今朝12/23付の北海道新聞朝刊には、「介護事業所の高齢者虐待最多」という見出しで、次のような報道記事が掲載されている。
------------------------------------------
厚生労働省は22日、介護事業所の職員による高齢者への虐待が2019年度に前年度比3.7%増の644件となり、過去最多を更新したと発表した。厚労省は虐待防止への意識が高まり、通報が増えたことなどが背景にあるとみている。自治体への通報件数も3.7%増の2.267件。亡くなったのは4人だった。

虐待の理由は複数回答で、虐待との認識が乏しかったことや、職員のストレスや感情コントロールの問題などがあった。一つの事業所で複数の高齢者が虐待を受けているケースもあり、不特定多数に暴言を吐くなど被害者を特定できなかった件数を除くと虐待を受けた人は計1.060人。このうち認知症の人が約8割を占めたほか、症状が重い要介護3以上の高齢者が75.8%に上った。

虐待の種類(複数回答)は暴力や拘束といった身体的虐待が60.1%。暴言などの心理的虐待が29.2%、放置などの介護放棄が20.2%。(以下略12/23北海道新聞朝刊より転載
-------------------------------------------
この記事では虐待の理由を、「職員のストレスや感情コントロールの問題などがあった」と報道しているが、こんな理由の括りはやめてほしい。それは両方とも対人援助のスキルのない人であったという意味でしかない。

そもそもストレスで虐待してしまうという理由を認めてしまえば、「介護の仕事でストレスが生じた場合は、利用者を虐待することも仕方ない。」という意味にも捉えられかねない。そんなことがあってよわけがないのだ。

さらに言えば、介護事業における従業員の虐待理由を、「仕事のストレス」と括ってしまえば、介護の仕事が介護以外の仕事に比べてストレスが生じやすい仕事であるという誤解も生じてしまう。決してそんなことはない。他の職業は、毎日数字で結果を求められたり、利用者から直接苦情を投げかけられたり、介護の仕事とは異なる種類のストレスがたくさんあって、どの職業が一番ストレスが高いかという比較は困難である。

現に仕事のストレスでうつ病になり、精神科に通院や入院をしている人で、介護の職業に就いている人の割合が、他の職業の人より高い確率であるという言う事実はない。

仕事には多かれ少なかれストレスは存在するもので、良いストレス(ユーストレス)だって存在する。(参照:メンタルヘルス不調とストレスについて考える

良くないストレス(ディストレス)であったとしても、それを直接利用者への暴言や暴力に結び付けるということは、対人援助者としての資質に著しく欠けているということに他ならないのだ。

確かに介護の仕事は人に向かい合う感情労働だから、利用者の感情に巻き込まれてしまうリスクの高い仕事でもある。だからこそ感情のコントロールを行う教育訓練が必要で、特にアンガーマネジメントの基盤となる、「自己覚知」の教育は欠かせないのであるが、それはきちんと行われているのだろうか。そのことをもっと問題にすべきだ。(参照:価値観が変化する自分を覚知するために

新聞記事では、「虐待との認識が乏しかったこと」も理由に挙げられている。僕がこのブログで再三取り上げている、「感覚麻痺」がその一番の原因だろう。(参照:知らぬ間に・悪気なく、介護の場にはびこる感覚麻痺による虐待

「不特定多数に暴言を吐く」行為も取り挙げられているが、その多くは職員が顧客である介護サービス利用者に、「タメ口」を使うなどの不適切な態度を許してしまうという、「割れ窓」を放置していることに他ならない。

例えば上司に部下が、「タメ口」で話しかけることは失礼な態度であると感じる人が多い。場合によっては、「その口の利き方はなんだ!!」と怒る上司もいる。それなのに介護サービスの場で、従業員が顧客に対し、馴れ馴れしい失礼なタメ口で対応することをなぜ許しておくのだろうか。

しかしタメ口で接することが親しみを持ってもらい、家庭的雰囲気につながると主張している人も、心のどこかでは、それは顧客対応としてはふさわしくないと感じたりしている。それが証拠に、認知症の人にタメ口で接している人が、相手が認知症ではなく、物事をはっきり主張できる人であれば、自然と丁寧語で接する態度に替わるという、「人を見て言葉を使い分ける」という態度になっている場合も多い。

その結果が今朝の報道の、「虐待を受けた人の8割が認知症の人」という結果につながっているのではないだろうか・・・。

どちらにしてもサービスマナー教育をおざなりにしていると、いつかそれが大きな虐待問題につながり、社会全体から糾弾を受けるだけではなく、事業廃止の危機に直面することを経営者や管理職は改めて心するべきである。

今のうちに、利用者に対するくだけた態度は、顧客に対して失礼な態度であるという理解を促し、サービスマナーに徹した介護事業者に変化できるように、教育訓練をしっかり行わねばならない。

そうしないと団塊の世代の人から選ばれる介護事業者にはならないのである。
介護事業におけるサービスマナー研修
登録から仕事の紹介、入職後のアフターフォローまで無料でサポート・厚労省許可の安心転職支援はこちらから。

※介護事業経営に不可欠なランニングコストをリスクゼロで削減できる新情報を紹介しています。まずは無料診断から始めましょう。電気代でお困りの法人・個人事業主様へ、電気コスト削減!【ライトでんき】





※別ブログ「masaの血と骨と肉」と「masaの徒然草」もあります。お暇なときに覗きに来て下さい。

北海道介護福祉道場あかい花から介護・福祉情報掲示板(表板)に入ってください。

・「介護の誇り」は、こちらから送料無料で購入できます。

masaの最新刊看取りを支える介護実践〜命と向き合う現場から」(2019年1/20刊行)はこちらから送料無料で購入できます。