昨日の記事から続く
新築の香りが漂っていた、オープンしたばかりの特養が、数日のうちに湿布の臭いが充満する空間になっていったという意味は、それほど多くの利用者が湿布を常用していたということだ。

その中には、血行の促進や冷え性の改善のために温湿布を使っている人もいたが、多くの場合、痛みの緩和のために湿布が使われていた。

お年を召せば全身に痛みを感じる人が多いのはわかっていたし、筋肉痛や神経痛などの痛みが運動能力に大きく影響することは理解していた。しかし当時の僕は20代だから、激しい運動後の筋肉痛の経験はあっても、慢性的な関節や神経の痛みの経験などなく、それがどれほど日常生活に支障を及ぼしているのかという理解に欠けていたように思う。

「我が身をつねって人の痛さを知れ」という諺は、他人の痛みや苦しみを、自分自身の痛みに置き換え、相手を思いやることが大事だという教えであるが、そうはいってもなかなか他人の痛みは理解できないものである。ましてや若者が高齢者の慢性的な身体の痛みを理解することは、口で言うほど簡単なことではないように思う。

ただそれは今だからこそ、自分が年をとったからこそ言えることだともいえる。

その為当時の僕は、利用者の中のたくさんの方に、体の痛みがあることは解っていても、もっと頑張ることができるだろうとか、そこまで痛みに慎重になって行動を制限する必要はないのではないかと思うことがしばしばあった。しかしその考え方は完全に間違っていたと反省している。

僕は若いころ野球をしていたことがあるが、プレーヤーとしては大した才能はなかったものの、肩の強さだけは自慢で、現役選手を引退して十数年経っても肩の強さは若いものにはまだ負けないという自負があった。ところが数年前にいわゆる、「50肩」という状態になって肩がまっすぐ上まで挙がらなくなったことがある。

50肩は自然に治うするようで、今は肩の状態も元に戻っているが、痛みのある時期は、痛いという事象そのものよりも、また肩が痛むのではないかということに怯えて、いろいろな行動に自制的にならざるを得なかった。

億劫で行動ができないのではなく、怖くて動けないという場面が日常生活の中でしばしば出現した。車を運転している際に、バックのために後ろを振り向くという何気ない動作の中でも、肩に痛みが走るのだから本当に困ったものだ。その時期は車の運転もしたくなくなった。

高齢者の慢性的で全身にわたる関節痛や神経痛とは、僕が肩の痛みを感じていた時期に存在した怖さや不便とは比べものにならないくらい、過重な生活障害ではないかと思う。

だからこそ痛みの管理はより重視されなければならない。そして生活障害につながる体の痛みがある際に問題となるのは、痛みの程度の問題ではなく、痛みの有無そのものであり、程度を軽くしても生活障害はなくならないのだという理解も必要であると感じている。

同時になくならない痛み、ずっと付き合っていかなければならない痛みを抱えて生活している人もたくさんいるのだから、そこに優しく対応できる視点が介護支援者にはもっと求められるのではないかと思うようになった。

人の痛みは見えないから、無視されてしまうことがある。そうであっては高齢者の生活課題は解決不可能になるのだ。見えないからこそより慎重に対策されなければならないと思う。

とともに・・・もっと見えにくい痛みをアセスメントしてほしい。体の痛みは訴えになるが、心の痛みは訴えとして現れないことの方が多いということだ。

高齢者は子供ではないと言いながら、その口はどこに行ったのかと思う扱いがされていることが多い。

今、インスタグラムなどのSNSでは、介護施設等で年末行事の様子を映した写真や動画がアップされている。そこでは世間より一足先にクリスマスを祝う様子なども見受けられるが、そこに映されている高齢者の方々が、サンタの赤い帽子や紙で作った円柱状の帽子をかぶって、クリスマスソングを唄ったり、ステージで繰り広げられるアトラクションを観ていたりする姿がある。

しかし世間一般のどこの家庭で、サンタの赤い帽子や紙で作った円柱状の帽子をかぶってクリスマスを祝っている高齢者がいるというのだろうか。

祖父母の方々と同居している介護関係者は、自宅で祖父母の方々が、そのような姿でクリスマスソングを唄う姿を微笑ましく思うことができるのだろうか・・・。

そのような扱いに心を痛めている高齢者はいないのだろうか・・・。そこに思いが及ばない人は、対人援助の仕事をすべきではないと思う。
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