早いもので今日で3月も終わりである。介護事業者にとってこの日は年度替わりの最終日で、明日は新年度初日を迎えるとともに、それは新運営基準と新報酬適用の初日ともなる。

そして何より重要となる点は、新年度に入る明日は、多くの介護事業者で新しく入職する職員が初出勤となり、各地で入社式が行われる日でもあるということだ。

初仕事の日を迎える新人の中には、社会人として初めてのスタートラインに立つ人も居れば、他の職業から転職してきた人も居るだろう。正式入社の前に実習と称して既に実務に入っている人や、全く初めて新たな職場で実務に就く人も居るのかもしれない。

しかし区切りは大切で、時間と空間・心と体の区切りという意味で、新年度初日に厳粛な入社式を行うということは大事なことではないかと思う。

そのとき、希望や不安が入り混じった思いを抱える新入職員に何を伝えられるかで、その職場の将来が左右されてくるのだということを、介護事業経営者や管理者・管理職は自覚してほしい。

希望を使命感と誇りにつなげ、不安を夢のある目標に変えるためには何が必要なのかを考えてほしい。

当該事業者職員としての規律ある姿勢が、職場の中では求められることだけではなく、対人援助という職業は誰かの暮らしに深く介入する仕事あるからこそ、そこでは利用者の尊厳を護る配慮が求められることを入社式ではしっかり伝えてほしい。経営者や管理職の思いが伝わる入社式にしてほしい。

そして新人を将来の人財として育てるためには何が必要かを真剣に考えて、そのためのプログラムを構築してほしい。

就業初日から、先輩職員に金魚の糞のようについて回らせ、先輩の行ってきた仕事の手順だけを覚えさせような行為をOJTと勘違いして行わせるようなことがないようにしてほしい。そうした方法では正しい介護技術は伝わらないのである。

就業規則や職場の様々なルール、年金や保険といったものの手続きをレクチャーすることも必要だろうが、介護に必要な基礎知識や基礎技術は、まず座学で伝えなければならない。そうした基礎知識をレクチャーする期間をきちんと設けてほしい。そこで見聞きした方法を実践の場で、計画的に学ぶのがOJTである。座学による耳学問を身に着けて、その知識を基礎として実務の場で耳学問を試すのがOJTである。正しい知識や技術は、「見て覚えろ」では伝わらないことを理解しなければならない。

そして介護事業者における様々な実務に入る前に、正しい接客・接遇方法を理解させることを忘れないでほしい。介護事業という職業を通して人を幸せにする前に、人を不幸にしない方法論を理解させたうえで、新入職員に利用者対応させるようにしてほしい。

これを重要視する事業者と、おざなりにする事業者では貴重な人材が張り付き、定着する割合に大きな違いが出てくる。介護の職業における使命や誇りを伝えることなく、接客の仕方も伝えぬまま、先輩のしぐさを見て覚えさせる職場に良い人材が集まったり、定着したりするわけがないのだ。

何より将来、「人財」となり得るスキルの持ち主は、利用者対応が機械的で流れ作業のようになり、乱暴でマナーの欠片もない状態にストレスを感じて、そこから逃げ出してしまうのである。そのことを経営危機であると自覚する必要がある。

新入職員は最初、右も左もわからずに、先輩の指導についていくだけで精いっぱいだろう。しかしそこでしっかりその職場や職員を見て評価しているのだ。介護ってこんな程度の仕事をしておればよい職業なんだと思ってしまう新人に、将来にわたってよい仕事ができるわけがないのである。

介護の職業は、こんなに素晴らしいエピソードを生み出すことができる職業なのだと知ることで、親友職員はスキルアップの動機づけを持つことができ、学ぶことが面白いと感じ取れるのだ。

ある意味、新入職員が入ってくる時期とは、介護事業者の質が試されている時期でもある。

介護事業の矜持を伝えられるか、恥の文化しか伝えられないのかで、その質は明らかになろうというものだ。

利用者に接する際に、よそよそしくなることを恐れ、馴れ馴れしい失礼な態度が求められている対応方法だと勘違いしている事業者は、恥の文化しか伝えられない事業者だ。

先輩職員の利用者対応が、「タメ口対応」で、それが家庭的で親しみやすい対応であると勘違いしている事業者では、不適切で乱暴な態度さえ当たり前になってくる。それも恥の文化である。

そうした恥しか新人に伝えられない事業者は、消えてなくなってよい事業者と言ってよいだろう。
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