一昨日から新入社員教育が始まっている介護事業者では、今日はどのような週末の土曜日を迎えているだろうか・・・。

3/31に書いた、「新入社員に見せられるものは矜持か恥か」には早速、「教える側の不安」を訴えるコメントがつけられている。

職場内で人材育成システムを持たない場所では、新人教育の方法も現場に丸投げされてしまっている。教育係も誰なのか不明瞭になっている介護事業者も多い。

就業初日から介護の場に新人を放り出すことを新人教育と勘違いしている介護事業者で、教え方も教わっていない状態で新人教育を任される職員は大変である。

そういう環境で新人指導に当たる職員は、かつて自分が先輩から受けた指導の際に、不安を持った経験をもとに、そうした不安をできるだけ持たないように指導することが精いっぱいで、計画的・体系的教育などできるわけがない。

そもそも自分の経験の中で培ったことを教えるという意味は、根拠のない経験則のみしか教えられないという意味でもある。そこで伝えられるのは、その職場での作業の方法でしかなく、介護の知識や技術につながるノウハウなど教えられるわけがない。

介護事業者ではしばしば、「就業初日は何もしなくてよいから、利用者の様子と先輩の動きを観察してください」と、ホール等に座らされて1日放置される新人教育が行われていたりする。しかしこれは教育にならない。教育効果はゼロだと言い切ったって良い。

観察することによって何かを感じ取れるのは、それなりの情報や基礎知識を持っている人のみである。なんの事前情報も基礎知識も与えられない状態で、利用者の表情や先輩の動きを見たとしても、それがどのような意図があるのかということや、何を意味するのかを理解することは不可能だ。

そんな観察は何の意味もなさず、無駄に時間を過ごすことにしかならない。座って観察することを強制させられている人のとって、その時間は苦痛以外の何ものでもなく、介護の仕事に就いたのを悔やんで辞める原因にも直結しかねない。

そもそもこのブログで何度も書いているように、就業初日に座学もなしに、介護の場に新人職員を放り出すことは乱暴極まりないことだ。未経験者歓迎というフレーズを前面に出して、職員を集めている場所で、そのような方法を取っているのであれば、それは未経験者に何も教えない状態で、見て覚えろという方法で、対人援助に当たらせる状態であり、最も非効率な指導法と言える。

そんな場所で良い人材が育つわけがなくいのだ。仮にそこで良い人材が育ったという事実があるとしても、それはたまたま良い資質を持っている人がいて、勝手に育ったという偶然でしかなく、エビデンスにはつながらない。

そのような場所は、介護技術を教えるのではなく、その職場の介護と称する労働の仕方を教えるのみの状態に陥る。何時から何を行って、どこそこにどんな介護物品があって、どこの何から手を付けるのかという教えに終始し、その意味さえ教えてくれない。介護の仕事がそれぞれ個性の異なる人と向き合うのだということに一言も触れないで、日々の指導が終わっていくことになる。

そこではしばしば、「理想と現実は違うんだよ」というわけのわからない言葉が飛び交うことになる。

理想をつぶす言葉で、手が届くゴールも、そこに向かおうとする希望も失わせているだけの人間が、そこで唱える現実とは、傍から見てあり得ないほど低レベルな現実を意味していないだろうか・・・。

仕事を続けるためには動機づけやモチベーションが必要なのである。時には仕事を続ける勇気も必要になる。

介護という仕事は、人と向かい合い、その人のプライベート空間に深く介入して、場合によっては人生そのものに関わる必要がある仕事だ。そういう仕事に向かい合って、働き続ける勇気も求められるのである。そこで求められる勇気とは愛のようなもので、育むには希望が必要なことを忘れないでほしい。

胸に抱く理想を幻想化せず、実現可能で目指すべき到達点とする介護が求められているのだ。そのために何をしたらよいのかを、根拠とともに教えるのが介護教育である。そのことを忘れてほしくない。その思いを失ってほしくないと心から思う。

今年は4/1が木曜だったので、多くの介護事業者では新入職員は2日勤務して、この週末の2日を休むことができていると思う。そして連休明けからまた気分を変えて勤務に入ることができる。緊張と不安を抱える新人にとって、これは絶妙の良い暦であると言える。

ところが介護職の場合、就業直後からシフト勤務に組み込まれ、この土日も関係なく勤務させる事業者が少なからず存在する。それはあまりにも乱暴であり、バーンアウトや5月病の原因になると強く主張しておきたい。

緊張がとれ、少しの慣れが生ずるまで、新入職員をシフトに組み入れてはならないのである。そのことにくれぐれも注意していただきたい。
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