今日からいよいよ新年度である。改定された介護報酬も今日から適用される。

そのことに関連して表の掲示板のスレッドの一つには、「利用料金変更同意書の説明・同意が3月中に終わらなかったが問題ないか」という書き込みがある。

問題は大有りである。おそらくコメントの主は、4月分の報酬算定を行うのは5月にずれ込むのだから、4月中に同意を得られれば問題ないと考えているのだろうと思うが、新報酬体系に沿った費用発生は今日の時点から始まるのである。

そうなると基本報酬などについては、「報酬の改定に合わせて算定される」という契約を交わして居れば、変更同意がなくとも算定に問題はないが、新設加算や新設上位区分加算等は、それらとは全く別の費用なので、同意がない時点で算定不可である。4月のある時点で同意を得た場合は、同意日以前の新設加算算定は不可であり、算定した場合は返還指導を受ける対象費用となるので注意が必要だ。

ところで利用料金の変更同意を含めて、書面同意が必要とされていた行為について、新年度から適用される運営基準では、それを電磁式方法に変えることができる規定が加えられている。

利用料金変更に伴う重要事項説明の同意のほか、各サービス計画書についても、利用者、家族から同意を得る際に、必ずしも紙の書類を用意する必要がなくなっているのである。

例えば指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準について(平成12年3月17日老企第43号)の当該部分は以下の通りである。
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2 電磁的方法について
基準省令第 50 条第2項は、入所者及びその家族等(以下「入所者等」という。)の利便性向上並びに施設等の業務負担軽減等の観点から、施設等は、書面で行うことが規定されている又は想定される交付等(交付、説明、同意、承諾、締結その他これに類するものをいう。)について、事前に入所者等の承諾を得た上で、次に掲げる電磁的方法によることができることとしたものである。
⑴ 電磁的方法による交付は、基準省令第4条第2項から第6項までの規定に準じた方法によること。
⑵ 電磁的方法による同意は、例えば電子メールにより入所者等が同意の意思表示をした場合等が考えられること。なお、「押印についてのQ&A(令和2年6月 19 日内閣府・法務省・経済産業省)」を参考にすること。
⑶ 電磁的方法による締結は、入所者等・施設等の間の契約関係を明確にする観点から、書面における署名又は記名・押印に代えて、電子署名を活用することが望ましいこと。なお、「押印についてのQ&A(令和2年6月19 日内閣府・法務省・経済産業省)」を参考にすること。
⑷ その他、基準省令第 50 条第2項において電磁的方法によることができるとされているものは、⑴から⑶までに準じた方法によること。ただし、基準省令又はこの通知の規定により電磁的方法の定めがあるものについては、当該定めに従うこと。
⑸ また、電磁的方法による場合は、個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱のためのガイダンス」及び厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等を遵守すること。
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ここには、「例えば電子メールにより入所者等が同意の意思表示をした場合等が考えられること。」と書かれているので、同意していただくべき内容の通知文をメール添付して送り、それに対しメールを受診した人が、「同意します」と返信するだけでよいではないかと思ってしまうが、規定全文を読むとどうやらそうではないらしい。

同意の証拠は、「電子署名」の活用が求められているが、これは費用が発生するものである。電子署名自体を無料で使えるようにしているベンダーもあるが、署名が無料でも、その署名を一定期間保存するための費用が発生したりするので、安易に活用できるものではない。

また遵守せよとされているガイダンスとガイドラインは、前者が70頁以上・後者に至っては150頁以上という読むのさえ容易ではないものである。そこで示されている様々な規定は、介護事業者にとってはあまりにも高い壁であると言える。

本来は署名・押印が廃止され、同意も電磁的方法で良いとなれば、介護事業者が利用者や家族が説明して同意を得た、「記録」があれば問題ないはずである。しかし運営基準ではそれを認めていないということになる。

よって今回、紙ベースの同意に変えて、電磁式方法を取ることは可能ではあるが、その方法は従前の紙ベースの同意書に署名していただく方法より、ずっと煩雑で面倒くさい方法となってしまっている。

そのため相変わらず料金の変更同意も、書面同意をいただく方法としている介護事業者が多いだろう。現時点ではそれもやむを得ないことである。

従前より便利になった点としては、せいぜいオンラインによる重要事項の録画配信が活用できることくらいであろうか。しかしそれは基準改正の手柄ではなく、コロナ禍でオンラインツール活用が進んだ結果でしかない。

このように厚労省が音頭を取って進める業務の省力化とは、官僚の頑なな思考回路に阻まれて、いつも介護現場には機能しない絵に描いた餅に終わっている。

コロナ禍で自粛を呼びかけながら、自分たちは夜の宴会を自粛しないという柔軟な思考回路も持っているのだから、それを運営基準改正にも生かしてほしいと思うのは僕だけだろうか・・・。

どちらにしても今回も、「使えねえ基準改正」に終わったことは間違いないところだ。
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