うしかなくなり、QOLなんか存在しなくなることは目に見えている。

そのような過酷な労働条件下で、夜勤者に介護の質など求められるわけがなくなる。

現状で存在するテクノロジーの水準で、さらなる人員配置緩和を主張する人間は、そこでは介護の質は問わないんだという本音を明らかにしなければならない。

人がいない状況下では、自立支援も暮らしの質も建前で良いのだと、正直に述べたうえで、本当にそれでよいのかという議論にならなければ、この議論は建前と嘘で固められた議論に終始せざるを得ず、そこで出される結論も荒唐無稽な、砂上の楼閣にならざるを得ない。

それは国を亡ぼす議論であり、この国の介護が殺されるということにしかならない。
亡国の配置基準緩和策
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