施設サービスの報酬改定の方向性をみると、特養の看取り介護加算・老健のターミナルケア加算の部分で、その取り組みをより高く評価するルール変更が行われていることがわかる。

両者ともに新たなルールとして、「人生の最終段階における医療・ケア決定プロセスにおけるガイドライン」等の内容に沿った取組を行うことが算定要件に加えられる予定となっている。

このガイドラインは、人生会議(ACP)の取り組みをシステム化するよう促す内容になっていて、終末期の医療やケアの提供方法について、あらかじめ本人による意思決定を基本としたうえで、その意志は変化しうるものであることを踏まえ、本人と医療・ケアチームとの話し合いが繰り返し行われるように促すものだ。

本人が自らの意思を、その都度示すことができるシステムを構築することがなにより重要視されているのである。

そのうえで、終末期における医療・ケアの方針の決定手続について、本人の意志が確認できる場合と、確認できない場合に分けて、複数の専門家からなる話し合いの場を別途設置し、検討・助言を行うシステムを構築するように具体策を示したものである。

今後は、特養の看取り介護と老健のターミナルケアの場面だけではなく、特定施設入居者生活介護と認知症対応型共同生活介護・小規模多機能型居宅介護の看取り介護、居宅介護支援事業所のターミナルケアマネジメント場面でも、このガイドラインに沿った取り組みが求められることになる。

そのうえで特養の算定要件には、看取りに関する協議等の参加者として、生活相談員を明示することとしている。

一方で老健ターミナルケア加算の算定要件に、支援相談員の介入を明示しない理由は、老健が医療系サービスであり、ターミナルケアの専門家である医師が常勤配置され、看護師も多数いることで、それらの職種が介入すれば問題ないからであるという意味だろう。そもそも常勤医師を差し置いて、支援相談員を参加職種と指定することにはばかりがあるのだろうと想像する。

このことは特養の看取り介護加算の要件に、「定期的な看取り介護研修」の実施が求められているのに、老健のターミナルケア加算の要件に、特段の研修要件が存在しないことと似ている。老健は中間施設ではあるが、医療系サービスとしてターミナルケアの専門機関でもあると認められているという意味である。

しかし今回の特養の看取り介護加算と、老健のターミナルケア加算における最も重要な変更点は、算定期間が延長され、看取り介護とターミナルケアの取り組みについて、今以上の報酬評価がされることになるという点だろう。(下図参照)
改定後の特養の看取り介護加算
看取り介護加算
改定後の老健のターミナルケア加算
ターミナルケア加算
このように、現在は死亡日から遡って30日間しか加算算定できないが、2021年4月以降は、死亡日以前31日以上〇日以下の単位が新設される。

これは算定日数期間を超えて看取りに係るケアを行っている実態があることを踏まえ、看取りへの対応を充実する観点から、看取り介護加算の算定日数をより早期とすることにしたものである。

この新設単位は、現在の上限の30日までの算定合計単位の中で振り分けて、死亡日等の算定単位を減らしたうえで、より長い期間の単位算定ができるようにするものではないと思う。

そのような姑息な給付抑制策をとらず、おそらく算定期間が延びる分、看取り介護加算・ターミナルケア加算の最長算定単位数は増額するものと予測できる。よって看取り介護・ターミナルケアの取り組みは、施設経営を考えるうえでより重要になってくるのである。

しかし懸念される問題もある。算定期間が延びるということは、できるだけ最長期間の加算算定を望むあまり、終末期判定が甘くなったり、あいまいになったりしないかという問題である。

現在でも年単位に及ぶ長期間の看取り介護と称する、えせ看取り介護・えせターミナルケアが行われているケースがあり、その最大の原因は、医師の終末期判定や余命診断がきちんと行われていないという問題である。それは医師としての専門性や、倫理観が疑われかねない大問題である。

そうしたことが起きないように、終末期の判定基準も厳粛にして、必ず余命診断も行い、計画書にそのことを含めて記載するようにしていただきたい。
新刊表紙カバー
なお終末期判定や余命診断の問題点や、看取り介護・ターミナルケアの具体的な方法論については、拙著「看取りを支える介護実践〜命と向き合う現場から」で詳しく解説されており、そこそこ評判も得ているので、ぜひ一度手に取ってご覧になっていただきたい。

看取り介護・ターミナルケア以外の施設サービスの改定動向については、「報酬改定で施設介護職員は業務負担増加へ」で解説した方向性が、昨日(11/26)の介護給付費分科会資料でもそのまま書かれている。

そのほか新たに目についた点としては、老健入所者が退所後に利用を希望する居宅介護支援事業者との連携を評価する新加算が創設されそうであることや、特養の日常生活継続支援加算と、特定施設の入居継続支援加算の算定要件である、「介護福祉士数が常勤換算で6:1」の要件については、テクノロジーを活用することを条件に、「7:1」に緩和する案も示されていることなどが挙げられる。

どちらにしても施設関係者の方は、張り付けた文字リンク先の資料を通読すべきである。
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