出版不況という言葉を耳にする機会が増えて久しい。

その言葉はずいぶん以前から聴かされるようになったと思うが、その流れは変わることなく、書物は益々売れにくくなって今日がある。今では書物は売れない商品の代名詞になっていくかのようだ。

確かに今、若者たちは本を読まなくなっている。ネット社会はその傾向に拍車をかけて、スマホやタブレットの文章を読む若者は増えていたとしても、本を読む若者はどんどん減っている。それが証拠に、電車の中でスマホの画面を見つめる若者の姿はよく目にするが、本や雑誌を読む若者の姿はほとんど目にすることはない。

その代わりにお年を召した方々が、昔通りに本や雑誌を読んでくれているかといえば、そうなってはいない。老視という現象は40代に入れば起こり得る自然の老化現象であり、小さな文字を読むのが年々辛くなるという人は多い。

そのため現在出版されている本や雑誌のフォントサイズのスタンダードは、かつてより大きくなっているのであるが、それでも目の疲れを考える人は、サイズを自由に変えることが出来るネット情報の方が使い勝手が良く、年とともに自然現象として書物離れという現象が起こってくる。

書物離れが進行する要素が、ここかしこに存在するのが現代社会である。

その影響もあってか、介護関連業界誌も年々その数を減らしている。数年前には大手業界出版社が倒産して関係者に大きな驚きを与えたが、中小の出版社もその荒波は無縁ではない。出版社としてコスパの高い経営を目指そうとする過程で、出版社も本や冊子からネット情報に軸足を移していく場合も多い。どちらにしても介護業界誌・介護専門誌の数は年々減少傾向が続いている。

僕はそうした業界紙に20年以上連載を続けてきたが、1誌また1誌と廃刊が続いて、現在は2誌にのみ連載を続けている。しかしその2誌の連載も今月締め切りの原稿を入稿して終了することになり、残す連載はネット配信記事のみとなっている。

毎日のように締め切りに追われる日は大変であったが、それがなくなるのも少し寂しい気分ではある。

しかしネット配信記事原稿の執筆の依頼は逆に増えている。情報発信と獲得の手段はインターネットが主流になっているということになるのだろう。

だが本や冊子という書物には、ネット情報にはない情報の力や効果があることを忘れないでほしい。

ネットの情報はどこにいてもネット媒体さえあれば手にすることができる便利な情報である。しかしそれは流れる情報であり、そこに留まってはいない情報である。いつ誰に書き換えられえるかわからない情報でもある。

しかし本や冊子に載せられた情報知識は、その本や冊子を手にすればそこに存在するもので、決して流れ去ることはなく、作者以外の第3者が書き換えできない情報である。本や冊子の中にある情報や知識は、本や冊子の中にとどまり、時代の流れに押し流されず、後世の人にまで脈々と伝わっていくものである。

その為作家は、自分の魂を込めて文章を考え、創り出し、校正作業の中で熟成させるのである。そうした過程を経た言葉が綴られている文章が未来につながて行くからこそ、「言霊:ことだま」が宿るのである。

それが貴重な知識につながっていくのだ。僕の本を購入してくれた方が、僕の講演の際にその本を会場に持ち込んでサインを求めてくださることがあるが、その際に僕の本に付箋がたくさん張り付いていると、とてもうれしくなる。僕のつづった文章を心にとどめてくださるための付箋がとても愛しく見える。

昔、ドラマの主題歌ともなりヒットした唄に、「言葉は心を超えない。とても伝えたがるけど言葉は心を超えない。」という名フレーズがあるが、口にする言葉は確かにそうであろうが、作家が魂を込めて綴る文章の中の言葉は、しばしば心を超えて、人に伝えられるものになるのだ。

それは歴史を超えて未来に語り継がれる言葉や知識や情報につながっていくのだ。

僕もたびたび経験しているが、文章を書いていると、自分が考えている以上の言葉や文体が突然思い浮かんでくることがある。

時には何時間かけても原稿用紙の1行さえ埋まらないことがあるのに、ふとしたはずみで流れ出るように文章が思い浮かんできて、自分が考えていた以上の言葉を綴る状態になることがあるのだ。

それは自らの心を伝えようとして、心身を削って文章表現に向かい合おうとする作家に対する神様の贈り物なのかもしれない。

そのような過程を踏みながら現在まで僕は、3つの出版社から自著本を7冊出版させていただいている。
著者書籍
出版不況の中で、僕の本はそれなりの売り上げがあるそうで、ある担当者からは、「ドル箱」と言われたりすることもある。それもひとえに読者の皆様のおかげである。本当にありがとうございます。

連載誌は減っていくとしても、不定期に執筆依頼を受けて書き綴る機会は今後も数多くあるだろう。コロナ禍で一旦出版作業が中断しているものの、既に出版社に原稿を入稿し終えているものもある。それはコロナ終息後に、原稿を手直しして出版されることになるだろう。

心を超えて未来に伝える文章を綴っていく機会は決して失われていないので、そのことを大事にしていきたいと思う。

読者の皆様もどうぞ、流れることも流されることもない書物から、心の琴線に触れる文章や言葉を探す機会を失わないでください。あなたが探し求めるものが、そこで見つかるかもしれないのです。
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