次期介護報酬改定の大きなテーマの一つに、居宅介護支援事業所の介護支援専門員の処遇改善が挙げられていた。
その必要性は多くの関係者が認めるところで、居宅ケアマネを対象とする処遇改善加算は実現しなかったが、担当ケアマネ件数を増やすために逓減性を見直したり、予防プランを受託した際の加算を新設するなどして、居宅介護支援事業所の収益が今以上に挙げられる対策がとられることになった。
おそらく居宅介護支援費も現行よりアップされることだろう。そのようにして居宅介護支援事業所の収支差率を改善して、その収益を介護支援専門員の給与を含めた処遇改善に回すことができる方向に舵が切られているのである。【参照:介護給付費分科会速報(11/26開催) ・ 居宅介護支援費はケアマネの待遇改善につながる改定になるのか(前編)・(後編)】
しかし逓減性の見直しにより、多くの居宅ケアマネジャーが、居宅サービス計画作成件数を、最低でも逓減性のかからない44件までは受け持つように強いられるだろう。居宅ケアマネの仕事は、それだけでも増えることになる。
しかも居宅ケアマネに課せられる義務も増えることになり、その内容を見ると大幅な業務負担となるのではないかと懸念せざるを得ないものとなっている。
その内容とは、居宅介護支援の事業所の運営基準が見直され、以下の2点を利用者へ説明することを新たに義務付けることになることだ。
・前6ヵ月間に作成したケアプランについて、訪問介護、通所介護、地域密着型通所介護、福祉用具貸与(販売)の各サービスの割合
・前6ヵ月間に作成したケアプランについて、訪問介護、通所介護、地域密着型通所介護、福祉用具貸与(販売)の各サービスごとの、同一事業者によって提供されたものの割合
この新規程は、契約時に利用者に対して説明して終わりということにはならず、繰り返し6カ月ごとに説明する義務が生ずるという意味だと思う。それは大きな業務負担と言えるのではないだろうか・・・。
2日の介護給付費分科会でもこの基準見直しについては、居宅介護支援事業所のケアマネジャーの業務負担となることを懸念する意見が挙がっている。しかし厚労省の担当者は、「既に特定事業所集中減算の仕組みがあるので、基本的にデータは取りやすい。ただ事業所の負担には十分配慮していく」と述べている。
厚労省担当者の見解は、自分で仕事をしないで義務だけ課す傍観者のふざけた論理と言わざるを得ない。
なるほど福祉系サービスの、「同一事業者によって提供されたものの割合」については、特定事業所集中減算との関係で、担当ケアマネは常にその数値を計算して把握していることは間違いない。しかしその割合について、全利用者に6カ月ごとに説明するということの業務負担は、計算するという業務負担とは別物である。データが取りやすいから、過度な業務負担にはつながらないという論理は成り立たないわけである。
しかも現在は、「ケアプランに占めるプランニングした福祉系の各サービスの割合」などという数値はデータ化されておらず、それも今後は机上計算の上でデータ化し、定期的に全利用者に説明する業務負担が増えるわけである。(※割合の算出方法は、今後示されることになると思われる)
よって間違いなくこの基準見直しは、大きな業務負担となると言ってよいだろう。
しかしこの説明によって利用者にとってどんな利益があるのだろうか?そもそも利用者は、こんな説明を望んでいるのだろうか。
利用者の声として、自分が担当するケアマネジャーの全プランに占める各福祉系サービスの割合や、福祉系サービスの提供事業所割合を知りたいという声が挙がっているという話は聴いたことがない。
利用者の興味とは、自分のサービス計画の内容であって、他人の計画内容に興味を持っている人はほとんどいない。ましてや自分の担当ケアマネジャーのプランニングの傾向と実態なんかつゆほどの興味もないはずだ。だから今回の基準見直しで説明を受け、その内容を把握したとしても、自分にとって何の得にもならないし、必要な情報であると実感できない利用者がほとんどではないだろうか。
つまり今回の居宅介護支援事業所の運営基準改正は、誰も望んでおらず・何の効果も期待できない義務をケアマネに課して、仕事を増やしているだけではないのだろうか。わずかなプラス改定の収益をケアマネに手渡す代償としては、あまりに負担が大き過ぎると思うのは僕だけだろうか・・・。
サービス担当者会議のリモート化は実現しても、モニタリング面接のリモート化は見送られ、ケアマネの業務負担は重いままなのに、さして意味があるとは思えない業務を増やす基準見直しは改悪としか言えないものである。
現場を知らない官僚が、制度を益々複雑怪奇にしているとしか思えない・・・。そこで居宅介護支援事業所のケアマネジャーはどんどん疲弊していく。
その実態を知れば知るほど、介護支援専門員の資格を取ろうという動機づけを持つ人が減るのも当然と言えば当然であるとしか思えなくなる。
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