介護保険制度が創設された背景の一つには、増大する医療費を抑制するために、介護の仕組みを充実させることによって社会的入院などを減らす狙いがあった。

しかし社会的入院を完全になくすことは出来ないので、介護保険適用の療養病床を創設するなどして、医療費を介護給付費に付け替えることで、社会保障費支出を抑制しようとする方法がとられてきた。

高齢者に多い脳血管性疾患等の後遺症によるリハビリテーションモデルもその一つで、入院期間をできるだけ短縮し外来通院リハに切り替えた後、一定の移行併用期間を設けたうえで、医療リハビリから介護保険リハビリへ移行させることが目的化されている。

このようにリハビリテーションの領域でも、単価の高い医療サービスから単価の低い介護サービスへの付け替えをしようとするのが現在進行形の流れである。

その流れが益々加速されているのが2021年介護報酬改定であり、慢性期のリハビリテーションについては、介護保険給付のサービスであっても、医療系サービスから福祉系サービスへの移行を進めようというのが国の考え方である。

特に要支援者の介護予防サービスについては、長期間の医療系リハビリサービスはそぐわないとして、早期の福祉系サービス利用を促しており、介護予防訪問リハビリと介護予防通所リハビリについては、12 月を超える利用ケースの減算適用ルールが新たに設けられた。(下記参照)
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介護予防訪問リハビリ
指定介護予防訪問リハビリテーションの利用が 12 月を超える場合は、介護予防訪問リハビリテーション費から5単位減算する。なお、入院による中断があり、医師の指示内容に変更がある場合は、新たに利用が開始されたものとする。また、本取扱いについては、令和3年4月から起算して12 月を超える場合から適用されるものであること。
介護予防通所リハビリ
指定介護予防通所リハビリテーションの利用が 12 月を超える場合は、指定介護予防通所リハビリテーション費から要支援1の場合 20 単位、要支援2の場合 40 単位減算する。なお、入院による中断があり、医師の指示内容に変更がある場合は、新たに利用が開始されたものとする。また、本取扱いについては、令和3年4月から起算して 12 月を超える場合から適用されるものであること。
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実際に減算適用されるのは、早くとも令和4年4月からになるが、その影響は決して小さくはないだろう。

さらに介護給付の訪問・通所リハビリについても長期利用の抑制策が設けられ、通所リハについては、通所介護への移行を促す規定が新たに設けられており、改正された老企36号通知では、次のように規定されている。
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訪問リハビリ
指定訪問リハビリテーション事業所の医師が、利用者に対して3月以上の指定訪問リハビリテーションの継続利用が必要と判断する場合は、リハビリテーション計画に指定訪問リハビリテーションの継続利用が必要な理由、具体的な終了目安となる時期、その他指定居宅サービスの併用と移行の見通しを記載する。
通所リハビリ
・指定通所リハビリテーション事業所の医師が利用者に対して3月以上の指定通所リハビリテーションの継続利用が必要と判断する場合には、リハビリテーション計画書に指定通所リハビリテーションの継続利用が必要な理由、具体的な終了目安となる時期、その他指定居宅サービスの併用と移行の見通しを記載し、本人・家族に説明を行う。
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このように上記の両サービスは、利用を漫然と続けるのではなく、維持期で安定しているのであれば終了するか、他のサービス利用に移行することが促されているわけであり、通所リハビリについては、通所介護への移行圧力が益々強まっているということになる。

この規定が即、通所リハビリと通所介護の利用状況に大きく影響することはないだろう。しかしこの規定があることで居宅ケアマネジャーは、通所リハビリの長期的な利用はケアマネジメントの適格性が問われるのではないかと考えるようになるし、通所リハの長期利用の必要性の説明や、終了の目途などの説明を受ける利用者やその家族の中には、通所リハビリの利用は限られた期間においてしか利用できないのだという意識が生まれるだろう。

このように基準改正は関係者には少なからず心理的な影響を与えるだろうし、通所リハ関係者は、常に利用者の長期的利用の理由付けを考えながら、終了目安も設定していかねばならないことで、通所リハから通所介護への移行ケースは増えていくことになるだろう。

それにも増して通所リハ関係者が恐れることは、介護給付の通所リハビリテーション費も、長期利用減算が適用されるようになるのではないかというこ徒ではないだろうか。

しかしその懸念は現実化する可能性が高い。2024年の報酬改定では、この減算が必ず議論の俎上に上ってくると思え、訪問リハと通所リハからの卒業が促されていく流れは止まらないのだろうと予測する。

このことは通所介護事業と、その関係者には追い風となるかもしれない。顧客を今以上に確保して、規模の拡大につなげていくことができるからである。

そうであるがゆえに通所介護関係者には、通所リハビリを利用していた人が移行しても、不満を持つことのないサービスの質を担保していく必要があることを指摘しておきたい。

個別機能訓練の充実を図る必要もあろうし、他の事業所を長期間利用していた人が、気持ちよく利用できるサービスの質という意味では、従業員のサービスマナー教育も一段と重要となってくるだろう。そのことを決しておざなりにしたり、先送りしてはならないのである。

今からその備えができる事業所と、そうでない事業所の差は、数年先に必ず生ずるのである。

ということで、今日は卒業がテーマということで、コブクロの卒業を最後にお届けしよう。なんのこっちゃと言わないでほしい・・・。

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