3月も残り1週間となった。卒業式の時期も終わり、卒業生たちは新年度からそれぞれ新しいステージに昇っていくことになる。そして多くの職場に新人が入職してくることだろう。その準備も必要になってくるのが今この時期である。
介護事業者に新たに入職してくる人とは、介護福祉士養成校などの新卒者だけではなく、他職種から、あるいは他事業者からの転職組も数多く含まれる。それらの人たちは希望や不安など様々な思いを抱きながら、新たな職場に足を踏み入れることになる。
介護事業者としても、新入職員がどのようなスキルやキャラクターの持ち主なのか、期待と不安を抱いて待っていることと思うが、大切なことは人材は放置したままでは育たないということだ。
きちんとした規律と規範を持って、基礎的教育をしっかり行いながら、数カ月の使用期間を定め、人物の見極めを行いながら、人を育てなければならない。そういう視点がない場所で良い人材がわいてくるわけがないのだ。
新人教育の場は、同時に向き不向きを見極める場でもある。対人援助という職業には向かない人を見極めて、そういう人にはある時期にきちんと引導を渡す必要もある。
対人援助のスキルのない人、不向きな人を何とかしようと我慢して働き続けさせても、多くの場合、教育効果は期待できない。むしろそうした人たちが利用者を不幸にし、自らも壊れていくことになるのである。両者を不幸にしないために、両者の利益のために、対人援助に不向きな人は退場していただくべきである。
人材不足だからあまりうるさいことを言えないとして教育をおざなりにする介護事業者には、どうしようもない人材しか定着しない。そういう場所からは良い人材が先にバーンアウトしてしまうのだ。職場に足を運ぶことができる人でありさえすればよいと考え、とにもかくにも員数を揃えるために、スキルの低い人でも何とか勤め続けてもらおうとして、将来の禍根を残してはならないのである。
そうしない職場に人材が集まってくることを忘れてはならない。
同時に事業者側もきちんと人を育てるという責任を果たす必要がある。
入職初日からいきなり先輩職員の後ろについて、介護実務を見よう見まねで覚えるというのはOJTではない。それは職業技術指導の体をなしていない方法だ。
ある時期きちんと座学によって基礎を徹底的に教え、身に着けてもらわねばならない。OJTとは座学で得た知識を、実地の場面でいかに生かすのかを計画的・意図的に教え学ぶ方法を言うのである。それがない場所でも人は育たない。
サービスマナー教育も、この時期に徹底して行う必要がある。
礼儀が大切だとか、規律を持って仕事に臨みなさいと教育しても、見習うべき先輩職員が、人生の先輩でありお客様である高齢者に対し、失礼なタメ口対応をしている姿を見て、礼儀を身に着けることができる後輩はいないし、規律はそこで大きく揺らぐのである。
しかし指導者であるべき先輩たちが皆、適切な態度と言葉使いで利用者対応している職場では、マナー教育をことさら前面に出さなくとも、新人は丁寧な対応を覚えていく。
「お客様から物事を頼まれたときに、わかりましたという返答はまずいでしょう」と教えてくれる先輩がいる職場では、自然と若い職員が利用者に対して、「かしこまりました」と返答できるようになる。それは自然な言葉遣いになるのである。
そういう気持ちの良い職場で働きたいと考える人たちは、そういう職場を今も探し続けている。マナー教育を重視し、職員がマナーある態度で接遇を続けることをルールとしている職場には、そうした貴重な人材が集まってくるのである。
それれは結果的に高品質なケアサービスにつながり、誰かの大切な人を自信を持って、「任せてください」と言える職場につながっていくのである。
規律と規範のある職場をつくって、将来人を育てることができる貴重な人材が集まる職場にしてください。そこには人材も顧客も、自然と集まってくるのですから・・・。「人の役に立つ介護をしたいという希望を叶えるために」も参照してください。
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