コロナ禍で退職に追い込まれた人は、全国で8万人を超えると言われている。

このように厳しい状況下でも介護事業は、他の産業と比べると倒産事業者の数は目立って増えているわけではない。その理由は、コロナ禍特例などで手厚く補助・助成等が受けられることと、無担保・無利子で、実質審査もほとんどない貸付事業(福祉医療等)があり、当座の資金繰りが不可能になるということは、今年度に限って言えば考えにくい状況があるからだ。

東京商工リサーチが8日、昨年の介護事業者の倒産が118件で過去最高になったと発表したが、この数字は2017年と2019年の倒産件数111件と比べて7件しか増えておらず、コロナ禍で大幅に倒産件数が増えているとは言えないわけである。つまり118件という倒産件数は、近年の介護事業経営の厳しさを表す数字でしかないと言ってよい。

介護事業でコロナ禍を理由に廃業している事業者とは、資金繰りができなくなっての廃業ではなく、そうした国の支援策を受けてまで事業を継続したくないという、事業経営者の経営意欲低下によるものがほとんどだ。頑張って今を乗り切っても、人材集めに苦労し、収益確保も簡単ではなくなった現状をあきらめてしまっての倒産が多いのである。

しかし経営能力のある人材にとっては、介護給付費だけを考えても1年ごとに1兆円近く増え続ける介護事業は宝の山であり、ビックマネーが転がっている市場である。そうであれば経営をあきらめた事業者が増えている今こそ、そこに張り付いていた人材や利用者を引っ張ってきて、経営規模を大きくするチャンスでもある。

しかも前述したように、他産業での退職者が多いのだから、そこから介護事業への転職者も増えるとみて、積極的に自らが経営する事業者に、有能な人材を引っ張てくることも可能であると考えても良い時期でもある。

現にコロナ禍以前より、介護事業者の求人に対する応募は増えており、介護事業者が新入職員を雇用する数も増えている。

そんな中で、特にコロナ禍で倒産が相次いでいる外食産業からの転職者を受け入れることによって、事業者全体の顧客対応能力が向上するのではないかと考える介護事業経営者や管理職が増えている。外食産業経験者は、接客教育を受けサービスマナーが浸透しているから、その影響を期待しての考え方だと思う。

しかしはっきり言ってそうした効果は期待できないと断言しておきたい。

サービスマナーの欠片も存在しない場所に、介護の仕事の経験がないが、接客能力が身についている人が転職してきても、その人がマナー面で今働いている職員に影響力を及ぼす前に、介護の仕事を教わる過程で、介護の場でマナー意識のない先輩による利用者に対するタメ口対応や、荒々しい動作の影響を受けて、それが介護では家庭的対応なのだと思い込まされてしまうのである。

顧客に対してタメ口なんて信じられないと感じたとしても、「自分は利用者と関係性ができている」・「あんまり馬鹿丁寧な対応は、心の壁をつくる」などという、小学生のような程度の低いわけのわからない屁理屈によって、節度のある対応は否定され、それが介護では必要とされる対応だと洗脳されてしまうのである。

そのような屁理屈や低能な考え方に迎合したり、洗脳されない職員に対しては、「介護は飲食業と違うんだ」とか、「気取っても関係性は生まれない」と罵倒されたり、いじめらたりして、正論が暴論につぶされていくのが落ちである。

外食産業等からのマナーが身についた人が、好影響を与えられる介護事業者とは、サービスマナー意識が浸透した事業者である。日ごろから丁寧な態度と言葉遣いが教育されている場では、そこに接客業の人が使う、「8大接客用語」が転職者の影響でさらに浸透して、サービスマナーの品質も向上することがあるが、残念ながらそうした事業者は少数派でしかない。(参照:職場全体でサービスマナー向上に取り組んだ成果

サービスマナー意識の高い職員を育て、顧客から信頼して選んでもらうことができる介護事業となるためには、経営者が覚悟を決め、労務管理として信賞必罰を徹底しながらサービスマナー意識の浸透を図ったうえで、その意識のない職員を排除することも恐れずに良い職場を目指すことが必要とされる。経営者や管理職に覚悟がないとそれは実現しない。

ある程度のサービスマナー意識が浸透している職場に、外食産業で培った顧客対応マナーのノウハウが加われば、鬼に金棒となる可能性があるというものである。
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