昨日12日の衆院・決算行政監視委員会で菅首相は、コロナ禍で仕事を失った人などを介護業界へ招き入れる施策に言及した。

国は介護業界に人材を呼び込む施策として、未経験者が新たに介護職として勤める場合、1人あたり最大で20万円を貸し付ける制度を創設し、これを自治体の任意事業として今年度から開始することにしている。そしてこの制度を利用して貸し付けを受けた人が、介護現場に2年間従事すれば、貸し付けたお金の返済を全額免除することとした。

また介護現場を離れている有資格者が再就職するケースで、最大40万円を貸す制度も既にあり、同様に2年間介護の仕事に従事すれば返済は全額免除される。

昨日の行政監視委員会では、この制度の周知が足りない他、返済免除の条件である従事期間の2年が長すぎるので、これを1年にしたらどうかという議論が行われた。

その際質問を行った公明党の伊佐議員は、「1年間でも働けば、『やりがいのある仕事だな』と思ってもらえるのではないか。コロナ禍のピンチをチャンスに変えられないか」と進言している。

その通りであり、もっともな発言であると思うが、同時に異職種からの介護参入組に、『やりがいのある仕事だな』と思ってもらえる職場と、そうではない職場が存在する事実を指摘しておかねばならない。

他産業の異業種から、介護の仕事に転身した来た人の大多数が、介護の職業に就くだけで、「やりがいのある仕事だな」と思えるほど、介護という職業自体が成熟してはいないのである。

誰かの暮らしを支え、生活の質を高めることが介護の本来の目的であるのだから、その本来の目的が達せられる方法でサービスが提供されていれば、自ずと介護という仕事自体にやりがいが感じられるのだろう。

しかし経営者の資質も凸凹が激しく、そうした目的に沿わない介護事業経営が行われている実態もある。それに輪をかけるのが介護人材不足である。増え続ける要介護高齢者の数の急激な増加に、サービスを提供すべき介護人材の数の増加が追い付かず、介護事業経営の最大のリスクは、人員不足でサービス提供がままならなくなることである。

そのため人材の質を考慮することなく、人員集めに走り、さしたる教育も行わないまま、そうした人員を介護の場に放り出して、とにもかくにもサービス提供に結び付けようとする介護事業者も少なくない。そうした形で提供されるサービスの質など底が知れており、中には劣悪で不適切なサービスも含まれている。

そのような状態で、人の暮らしぶりを良くしないサービスを行っている場所で働く人が、「やりがいのある仕事だ」と感じられるわけがないのだ。

虐待まがいの不適切サービスを見て見ぬふりをするような職場で、仕事の誇りもやりがいも感じることができない職場で、その仕事をやり続けようとする動機づけがあるとしたら、それは「適当に働いていても職を失わずにお金がもらえて楽ちんな職業だ」という動機づけでしかない。そういう人だけが定着する職場は、サービスの質などあってなきようなものとなるだけだろう。

コロナ禍で外食産業などが多大な影響を受け、失業した人が介護の職業に転職するケースが増えている。それらの人々の中には、サービス業のプロとして熟練した接客技術を持っている人も多いはずだ。

そうした人が接客技術を生かしながら、対人援助という場面で、個人のニーズに寄り添う接遇ができるようになってこそ、その仕事に誇りを持つことができるのではないのか。そのことで利用者の暮らしぶりが良くなったり、表情が豊かになることに喜びを日々感じることができるのが、「真の介護という仕事のやりがい」ではないのか・・・。

他産業・異業種からの転職者が数多く張り付くことができる今だからこそ、本当の意味で対人援助という仕事のやりがいを感じられる職場づくりを目指して、転職してきた人々が、コロナ禍が収まった後も介護の仕事を続けたいと思えるようにしていかねば、介護人材不足は永遠に解決しないのだと思う。

人材確保という面ではチャンスのこの時期だからこそ、介護未経験の人のスキルをアップさせ、介護のやりがいを感じてもらい、定着して新たな介護の戦略となり続けてもらう介護事業経営戦略が必要とされていることを忘れてはならない。

人集めに困らない時期に油断して、人材育成と介護の品質アップの努力を怠る介護事業者からは、コロナ禍の終息とともに、大量の離職者が生まれかねないことを、介護事業経営者や管理職は大いに自覚すべきである。
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