厚労省は訪問看護ステーションから理学療法士等が派遣される回数が、看護師の派遣回数を上回ることを問題視して、その規制のために報酬改定の度に、訪問看護ステーションの介護報酬算定について様々なルールを課してきた経緯がある。

それはリハ職の訪問サービスを不必要とみているという意味ではなく、訪問看護は本来は看護師が訪問するサービスで、リハ職はあくまで看護師に替わって派遣されるに過ぎず、自宅でリハビリテーションを受ける必要性があるなら、本来は訪問リハビリを利用すべきであるという考え方が根底にある。

しかし訪問リハビリは訪問看護ステーションのように、母体から独立してセラピストが配置され、訪問専門の業務に専従する形は不可とされている。訪問リハビリとして認められるのは、病院、診療所、介護老人保健施設が母体となっているケースだけだからだ。

よって訪問リハビリというサービス種別の絶対数が不足しているため、それに替わって訪問看護のセラピスト派遣が増えているという経緯がある。それがまかりならんというのが厚労省の立場である。

だったらその問題を解決するのであれば、リハ職の訪問リハビリの独立経営を認めればよいと思うのだが、事はそう簡単ではないという。

そもそも理学療法士等のセラピストの資格は、業務独占の資格ではなく名称独占の資格である。リハビリテーションも、医師の指示に基づいて指示された内容を実施しなければならず、医師配置のない場所で、名称独占でしかないセラピストが独立経営してよいのかという議論がある。さらに日本看護協会が、セラピストの独立経営に反対の立場をとっているという経緯もある。

その為、この問題はなかなか解決が図れない問題であるのだが、今回の介護報酬改定議論の中で厚労省は、訪問看護ステーションの運営基準を見直し、サービス提供を担う職員に占める看護職の割合が6割以上であることを指定要件とすることを提案していた。これが実現すれば、その基準を満たすためには、訪問看護師の数を増やすか、セラピストの数を減らすしかない事業所が出てくるわけだ。

そうなると看護人材も不足してる現況においては、訪問看護師を増やして基準を満たすことは難しく、必然的に訪問看護ステーションの職を失うセラピストが増えることはめにみえている。

この提案が行われた11/16の介護給付費分科会では、日本慢性期医療協会の代表委員から、「訪問看護ステーションのリハは利用者の依頼に基づいて行われる。訪問看護の中でリハが大きなウェイトを占めることにクレームが出る理由が分からない。」などの反対意見も挙がった。

さらに日本理学療法士協会、日本作業療法士協会、日本言語聴覚士協会は共同で声明を出し、「利用者のニーズを排除した改正」・「約5000人のリハ職が雇用を失う」などと異論が噴出し、署名運動も行われるなどの騒ぎになった。

その中で厚労省にとって一番プレッシャーになったのは政治の動きである。

11/27の衆院・厚労委員会で公明党の桝屋敬悟議員がこの話題を取り上げ、リハ職が仕事を失ってしまうことや、サービスを受けている利用者にも支障が出ることの懸念を表明し、「毎年輩出される多くのリハ職を、介護現場で有効に活用するという視点も重要。地域支援事業で活躍してもらうのもなかなか難しい。地域の中でリハ職が活きる新しいスキームを抜本的に考えるべき」と提言した。

その結果12/9の介護給付費分科会で厚労省は、先に提案していた訪問看護の運営基準の厳格化は見送ることを表明した。

しかし同時に返す刀で、リハ職によるサービスは単位数の引き下げ、提供回数の適正化などを行うとした。

厚労省が目指した基準改正を、政治家等の圧力でつぶされた恨みつらみは、報酬単価の引き下げで晴らそうというわけだ。

現在セラピストの訪問は、1回に時間に関係なく296単位である。これは看護師の20分未満の訪問単位より低い単価で、1日に2回を超える訪問の際は、この単価がさらに1割減算されることになっている。

この単価がさらに下げられ、回数制限のルールも組み入れられる可能性が高い。セラピストの方々にとっては、規準厳格化が見送られてホッとするという状況にはないわけである。

くれぐれも油断なきように、声を挙げ続けていただきたいと思う。
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