科学的介護推進体制加算自立支援促進加算という名称の新加算が創設された2021年介護報酬改定であるが、そこでは介護サービスを利用する人が、いかに自分でできることを失わないか、自分でできることを取り戻すかという結果が問われていくことになる。

それが科学的介護であり、自立支援介護であると言われ続けるわけである。

自分でできることが続けられたり、できることが今以上に増えることは悪いことではない。そのことを実現するために介護支援が行われることも良いことだ。

しかし人は老いていく生き物だ。老いてゆく過程では自分自身でできることが少しづつ、気が付かないうちに失っていくのである。その時に失われたものに対して、優しい目線で対応されなければ人はひどく傷つき、時には自分がもうこの世に存在してはならないのだと思い悩んだりする。人はそれほど強くない生き物なのである。

もし人が自立しないと生きていく価値がないとしたら、老いも心身の障害も最も罪深いことになるだろう。しかし人は自立していなくとも共立できる存在である。人を思いやり、人を手助けして共に生きる知恵を持った存在である。だからこそ人は人として存在しているそのことだけで価値があるのだ。社会福祉は人がどのような状態で生きていようとも、人としてこの世に存在しているそのものが尊いという、「人間尊重」が価値前提となっているのである。

科学的介護や自立支援介護を叫び続ける先に、この価値前提が失われてしまわないかが大いに懸念されるところだ。

施設サービスにおける褥瘡マネジメント加算や排せつ支援加算は、褥瘡予防や排泄自立に向けた計画を実行するのみならず、課題解決という結果をさらに評価する加算の上位区分が設けられたが、これは将来的に、結果を伴わない単なる計画実施を評価から外す布石でもある。

そうなると、計画を作成しそれに沿ったケアを行っているにもかかわらず目標が達成されない利用者は、お荷物として蔑視されることになりかねない。

算定単位が10倍となり、通所介護だけの加算から通所介護・特定施設・特養まで算定事業者を拡大したADL維持等加算は、ADL利得が気1以上・兇2以上の数値が求められている。現在のように0以上で算定できる要件が引き上げられているのだ。しかも現在上位85パーセントの利用者をピックアップして計算すれば良いとされているルールが、上位と下位のそれぞれ10%をカットして、中間層の数値データでその要件を満たさねばならないように変更されている。

これによりこの加算を算定しようとする事業所では、2回目のバーセルインデックス測定の際に、数値要件がクリアできるように、利用者を頑張らせるということになっていくのは必然だ。

通所サービスでは、口腔状態や栄養状態を、介護職員等が確認して、その情報を担当ケアマネに報告することで算定できる、「口腔・栄養スクリーニング加算」も新設されたが、利用者の表情を見ることなく、無遠慮に口腔状態や摂食状況だけを気にかけるとき、通所サービスでの食事摂取は、監視下に置かれた機械的な作業へと変わりかねないことをすべての関係者が理解し、配慮をすべきである。

通所介護でゆっくりお風呂に入りたい人にとって、自宅の浴室アセスメントなど余計なお世話である。ましてや、スーパー銭湯のように広い大きな浴室でゆっくり体を温めることを最大の愉しみにしている人にとって、「自宅で自立して入浴できるように個別に付きっきりでお世話します」という入浴支援方法など、うっとおしいだけの有難迷惑でしかない。

施設サービスに新設された、「栄養マネジメント強化加算 」の算定要件には、食事の観察(ミールラウンド)を週3回以上行うことが義務付けられている。しかし食事は誰にも遠慮せず、おいしく食べられることが一番大事だ。誰かにジロジロみられ食事などまっぴらだと思っている人が多いはずだ。ミールラウンドはそうした人々の気持ちを無視して、食事という大切な時間を、ジロジロ観察される場に変えてしまわないだろうか・・・。

科学的介護や自立支援介護を前面に押し出すのは良いが、そのときに不必要な押し付けがないかという配慮は不可欠だ。自立や科学的根拠を押し付けられることで、誰かの暮らしに窮屈さを押し付けていないかという検証も欠かせない。

介護事業経営の視点は重要であるし、そのために加算をできるだけ算定することは大事だ。その要件を確実にクリアするために、要件を理解し対応していくことも必要なことだ。しかし私たちの仕事は対人援助であり、そこには日々の暮らしを営む人々が存在する。その人たちの暮らしとは、本来最も個別性が高く、最もプライベートな空間において展開されるものである。そこへの配慮が欠かせないのだ。

人の暮らしとは、それが成立するために必要な支援を受ける必要があったとしても、どう暮らしたいかという部分については、誰からも介入されたくないというのが多くの人の願いだろう。

そこに自立や科学を結び付けるにはどうしたらよいのだろう。少なくともそれは自立するための方法論を押し付けるものであってはならないし、何かを結び付けるに際して人に対する優しさや配慮を欠かさないという視点が欠けてはならないものだろうと思う。

私たちに求められるのは、優しさやデリカシーを科学することではなく、科学や自立支援を、優しさと配慮に満ちた方法論として利用者に結び付けることなのである。
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