職場にはそれぞれ、代々受け継がれていく有形無形の伝統がある。
しかしそれがすべて価値ある伝統とは限らず、なくしていかねばならない悪しき伝統も多い。介護事業者の伝統も同じである。
措置時代のルールを受け継ぎ、何十年も前から変わらない介護施設の運営基準に胡坐をかいて、そこで死ぬまで暮らさねばならないかもしれない人の入浴支援を、週2回しておれば豊かな暮らしだと勘違いした考え方を是正させようとしない伝統もある。
しかしそう考えている人自身は、毎日朝と晩にシャワーを浴びたり、少なくとも毎日入浴している人が多い。自分の暮らしと、自分が支援している人の暮らしぶりに、大きな差があることに何も疑問を感じることなく、職場でその是非を議論さえしないことも、「悪しき伝統」と言ってよいだろう。
そうした悪しき伝統の中でも、一番厄介なのが、利用者を子ども扱いするかのような職員対応の伝統である。
タメ口は目上の者が目下のものに対して使う、「失礼な言葉遣い」であることを理解せず、馴れ馴れしい言葉遣いや態度で利用者に接することが、「家庭的な対応」・「関係性が構築できる」とわけのわからない理屈を正当化する伝統を持つ場所には、必ずそうした対応に泣かされている利用者が存在している。
家族ではない他人が、介護支援の場で利用者に関わるときに必要な態度とは、家族と同じ遠慮ない態度ではなく、介護のプロとしての態度なのだ。信頼のおける介護知識と技術に基づいた接遇ができることが一番求められる態度なのである。
関係性というが、私たちが利用者と結ぶ関係性は、家族関係ではなく、従業員と顧客あるいは、サービス提供者と顧客という関係でしかない。そこでは顧客に対して失礼のない態度、お客様が喜んで受け入れいてくれる、「感じの良い態度」が求められるのであって、無礼で馴れ馴れしいタメ口や、過度なボディタッチが求められているわけではないのだ。
利用者に上から目線で接したり、過度に馴れ馴れしい態度で接するなどの悪しき伝統にメスを入れて、新しい風を吹き込むことは容易ではない。悪しき伝統であっても、それが受け継がれている場所では、それが普通になってしまって、悪しき事であるとは気が付かなくなっているからである。
しかも人間は保守的な生き物なので、現状を変えようとするときには、必ずそれを変えたくないという保守勢力の強い抵抗が生まれる。これを打破し変えるのは容易ではなく、経営者や管理職の強い覚悟と介入が不可欠だ。
一定の期間を示して、態度を改めない人は役職から降ろしたり、昇給をストップしたりする等、職場のルールに従わない人にはペナルティを与えねばならない。性善説で旗を振ればなんとかなるだろうという考え方が一番だめだ。
保守的で態度を改めない人は放っておいて、新人をきちんと教育して職場の伝統を変えようとしても、それは無理難題というものだ。経験年数が長い先輩職員に巻き込まれずに、新人が力強く改革の旗手になることはほぼ奇跡に近い。そうした奇跡を起こそうとする人は、様々な形のいじめや嫌がらせに合って、つぶれていくのが落ちである。
だからこそ先輩が新人の手本になるように、強権で経営者や管理職が現状に介入し、今いる職員の意識や態度を変えていく必要があり、変えられない人は排除していく必要もあるのだ。そうしないことには理想とする職場などできるわけがない。
悪しき伝統に強権で介入できない経営者や管理職が抱く理想は幻想でしかない。目ざるゴールにたどり着くために、覚悟を持って強権介入も辞さないとする人の理想だけが、実現可能な理念になっていくのである。
経営者や管理職の権限とは、そうした方向に振るわれなければならず、職員を恫喝するだけの経営者や管理職は、器がないというべきである。
それは経営者や管理職として恥ずかしいだけではなく、人として恥ずべき姿でもある。
※登録から仕事の紹介、入職後のアフターフォローまで無料でサポート・厚労省許可の安心転職支援はこちらから。
※介護事業経営に不可欠なランニングコストをリスクゼロで削減できる新情報を紹介しています。まずは無料診断から始めましょう。電気代でお困りの法人・個人事業主様へ、電気コスト削減!【ライトでんき】





北海道介護福祉道場あかい花から介護・福祉情報掲示板(表板)に入ってください。
・「介護の誇り」は、こちらから送料無料で購入できます。
・masaの最新刊「看取りを支える介護実践〜命と向き合う現場から」(2019年1/20刊行)はこちらから送料無料で購入できます。
masa
が
しました