感情や心配りなどの繊細さがない行動は、「デリカシーに欠けた振る舞い」と表現される。

第3者のデリカシーに欠けた振る舞いによって、人はしばしば不幸に陥る。誰かが不幸であることそのものを、デリカシーに欠けた振る舞いによって見逃すことも多い。

しかしデリカシーに欠けた振る舞いを行う人に悪意があるとは限らない。そうした行為が性格に根差したものとも限らない。ある場面でデリカシーに欠けた振る舞いをしてしまう人が、他の場面では配慮のある行動をとっていることも多い。

つまりデリカシーに欠ける振る舞いとは、そうした行為の主体となっている人が気づかぬうちにふるまってしまう行為であることが多いのだ。その原因の一つが、「感覚麻痺」である。

僕が感じることの一つは、介護事業に携わる人は、排泄という行為に関してずいぶんとデリカシーに欠ける振る舞いを取ることが多いということだ。

介護職員が職場で昼食としてカレーを食べながら、排泄ケアの話題を口にできるのが介護のプロの証とされることがあるが、自分たち自身がそうした感覚であったとしても、第3者にとってその感覚は異常であることを忘れないでほしい。

食事介助している最中に、誰かの口に食物を運んでいる行為の最中に、食卓を離れて歩き出す人に対して、「部屋に帰る前に、おトイレによっておしっこを済ませてください」と声をかけたりしている姿をしばしば目にすることがある。食事を摂っている人の前で排泄に関する声掛けをするというのは、あまりにデリカシーに欠ける振る舞いと言えるのではないのか。

声をかけられた人にとっても、自分がトイレに行くことを人に知られたくないと思う人は多いだろうから、その人にとってもデリカシーに欠ける振る舞いと言える。声をかける必要があるのなら、そっとその人に近づいて、耳元で他の人に聴かれぬように、ささやくように声掛けするのが配慮ある行動だろう。

ポータブルトイレに対する意識もかなり麻痺している。普通、人は便器を見ながら食事を摂ることはない。食事している最中に便器を見せられたら、食事がまずくなるだけではなく、のどを通らなくなるかもしれない。

ところが介護現場では、しばしばポータブルトイレが、トイレとは全く異なる場所の、たくさんの人が集まる利用者の生活空間に平気で置かれ、そこで食事が提供されていたりする。

僕は認知症対応型共同生活介護(グループホーム)の外部評価委員を長く務めてきたが、その調査委の際何度かそうした場面を目にして、利用者が食事を摂る際に、目の届かない場所にポータブルトイレを保管するように指導した経験が少なからずある。

排せつの自立や脱おむつのために、食事を愉しむという行為が奪われてよいわけがないのである。食事を摂る場所の目につく場所にポータブルトイレを置いたまま、食事を摂らせるという行為は、食事を単なる栄養摂取の手段としか考えない行為であり、食事を餌に貶める行為と言って過言ではないだろう。

ところで2021年度の介護報酬改定では、複数の加算の算定要件で、ポータブルトイレの使い方が問われていることに気が付いているだろうか。

例えば、特定施設や介護保険施設のサービス提供体制強化加算の算定要件に次の一項が加えられてる。
提供する指定特定施設入居者生活介護の質の向上に資する取組については、サービスの質の向上や利用者の尊厳の保持を目的として、事業所として継続的に行う取組を指すものとする。

そしてこの要件をクリアするための例として以下の4点が挙げられている。
・ LIFE(Long-term care Information system For Evidence)を活用したPDCAサイクルの構築
・ ICT・テクノロジーの活用
・ 高齢者の活躍(居室やフロア等の掃除、食事の配膳・下膳などのほか、経理や労務、広報なども含めた介護業務以外の業務の提供)等による役割分担の明確化
・ ケアに当たり、居室の定員が2以上である場合、原則としてポータブルトイレを使用しない方針を立てて取組を行っていること実施に当たっては、当該取組の意義・目的を職員に周知するとともに、適時のフォローアップや職員間の意見交換等により、当該取組の意義・目的に則ったケアの実現に向けて継続的に取り組むものでなければならない。

また介護施設の新加算である、「 自立支援促進加算」の算定要件にも以下の要件がある。
当該支援計画の各項目は原則として以下のとおり実施すること。その際、入所者及びその家族の希望も確認し、入所者の尊厳が支援に当たり十分保持されるように留意すること。
a 寝たきりによる廃用性機能障害を防ぐために、離床、座位保持又は立ち上がりを計画的に支援する。
b 食事は、本人の希望に応じ、居室外で、車椅子ではなく普通の椅子を用いる等、施設においても、本人の希望を尊重し、自宅等におけるこれまでの暮らしを維持できるようにする。食事の時間や嗜好等への対応について、画一的ではなく、個人の習慣や希望を尊重する。
c 排せつは、入所者ごとの排せつリズムを考慮しつつ、プライバシーに配慮したトイレを使用することとし、特に多床室においては、ポータブルトイレの使用を前提とした支援計画を策定してはならない。
d 入浴は、特別浴槽ではなく、一般浴槽での入浴とし、回数やケアの方法についても、個人の習慣や希望を尊重すること。
e 生活全般において、入所者本人や家族と相談し、可能な限り自宅での生活と同様の暮らしを続けられるようにする。
f リハビリテーション及び機能訓練の実施については、本加算において評価をするものではないが、い良床舛亡陲鼎、必要な場合は、入所者本人や家族の希望も確認して施設サービス計画の見直しを行う。

このようにポータブルトイレは、あくまで個室で他人の目に触れない形で利用するように促しているのである。この視点・方向性は大いに支持したい。

もともとポータブルトイレとは、介護用品として開発されたものではなく、山奥の工事現場で使うために製造されたものである。

そうしたことを含めて考えると、安易に排泄ケアとしてポータブルトイレを利用するべきではないし、ポータブルトイレを利用するくらいならば、トイレでの排せつ支援を優先して考える視点を持ちたいものである。

そのためにもトイレを眺めながらの食事はまずい。・・・その当たり前の感覚を取り戻さねばならない。
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