介護給付費分科会は、委員が一通り意見を言い合うだけで、本当の意味で議論はされておらず、審議の場にはなっていない。
定期的に介護給付費分科会が開催されている理由は、国が勝手にルールを作って、報酬構造や単価を決めていると思われないためのアリバイ作りの場として存在しているという意味である。
そうなってしまっているということについて、その責任は介護給付費分科会の委員が問われるような問題ではなく、国がそのように仕向けているのでどうしようもないという側面がある。
ただしそうなっている実態を事実として認識・理解しているなら、もう少し委員自身が国に物申す態度があって良いと思う。その事実を受け入れようとしない委員や、受け入れても委員としての身分を失いたくないと考えて、物申すことが出来ない人がいるのかもしれない。・・・だとしたら、専門家としての矜持や、人としての品性が問われてくる問題ではある。もっと様々な関係者の代表としてそこにいるという意味を考えてもらいたいと切に願う。
(※僕個人としては、日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局長の伊藤 彰久委員の切り口鋭い、現場目線の指摘事項にうなづける点が多かった。このような骨太の意見を述べる人が委員にもっと数多く含まれてほしいと思った。それに比べると、認知症の人と家族の会からの代表委員はあまりにも勉強不足。公費を論ずるための準備をもっとして来いと言いたい!)
それにしても何のための議論かと思わされた典型が、今回新設された介護予防支援費の「委託連携加算」である。この加算は現場感覚から言えば、まったく意味のない加算であるとしか思えない。
この加算新設の経緯を考えてみてほしい。もともと介護予防支援費の改定議論の中では、高齢者の数が増える中でニーズが多様化し、地域の高齢者支援の課題も多様化・複雑化することによって、地域包括ケアシステム運用のかなめの役割を担う地域包括支援センターの負担が増大しているという問題があった。
このため数が増え続けている予防プランの対応に振り回される状態では、予防支援事業以外の地域包括支援センターの本来業務・主要業務に支障が生ずる懸念が強くなって、予防プランを居宅介護支援事業所も作成できるようにしてはどうかという議論もあった。
しかし地域包括支援センターが全く介入しない形での、居宅介護支援事業所による予防プラン作成は、予防プランの適正化という面では問題がある(僕個人としては何が問題なのか、さっぱり理解できないが)等の考えが示され、要支援者等に対する適切なケアマネジメントを実現する観点から、外部委託は認めつつ、引き続き地域包括支援センターが担うことが必要であるとされた。
だが予防支援費は報酬単価が低く、予防支援事業所がケアマネジメント業務の委託先の確保に苦慮している現状認識については、国も介護給付費分科会員も共通認識を持っていた。
そのため外部委託を行いやすい環境の整備を進めることが重要であるとされ、予防プラン作成費の増額改定を行うなど、介護報酬上の対応についても検討が必要であるとされていた。
ところが示された結論とは、予防支援費の報酬単価はわずか7単位の引き上げでしかない。これと比較して居宅介護支援費は要介護1と2で19単位の引き上げ、要介護3以上で25単位引き上げられており、予防プラン作成費と介護プラン作成費の報酬差額はさらに広がっているのである。
この差を穴埋めするという意味で、「委託連携加算 300単位/月」が新設されたものの、それは、「利用者一人につき指定居宅介護支援事業所に委託する初回に限り所定単位数を算定する」ということになった。(※居宅介護支援事業所に予防プランを委託しない場合は、この加算は算定できない。)
つまり委託を受ける居宅介護支援事業所は、最初の月だけ3000円委託費は増えるが、以後は相変わらず低い予防支援費で、かつ現行より居宅介護支援費との差が広がって収益性が低い予防支援費をベースにした委託費で、予防プラン作成を受託しなければならないわけである。
そのような条件で、予防プランの外部委託を行いやすい環境の整備がすすめられたといえるだろうか。全くそうなっていないと思う。
むしろ居宅介護支援費と予防介護支援費の差額が大きくなったことで、居宅介護支援事業所が予防プランを受託しようと思う動機づけは、さらに低下するものと思われる。それは小学生でも理解できるような簡単な論理ではないのだろうか・・・。
そういう意味で今回の報酬改定議論においては、議論過程と結果が最も乖離しているのが予防支援費の、「委託連携加算」だろうと思う。しかしそのことを誰も指摘しないのはどうしてだろうか・・・。大いに疑問が残る点である。
どちらにしても問題の本質は何も解決していないと言ことだけは言えよう。
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