僕がFBでつながっている、神奈川の社会福祉法人の施設長・Kさんが、12/26に書いた、「大人を小馬鹿にするかのような格好をさせて何が楽しいのだろう?」という記事を読んでくださって、その記事をご自分のFBにシェアしてくださっている。

シェアした際に、生地紹介文を書いてくださっているが、そこにはK施設長が過去に経験したエピソードが次のように紹介されている。(※K施設長に承諾を得てうえで転載しています。)
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もう20年以上も前ですが、認知症で幼児返りし、いつもニコニコしているだけの小柄な入所者さんに介護職員は皆メロメロでした。
未熟な私は面会にみえたご家族に、良かれと思い「〇〇さんかわいい、と一番人気なんですよ」なんて伝えてしまいました。ご家族も喜ぶと思ったんですね。
でも喜ぶどころか、寂しく悲しそうに仰いました。「…こうじゃなかったんですけどね。厳しい人でした」
このやり取りは、私に刻み込まれました。一生忘れられない失敗談。でも、このおかげで気付きと学びを得たのでした。」
(※K施設長のFBより転載)
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利用者を可愛いと感じる人に悪気があるわけではないのだろうが、私たちは社会福祉という領域の中で、対人援助に関わっていることを忘れないでほしい。

私たちが決してなくしてはならない価値前提とは、「人間尊重」の価値前提なのである。「人間尊重」とは、人は「何を持っている」とか「何ができる」ということにかかわらず、「ただ人として存在していることに価値がある」という人間観であり、私たちが対人援助の場で関わる利用者が決して尊厳を失わないように関わることが求められるのである。

その関わりは極めて積極的な姿勢としてとられるべきで、人の尊厳を奪うような要素を少しでも残しておかなうようなソーシャルアクションが求められるのだ。そうであるがゆえに人生の先輩を人として尊敬する以前に、子供のように可愛がる態度を放置してはならないのである。

勿論、語感は時代とともに変わるものであるし、言葉狩りを行っても人の権利を奪いこそすれ、護ることにはならないことも十分承知している。それでもなおかつ、介護事業者に所属する職員が、仕事として関わる人生の大先輩に対して、可愛いと感じたり、可愛いねと声を掛けたりすることの弊害を思わずにはいられない。そうした意識の低下こそ、介護サービスにおける割れ窓になりかねないのだ。

何度も云う・・・。可愛いという言葉を人に対して用いる場合、従来は子供や年少者、若い女性などについて用いていたが、近年ではそれが「かわいいお爺ちゃん」のように対象の広がりがみられることは理解している。しかし可愛いという言葉が、時代の流れの中で、世間における使い方が変わってきたと言っても、対人援助のプロが、利用者に向かってその言葉を使うのは間違っていると思うのである。その語感は、自分より立場の弱いもの・施しの対象者に向けるものになって、その意識によって一人の人間としての尊厳を奪うような言動に結び付く恐れが排除できないからだ。

対人援助者は、利用者を愛(いつく)しみ、大切に思うことが大事である。

介護支援を受けなければならない人であっても、人間として私たちとその存在価値や尊厳は変わらないことを前提にして、私たちは利用者の方々に関わる必要があるのだ。

私たちは小さいもの・弱いものを手助けするのではなく、不便がある人の不便を解消するお手伝いをする仕事をしているのだ。それは困っている人に手を差し伸べるという人としてごく当たり前の行いにしか過ぎないが、そこに専門知識と専門技術を添えて、より効果的に、より適切に課題解決に結び付けるのが、私たちの仕事なのである。

そうした介護のプロとして接しようとする人が、自分より年上の高齢者の方々に向かって、「可愛い」という言葉を掛けることも、「可愛い」という感情を抱くことさえも不適切であると思う。

人は必ず心の中に弱さを持っており、時として周りの環境の影響を受けて惰性に流されやすい。だからこそ対人援助に関わる者は、自分を律して人権意識を奪う要素をできるだけ排除することを意識しなければならない。そうした姿勢でしか護られないものがあることを理解しなければならない。

管理職という立場の人たちには特にそのことを意識して、介護の場で利用者を可愛いと言いながら仕事をしている人たちに、それがいかに恥ずべき態度であるかということを伝えてほしい。そうした職場を変えていってほしい。そのために自分が先頭に立つ心構えが必要だ。

本当に何かを変えたかったり、自分の考えが真実だと主張したい人は、姿を現して最前線に立つはずだ。それができずに姿を隠して、自分の主張だけを垂れ流す輩は単なる詐欺師で、誰の尊敬も勝ち取れないことも同時に理解してほしいと思う。
高齢者をかわいがるという感覚麻痺
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